第3話

  次の日の夕方。例の不良たちが、コンビニの表で、小柄な同世代の青年をいじめていた。同じ制服を着ているので同じ高校なのだろう。誰も止めるものはいない。丁度そこにカルナが通りかかった。カルナは口笛を吹き、素知らぬ顔でコンビニに入り15分ほどして雑誌を買ってでてきた。

 「……」

 不良たちを傍目に出口で雑誌をみながら、のほほんと鼻歌を歌っている。

カルナ「ふんふふふふーん」

A  「ちっ」

Ⅽ  「おい、お姉さん」

カルナ 「あん?」

 鼻血をだしてど突かれる続ける青年をほったらかして、何をするでもなくその脇で立ち尽くす女性に、いら立つ不良たち。

A 「そこにいられると邪魔なんだけど」

C 「みてわからんか?」

トールズ「なんか用あるの?そこでぼーっとさ」

 しばらく、雑誌を天にかかげながら不良をじーっと黙ってみるカルナ。

 「なんで、助けるか、それとも仲間に加わるとでも思ったわけ?どっちも面倒くさい」

 「くっ」 

 「興覚めしたぜ、いこう」

 そういって不良たちは立ち去る。いじめられていた小柄な青年は何もいわずにぼろぼろになった彼の眼鏡をつけて、立ち去っていった。しばらくして店内から件の年配の店員がでてくる。


 「あの、店の前でさ迷惑してたんだ、危なかったよ、ウチの評判も下がるとこでさ、ありがとう」

 「何もしてませんけど」

 そういってカルナはその場所をさっていった。その一連の動きを物陰で、件の青年の一人となかのいい青年デザ・ロアがみていた。その後、デザ・ロアはカルナの後をつけた。カルナは例の老婆の亡霊のでる廃墟へと向かったようだった。カルナは廃墟を見張っているようだ。廃墟の後ろにまわりこみ、人の目を気にしてきょろきょろしたあと、収まる位置をみつけたらしくそこに隠れた。しばらくすると先ほどの青年たちが廃墟にむかってくる。


 若者たちは、廃墟の中にはいっていく。その背後にカルナは亡霊の姿をみた。細い眼をしてじっくりとその様子を眺める。やがて廃墟の中央に若者たちが腰をおろして輪になってかたまった。やがて入口から老婆の幽霊が険しい顔をして、訪問者の様子を覗く。その気配すら察していない様子で、廃墟の中で若者たちは話をしていた。


A  「なあ、トールズ」

 トールズというのは、デザの友人である。

A  「お前の漫画、また読みてえなあ」

トールズ 「ああ、でも書きたいんだけど、ちょっと家族との仲がうまくいってなくってさ、おやじは相変わらずのんだくれてるし、姉ちゃんは薬づけ、母さんはいつもヒステリック、なんか、人生がしょうもなくみえて、変なプレッシャーがかかって、かけなくなった、子供のころは無邪気にかいてたのに、俺も頭悪いままだしよ、なんか“刺激”がほしいのかもな」

C  「大丈夫だって、俺たちはまだ若いんだぜ」


 不良とはいえ若者たちが自分たちを励ましあう。その様子をみて、老婆の幽霊はうつむいて悲しげな表情を見せるのだった。


 一方外ではカルナがこっそり物陰に隠れて青年たちが出てくるのをまっていた。しばらくすると青年たちが、叫び声をあげて建物から飛び出してくる。

A   「ギャー!!」

 続いてトールズが叫びながらでてくる。Aをおしだすように。

トールズ 「逃げろ!!」

C    「復讐しにきやがった」

 Cが出てきたのを確認すると、後ろをむいてトールズが叫ぶ。

トールズ 「散り散りになって逃げろ、こういうときは、それに相手は“アレ”だ」

 やがて彼の言う通りに不良たちは別々の方向に退散していったのだった。


 そのあとで、先ほどまでコンビニでいじめられていた眼鏡の青年が、カッターナイフをふりまわし建物からでてくる。しばらくはあはあと呼吸をあらげていたが、しばらくすると周囲を見渡し、我に返ったように動揺し始めカッターをリュックにしまい、そそくさとその場をあとにした。

 

 その頃、カルナの店、便利屋兼万事屋“カメンムシ”。古びた店の引き戸が開く。

 《ガラガラ》

 「ただいまー」

 「ちょっと、またどこへ行ってたのよ」

 店番を変わっていたリーヌがカウンターで雑誌を読んでいた。頭をかきながら、カルナは返事をする。そのまま冷蔵庫へむかった。

 「調査だよ、調査」

 「本当に必要な調査をしたの?また人間の事情に顔を突っ込んでない?」

 冷蔵庫から牛乳をとりだし、コップにそそぎグビッと飲み干した。

 「うん」

 雑誌を読みながら、心なげに応えるカルナの様子をリーヌはじっと見ながら、眉をひそめ悲しげな顔を浮かべるのだった

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