リーヌの夢

 その夜、デザはまた奇妙な訪問者に遭遇することになった。小さな小さな子供が、部屋の前をかけているようで、その恰好を見ると、魔女のような帽子をつけていたので、彼は思わず話しかけた。ロズ刑事は眠っているようで、時計を見ると午後8時だった。

 「君、もう夜遅くじゃないか、一人で何をしているの?」

 どこかぼんやりとした光景に違和感を覚えながらも、話しかけずにはいられなかった。なぜ、自分の部屋を往復しているのか、親はどこにいるのか、心配になったのだ。

 「……お兄ちゃん、えっとね、お願いがあるの」

 小さな少女はベッドのわきまでゆっくりとあるいてきて、手紙を自分に手渡した。そして、自分の直ぐ傍で耳打ちした。

 「私の名前は、魔女ピロア、助けてほしい、私の妹弟子の邪魔をして」

 唐突に大人の女性の声に変ったとおもって耳元に目をやると、穴が開いたように真っ黒な瞳をしてk真っ黒なくちもとをしている、土のようなものでできた人影が、こちらをみあげていた。

 「うわああ!!」

 そこでデザは目を覚ましたのだった。目をこすり、あたりを見渡すと寝落ちしていた刑事が目を覚ましこちらを心配そうに眺めている。

 「どうした?」

 「いま、子供が、子供が」

 「ん?子供……どこにもいないじゃないか」

 夢か、そうおもい手元をまさぐると、手の中に見覚えのある花柄の手紙がおかれていた。手紙を開封するとポストカードの表に

 「三日後、AG街5662」

 そうとだけ書かれていた。

 (何の住所だ?)


 リーヌは夢をみていた。それは光球となった自分が見る夢で、つまりは予知夢である。廃墟に開かれた時空の裂け目、ぼろぼろになった希星魔女院。廃墟には、多くのけが人や死体があった。そしてリーヌとカルナは、体中傷だらけだった。カルナはこういうのだった。

 「やっぱり人間なんて、信じるべきじゃなかった」


 リーヌはその夢を誰にもいわなかった。それは贖罪だとも思った。もっと自分がしっかりしていれば、彼女を、そしてデザという少年の身体を傷つけることはなかったかもしれない、けれどこれはきっと現実になるのだ、きっと現実に……。


 次の日の夕方、慌てたように、リサの母親、カールさんが病室にかけつけてきてこういった。

 「リサと連絡がとれないの、ここへきてない?」

 すぐさま警察が対応し、行方不明者として捜査することになったが、午後8時をすぎても帰らず、ロズ刑事もあせったように、デザの病室を見張りながらもそわそわと別の警察官と話をしていた。魔女リーヌも、デザの横に座り、デザの護衛をしていた。

 「僕が、助けに行きます」

 「だめよ、そんな状態で」

 「でも、リサまで巻き込まれたら、このまま待っているわけには……」

 「何の話をしているの」

 その時、母親が病室に入ってきたのだった。

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