第12話 準備
「はい!これ!!」
次の日の早朝。俺は前日に購入したボイスレコーダーのうちの1つを末石さんという女子生徒に差し出した。
末石とは昨日、S N Sの連絡先を交換しており、今日朝早くきてもらうようにお願いした。
「で、これをどう使えばいいの?」
末石さんは半信半疑な顔でドライブレコーダーを受け取った。まだ、俺を完全に信じ切っていないのだろう。
でも、それでいい。
「使い方はシンプルだよ。君が松本を呼び出して告白を了承する音声を録音すればいい」
俺は意図的に大きく高い声を出して末石さんを安心させようと試みた。効果があるかどうかはわからないが。
「了解。嘘でも告白を了承するのは気が引けるけど、背に腹は代えられないわね」
末石さんは綺麗な姿勢を保ちながら、胸の前で両腕をクロスさせた。
「ああっ。後、重要なことが1つ」
俺は人差し指をピンと立てた。
「脅されて付き合うことが誰からもわかるように喋ってね?」
「それってどういうこと?」
俺の言葉の意味が理解できなかったのだろう。末石は切長の目を細めて、質問を投げ掛けた。
「わかりやすくいうとね、松本に脅されて付き合う感を醸し出して欲しいんだ。しかも、言葉だけでわかるようにね」
俺はわかりやすく説明するために、言葉を多く紡いだ。
「うん。わかった。それについては考えとく」
末石さんは素直にこくんっと頭を縦に振った。案外、素直な人間なのかもしれないな。
「実行するタイミングが決まれば、SNSで教えて。俺も隠れながら告白の了承の場を見届けるから」
俺はポケットからスマートフォンを取り出して、末石さんに見せびらかした。
ちなみに、旭西中学校はスマートフォンを校内に持ち出してはいけない。そのため、普段は持ってこない。今日、たまたま必要だったため持ってきただけだ。
「わかった。決めたらすぐに伝える」
末石さんは真剣な表情を作った。今、頭の中で自身が松本に対して口にする言葉を思案しているのだろうか?
「そういうことだから。色々と頑張ってね!」
俺は踵を返し、末石さんに背中を向けて、未だ誰も身を置かないクラスへと入室した。
放課後。教室はいつも通り騒がしかった。
だが、俺は普段と異なり、ゆっくりと帰りの支度に時間を掛けていた。
俺はある男子生徒を観察していた。その男子生徒は周囲よりも背が低く、多くの生徒から軽視されている。
背の低い男子生徒は手早く帰りの支度を済ませ、教室を後ろから退出した。
俺はその光景を確認すると、急いで支度を済ませて、同じように教室を後にした。
廊下に出ると、駆け足でその男子生徒に追い付いた。それで、彼にこう問い掛けた。
「今の悪い状態を抜け出す方法があるんだけど。どう?俺の作戦に乗ってみない?」
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