ドルルク
はむはむ
第1話 明太郎
21時14分発の電車に遅れないように、2日に一度、仕事終わりに牛丼屋に駆け込む。
店で食うつもりも、時間も無い。
素早い手つきで、入り口近くのタッチパネルを操作し、牛丼のアタマだけ、つまりは肉と玉ねぎとつゆだけを三人前オーダーした。
このアタマを家で二分割し、時には白飯、時には素うどんに乗せて食うのが、サラリーマンの佐々木 明太郎の常だ。
カウンター席近くの待合席に腰掛け、スマホとイヤホンを取り出し、イヤホンを片耳に装着。最近、スマホの電池持ちが良くない。なので会社を出る前ではなく、こういった待ち時間にスマホを起動させ、少しでも充電が持つように工夫している。
スマホで音楽を流す。
今日もイヤホンは片耳しか音楽が流れない。
事務的かつ、軽く下を向いたままのバイトの店員が、呪文のように「おっしゃせしゃしたー」と唱えたと同時に席から立ち上がり、会計を済ませて商品を受け取り明太郎は店を出た。
後はしばらく歩いて横断歩道を渡り、駅に入るだけ。降りる駅はどうせ、終点だ。
都会、ではない為、基本的に電車内で座ることは出来る。なので、電車の中では爆睡するつもりだ。
電車内ではスマホの電池節約の為、音楽は出来ることなら切りたいがそれは出来ない。学生の頃寝落ちするまで音楽聴きながら勉強してた為、それが身についてしまい、何かを聴いていないと眠れないのだ。
燃費の悪い人間だなと、自分でも思う。
帰ったら風呂に入って、週末に買った中古の漫画を見ながらメシを食って…、とおおよそのスケジュール立てをしながら少し小走りで歩いていると、バリバリと音が鼓膜を刺激した。
刹那、明太郎の視界は真っ白になった。
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