第6話 DTのアラサー30歳の誕生日、0時頃
「失念していた誕生日。29歳から、30歳の悲しみに乗ってしまったアラサー男子。飛田雅弥。しかも色々と状況がわかっておらず、1DKの家に現れるかわいい声。恐らくは女子。さらに、彼女は自分の貯めこんだDTパゥワーを自分の子供に継がせるかもしれない。ウハウハじゃないですか。異世界で勘違いしまくって、もてなかった勇者のリベンジ! 欲望に従うことだって、多分できるはずですね。私だって、猫又妖怪だけど、名前はマオウ。なんたって、魔王ですよ。力が欲しいわけで魔王になれるなら、最高に」
だまらっしゃい。外の子が「あぅあぅ」言って困っているじゃないか。近所迷惑ですしおすし。
あと、ドヤ顔で二股尻尾をフリフリするのはやめましょう。正直相変わらずのショートパンツや太ももに触れてなんか困る。目がすごい泳いじゃうからやめて。
でも、その旨の上に何か載せようとするしぐさとか、もう僕はもう辛抱たまらん。
ようし、今から襲い掛かって。
「あ、あのう、もうよいですか。夫婦漫才を聞いている暇は無いので」
「意外と口が悪い。いや、夫婦漫才とかある意味照れますね。うん。ストレートに言われちゃうとなんだか照れるし、もにょるよマオウ様として」
もういいや。それよりも女の子に入ってきてもらおう。どうせ僕はもてない勘違い野郎ですからネ。
「こんな夜分遅くにこんばんわ。アニエス・マチュと申します」
とかわいい声を出しつつ入ってくる少女。
白いダボッとした修道服のようなファンタジーの司書服を着たような印象。青っぽい髪色にノンフレームの眼鏡をつけた生真面目そうな雰囲気。はかない感じがして、この残念な猫又よりは好感が持てる。3か月付き合って思った。性格って、本当に大切。本当にね。
それよりも、気になるのは。
「うーん、ロリコンになるから却下」
「いや、マオウも15歳くらいだから、ロリコンになる。犯罪とか言うなよ」
「マテ。アニエスは見た目が13歳くらい。もっと犯罪臭い。しかも、その後ろの羽とか、属性過多になりつつあるから、もっと却下です」
そう、アニエスの背中に生えた青っぽい羽。それは天使だった。まさに修道女というか、天使のような。
「ごめんなさい。私の耳を見るとわかるんですが、青い羽毛があって、天使でもありません。ハービィという人種で御座いまして、どちらかというと監察官としてやってきました」
と言って、アニエスは名刺を出してくる。
「世界管理機構。アジア太平洋地域、日本管理課 アニエス・マチュ、さんと」
と書かれていて、なんというか、僕も「あ、どうも」と言って、自分の会社の名刺を探そうとしてしまった。
「あと、私は19歳です。背が小さいのも気にしていますし、年も気にしているのでやめてください」
気にしているんですね。まあ、仕方ないよね。
というか、19歳は絶対に嘘だ。絶対に。
「19歳です。何を言おうとも私はじゅうきゅ」
あ、噛んだ。19歳じゃないなコレ。
「ふーん、あ、飛べますか。天使アニエス」
「天使じゃないです。ハービィです。あ、少しなら飛べますけど、ではなく」
コホンとアニエスさんは何となく、取り繕うような咳ばらいをした。
「ま、とりあえず玄関で話すのもなんですし、中で話しましょう」
「とてもとても狭くて、汚い1DK部屋ですが」
マオウ、お前が言うとなんだかな。
3か月ほど暮らしてどう思ってんだよとマジで思うので腹が立つのは気のせいでしょうか。いや、気のせいではない(反語)のだ。
「あ、すぐに終わるのでお構いなく。とりあえず、これをお渡しに来たのです」
と言って、彼女の羽が揺れて、取り出すはパトライトのようなものをつけた火災報知器。
どうして、そんなものが羽の中に、と突っ込む間もなく、彼女は羽を広げて天井にそれをつける。
「あなたの欲望度測定装置です。許可は取りましたので、玄関につけました」
なん、だと?
欲望度測定装置とか何?
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