第19話 上昇と下降

晴れてタカハシとハルは交際を始める。


反対するスタッフはいなかったそうだ。

恐らく事前にミズタニが根回しを済ませていたのだろう。

あの人には本当に頭が上がらない。

しかしオープンにもしない、ということだった。

まあ当然だろう。



2人の生活で変わったことがいくつかある。


タカハシはストーン・レコード・ジャパンの事務所やハルのレコーディング現場に出入りするようになっていた。

ハルが演ったタカハシの曲が好評だったので、何曲か提供することになった。

歌詞の世界観がハルのそれとは違うが、それが面白いという。

印税の問題もあって作詞・作曲者のクレジットは「SOL」という名前を使うことになった。

「SUMMER OF LOVE」の略で、ミズタニの案だ。ナツという名前に掛けている。

「ソル」でも「エス・オー・エル」のどちらでも正しいとのことだ。



大学生になったハルは、高校生ではできなかった活動をいよいよ本格化させる。

全国ツアーも今までよりタイトなスケジュールになった。


タカハシとスタジオにいる時間も多い。


タカハシの部屋にも出入りするようになっていた。

ほとんどの時間は作詞作曲に費やされた。そこで作られた多くの曲が世に放たれて行った。


そのうち両親に挨拶もしなければと思っていたが、ハルが重苦しいと言うので、大学を卒業するまで保留になった。

一応「年上の」恋人ができたことは伝えてあるらしい。


タカハシとハルは、もう以前とは違っていた。

欠けていた感情は埋まり、創作にも良い影響を与えていた。

公私ともに良いパートナーになっていた。





少し時間が流れる。



タカハシは体のこともあって基本的にテレワークをしていた。

個人でやっているアプリの開発もそこそこ順調だ。

夜になるとハルがやってきて創作に勤しむ。


そんな日々が続いていたある日のことだ。


SRJの事務所にいたタカハシが真っ青な顔で言った。

「すみません、ちょっと気分が悪いので横になっても良いですか?」




・・・


・・・・


・・・・・


・・・・・・


・・・・・・・


・・・・・・・・



「・・・・・・・・・あれ?」


「・・・・・・・・・気が付いた?」


「病院・・・・・」


ハルが抱きついてくる。泣かせてしまったか・・・・。

ハルのマネージャーも一緒だ。



「うーん、ちょっと倒れるのが久々すぎて、原因は何?」


「心臓が止まりかけたって」


「・・・・・・え?」

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