第8話 ボランティア活動を楽しむ
1990年のボランティア活動推進国際協議会(IAVE)総会で、「世界ボランティア宣言」が出された。
これによると、「個人が自発的に決意・選択するものであり、人間の持っている潜在能力や日常生活の質を高め、人間相互の連帯感を高める活動である」と定義付けされている。
また、平成3年版の厚生白書では、「自発的な意思に基づいて他人や社会に貢献する活動」と位置付けている。
これらの定義を読むと、日常的に使われている「ボランティア」のイメージより、随分と幅広くゆったりした印象を受ける。
岩手県立高田病院の臨時医師として、クィーンズクリニックや禁煙外来をやっていることも、診療支援というボランティア活動なのだろう。
しかし今回の話題は、「うごく七夕まつり」と「ツール・ド・三陸」での救護班という楽しいボランティア活動だ。
***
「うごく七夕まつり」というのは、高田町で行われてきた夏祭りのひとつ。
大きな山車を華麗に飾り、賑やかなお囃子太鼓と勇ましいかけ声で引き回すものである。
うごく七夕まつりのボランティア募集を見つけたので、勝手に救護班をつくって高田病院の仲間と一緒に応募した。
まつり事務局から幹部が挨拶に来た際、具体的な打ち合わせのあとで、タバコの害のないまち作りを目指していることも話しておいた。
胸のポケットがタバコでふくらんでいるのを承知で話したのだが、彼らは「せんせい、分かりました。JТの吸い殻入れは会場の端の目立たないところに移します」と約束してくれた。
実際、会場内でタバコを吸っている姿はほとんどなく、たまに見かけて「すみませんが…」と話しかけると、すぐに協力してくれた。
さらに会場内のアナウンスでも、「火傷や受動喫煙予防のため、会場内での喫煙はご遠慮ください」と繰り返されていた。
救護班のテントでは、右袖に赤十字マークと赤く「救護」とプリントされた黄色のスタッフTシャツを着て、ボランティアの看護師さんたちと一緒に処置にあたった。
幸いなことに軽症者のみで、「タバコフリー・イン・陸前高田」として行った肺年齢測定のサービスに列ができたほどだ。
今年の夏祭りは、弘前の「ねぷた」は見られなかったものの、浜風のもとで高田の「うごく七夕」を楽しめた。
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「ツール・ド・三陸」の正式名称は、「ツール・ド・三陸サイクリングチャレンジ2012inりくぜんたかた」と言う。
このイベントの目的は、環境にやさしく健康的な自転車イベントの開催で、震災後の地域復興と広域観光の推進を継続的にサポートすると謳われている。
今回はスピードを競うレースではないが、平成17年まで20年間にわたって、「南三陸サイクルロードレースりくぜんたかた」が、広田半島を一周するサイクルイベントとして開催されていた。
前日のスタッフ試走と9月9日の本番では、救護班として私も伴走した。
スタッフ試走のあとで、「ドクター」って分かるようなモノを着て走ってもらえますか?」と言われ、本番では「うごく七夕」の時に着た黄色いスタッフTシャツで走った。
確かに目立ちすぎて、「高田病院の中村先生がスタートしました」と場内アナウンスされ、旧小友駅前では財当仮設のおばちゃんたちに「せんせい、がんばって~」と声援を受けた。
おばちゃん声援隊のほかにも、財当仮設からはボランティア2名がコース誘導にあたってくれた。
救護班としては出動機会もなく、黒崎温泉エイドステーションに無事到着できた。
ノンビリと最後の選手に付き添ってゴールインしたのだが、閉会式を30分も遅らせて市長さんたちが拍手で向かえてくれた。
おかげで、「完走できて、横浜から来た甲斐がありました。」という嬉しい言葉を聞けた。
そんな満足感を胸に、財当仮設のボランティアとともに黒崎温泉へ向かい、太平洋を眺めながらの温泉ですっかりと癒されてしまった。
(陸奥新報 2012・09・20)
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