第49話 日給10万
「夢。なんだっけ、重要なものを見た気がするけど」
土曜のお昼。
悪夢ともいえる百合三昧美女の醜悪な姿を見続ける事件後、僕は仮眠をとった。
気を失うように眠り、呪いの姿を見る夢を見た。
「呪い、ああ、御守り。ああ、そういや、お守りって、大丈夫か」
ベットから、跳ね起きる。
「さがさないでください」
机の上になんか明らかにかまってほしい書置きがある。きったない字に平仮名が味を出している。
まあ、野良猫みたいなものだから、ふらりといなくなることはある。あとは書置きの裏になんかの電話番号が書いてある。
まあ、何かあったらここにかけろということだろう。
幸運の御守りはあった。無造作に置いてあるのは正直、何とも言えないが。
「つかうな」
うーん、この文章もなんか使わせるのか、使わせたくないのか。よくわからんな。
「ま、これ首にかけるようにしてくれてるし、隠せばどうにかなるだろう。置いたままも怖いしな」
御守りには首掛けがあり、とりあえず持っておく。正直ダサい気もするが、安全マージンの為、仕方ない。1週間は使えないらしいけど、何か不安だ。
「ぐえっ、がっふっぐっ」
カエルがつぶれたような声がした。
窓に突っ込んだ何かがいる。うん、聞いたことがある声だけど、面倒事の匂いしかしない。
無視しよう。羽が見えて、すんごい泣いているけど。
「――ケテ」
ああ、うん。ベランダで泣いても無理だから。近所迷惑だけど。
鼻水出てる。汚いなあ。
窓を拭くだけで日曜の一部が大分潰れてしまいそうな予感がするんだけど――まあ、どうでもいいことだ。
外に出よう。そして、大体のことは忘れよう。永遠に。
財布とスマホは持ったな。あとは全力で明日に向かって、ダッシュだっ。
「行かせるかああああああああああああああああああああああああああ! 待つんじゃごるあああああ!!!!」
空を飛ぶ白い物体が叫びながら飛んでくる。
近所迷惑だってぇ。これ、ご近所さんに噂になっちゃうから。やめてぇ。
電柱から襲い掛かるなんか白い物体の顔は鼻水やら涙やらでぐちゃぐちゃ。
目は腫れていて、普通なら助けることだろうが、僕がとんでもなく酷い目に合わせる予感しかない。
金曜日だけでもうんざりなのに、徹夜明けの土曜日も面倒に巻き込まれるなんて、アラサーの体にはしんどすぎる。
「すっごい、休みたいのおおおおおおおおおお!!! 嫌なのおおおおおおお! 仕事にかかるからとっても、嫌なのおおおううう!!!」
「日給10万! 出す! 美人の女性がいる場所に案内! 取引ですッ!」
――なん、だと? それはくそっ、どうすりゃいいんだ!
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