第6話 あの時の女子

(主人公視点)


 クラスの帰りの会が終了した。皆が一同に立ち上がり、話をし始めた。それらが起因して教室が騒音に支配された。


 俺はそんな渦中の中、静かに学生カバンに教科書やノートを詰め込んで帰りの支度をする。


 いち早く騒がしい空間から抜け出したかった。俺は身体は中学生だが、心は24歳なのだからな。


「よし!終わった」


 俺は小さな声でそう呟くと、席から立ち上がって、教室の後ろの戸から退出した。


 1年生の教室は校舎の4階に設置されているため、このまま階段を降りて、1階の昇降口に向かうつもりだ。


 俺は生徒たちで溢れた廊下を歩いた。廊下に身を置く生徒たちは雑談に勤しんだり、友達を待っている。


「え!?」


 俺の目の前から驚嘆した声が聞こえた。


 どうやら、その声は目の前の女子生徒から発せられたらしい。


 その女子生徒の特徴はホワイトのロングヘアにグリーンの瞳、純白の雪みたいな白い肌に薄い桃色の唇だった。


 俺は最近、この女子生徒を視界に入れたことがある。気がする。


 女子生徒は驚いた表情を消すと、駆け足で俺の元に寄ってきた。すると、背丈が明瞭になった。150センチ後半で俺より背が低いことはわかった。


「あ、あの時のお礼がしたいんです!」


 女子生徒は真剣な表情で顔を接近させた。身体はあと少しで密着しかけている。距離が近い。


 周囲は女子生徒の大きな声に反応し、全員が俺たちに向けて視線を走らせていた。


「ば、場所を変えようか?」


 俺は多量の視線に耐えられず、女子生徒の両肩に手を置いて、そのような提案をするしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る