第7話
ある魔女が、テントを張ったような薄暗い室内で
「ま、まてカルナ?カルナと今いったか?」
傍らにミニ・ゴーレム、動く土人形がおり、魔女があれこれひろげているテーブルの上で身振り手振りで魔女によびかける。
「ああ、“クレイ”私のかわいい弟よ、私の魂で動く私のゴーレム、とんでもない奴に目をつけられてしまったものだ、ここがやつの担当区域だったなんて」
魔女は椅子の上でくるくると半回転して、後ろをふりかえる。協力者らしきフードを被った男がそこにいた。顔はみえない。
「あんた、敵は手ごわいよ、それでも私に“協力”してくれるかい?」
「おまかせを、私の願いが叶うなら、あなたの願いもかなえます」
「ああ、そうさ、私は願いをかなえる、“本物の弟”を取り戻すんだ、まっててくれ“クレイ”」
ミニ・ゴーレムは机の上で首をかしげてつぶらな瞳で魔女を見上げていた。
「そのためにも、彼女の能力をできるだけ使わせないように、仲間との関係を分断し、彼女の道具を奪う必要があるよ、ああ、やれるさ、やってみせる、そうだ、彼女といえば希星魔女院でのあの騒動、あの騒動を“役者”の一人が知っていたらきっとびっくりするはずさ、手始めにつむじ風で警告を出しておこうかねえ」
魔女は、ケケケと笑い声をあげて、背後の男は黙ってそれをみていた。
希星魔女院に二人の姿。青い髪に透き通った優しそうに垂れ下がる眼に青い瞳、きっと力を絞った口元。いるだけで涼やかな風をふかしているようなその女性は、リーヌだった。長老が目の前におり、リーヌにやさしく語り掛ける。
「今度の件、どんな様子じゃ、“彼女”カルナは」
「やはりあの一件を気にしている様子もありますが、まだ人間に感情移入しすぎてている部分もあります、時折しかってやらないと」
「ふむ……」
「ですが、彼女に区画を一人でまかせるのはまだ早かったのでは」
「いや、もし問題があるなら、すぐに上位の魔女を行かせる、大丈夫、君も子離れしたまえ、孤児だった彼女を君と君の師匠は立派に育て上げた、私たちは期待しているんだ」
また別の場所、リサの家。リサは久々にデザに話しかけたこととチャットアプリで連絡がきた事で舞い上がっていた。部屋をある気ながら、浮足立っている。
「あの子から久々にメールだわ、うへへへ、これは進展のチャンスかも、高校に入って以来ほとんど接触できなかったから、思い切って話しかけちゃった、大丈夫、リサ、いつも通りを演じていれば、本当は私が二面性を持つ女だって、ばれなきゃいいの、ばれなきゃ」
ピロン。チャットアプリの着信音。
「ゲ、トールズ、まだあいつと付き合いあるんだ、早く関係をきっちゃえばいいのよ」
鏡をみて、リサははっとする。
「リサ、おちつけこんな事、いやでも確かに昔はいい子だったわ、トールズ、でもなんか、不良とつきあうようになってから誘うにも誘いづらいし、パーティ?無理よ無理、はあ、そんなことよりデザ、あなたに会いたいわ」
そういって、彼女はスマホでデザの写真をたどると口づけをしてケケケと笑った。
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