あんぶれら - あんぶれら（柏堂一（かやんどうはじめ））

あんぶれら

柏堂一（かやんどうはじめ）

　私は傘に当たる雨音を聴くのが好きだ。だから雨の日もそんなに嫌いじゃない。小雨の時のサァーという雨音、土砂降りの時のザーッという雨音、頭の上で色んな音がする。

　だけど今日はいつもより雨音が遠い。大好きな人と相合い傘だから。彼の持つ傘は、いつもより高いところにあるから。

　あれれ？傘に当たる雨の音も、周りの木々に当たる雨の音も、どんどん小さくなっていく。景色がぼやけていって、人も車もいなくなった。

　ドキドキする胸の音と、大好きな人の優しい声だけが私を包む。

　この傘の下は別世界だ。今この世界には私たちしか居ない。

　今なら言える。

「先輩のことが、大好きです」

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。