11. 衝撃
[
呆然としていた。ライブとは、これほどすごいものだったのか。イヤホンで聴くのとはまるで違う。音がそのまま、生身のまま私にぶつかり、私を叩きのめした。言葉にならない。それほどの感動が私を襲う。言葉を扱う職業の私が、言葉を失うなんてあってはならないのだろうけれど、そんなこと関係ない。どうでもいい。私は私のまま、そこにいた。何者かなどわからなかった。ただただ、音と裸で抱き合っていた。
「みんなありがとう!」
「……えー、みなさん」
MCが始まると、立っていた観客は席に座る。ライブにはそういう慣習があるのだろう。
「えっとね、
「は?」
私は吐息のような声を漏らした。私? 私の話をしている?
「いや、唐突だね。すいません。去年さ、小説出したでしょ。今歌った、『歯車ダンス』の」
バスドラムの音と周りの人たちの拍手が、ありえないほど遠くに聞こえた。
「ありがとう。買ってくれた人もいるかなと思うんだけど、あれね、僕にとってはすごい挑戦だったんです。小説とか書いたことなかったし、読んだこともあんまりなかったし。だからね、当時の話題作、片っ端から読んだんですよ。たぶん百冊は読んだかもしれない……いや、盛りすぎたかな」
笑い声。
「その時に読んだ中に、
はは、と笑って
「それじゃ、準備いいですか? OK、次の曲、行きましょう!」
イントロで、一番好きな曲だとわかった。心臓が狂ったように鼓動する。涙がとめどなく溢れて、嗚咽で吐きそうになる。
頭がおかしくなりそうだ。二作目は、三作目は、読んでくれたのだろうか。読ませられるものを書けていただろうか。いや、あんなものは駄作だ。読まないでほしい。だけど。
「東京~!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます