第21話 帰った後
(山田桃子視点)
つい先ほど以前、私を助けてくれた方が帰ってしまわれました。名前は服部さんです。今日、勇気を出して聞きました。
服部さんはしつこく私の連絡先を聞こうとした見知らぬ男子から私を救ってくれました。
あのとき、服部さんがいなければ、私は見知らぬ男子に連絡先を教えていたでしょう。
今日、たまたま自宅の周囲をぶらぶらしていると、ぼろぼろな姿で弱った状態だった服部さんを空き地の近くで発見しました。
服部さんは腰を曲げ、痛みに耐えるように歩いていました。
その姿をみた瞬間、彼が何者かと喧嘩をしたのではないかと推測できました。空き地の辺りには全く人気がないため喧嘩をするには打ってつけの場所ですから。
私はそんな服部さんを放っておけず、家に招き入れました。1度は断られましたが、粘りました。
その甲斐もあって、服部さんは私の家に身を置きました。
「はぁ・・・」
私は服部さんのことが頭から離れないまま、勉強机とセットになったイスに腰を下ろします。
「服部さん。すごいかっこよかったです」
自然と身体に熱が篭った。
私は昔から何かと男子に連絡先を受けたり、遊びの誘いを受けたりしました。それらの男子は決まって下心が丸出しでした。
その上、彼らは私が拒否してもしつこく話し掛けて来ました。何かとしつこく声を掛け続ければ、私が懲りるとでも思っていたのでしょうか?
そして、私が拒否して、困っている状況でも誰も助けてくれる人はいませんでした。皆、黙って見物するだけでした。私に誘いや連絡先を聞く人が陽キャで学年でもチカラがあったため、周囲の方々は恐かったのでしょう。
「ですが、服部さんは違いました」
服部さんは私を助けてくれました。行動を起こしてくれました。こんな経験初めてでした。そんな優しい男子に出会ったことも初めてでした。
「こんな経験、今までしたことないです」
私は心臓に手を当てた。ドクンドクンッと強く早く脈を打っていた。
「少し体温を下げるために水分を取った方がよさそうですね」
私はイスから立ち上がり、冷蔵庫からお茶を取り出すために自室を後にした。
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