アラサーと猫耳少女のアパート暮らし

阿房饅頭

第1話 アラサーの家に猫耳少女がいるってどういうことよ

 僕の名前は飛田雅弥とびたまさや

 記号的物はそれだけである。

 おざなりに整えた髪と瘦せ型の目が死んでいるといわれる微妙な男だったりするが、個性かどうかはわからない。よくある男の無個性何かでしか無いように思える。人生に疲れたら、大体はそんなもんだ。

 背中が煤けているぜ。


 今日も仕事を終えて、スマホの時計をなんとなく見てみると、22時。

 会社の情報システム部に所属して、PCやらネットワークのサポートをしているせいでリモートができないので、みんながリモート仕事なのに、気づいたら会社で戦う中途半端な社畜だったりする。


「なんで~IT企業なのに、リモートできねえんだよぉ~」


 おかげで体は微妙にだるい。

 ビールと体を気にしてのサラダチキンとサラダをコンビニで購入。

 有料ビニール袋に入れて、買って帰ってくる。すんげえ寂しい。

 2階建てのしょぼい鉄のアパートの階段を登り、203号室を開けようと鍵穴にカギを入れて回す。

 住んでいる賃貸マンションの1室には誰もいないアラサー29歳。独身。1DKの部屋には誰もいない。侘しい住まい。

 家にあるのはゲーミングPCとカップラーメンとなんか放置したダンベルと~。


「ふひぃ、今日も僕の家は誰もいないよー。ただいま~」


 と当り前の独り言をつぶやきながら、1DKのお部屋を開けると何か、いました。


「おかえり~」


 明るい茶色の髪の女の子がいました。

 はいはい? どういうことでしょうか。ダイニングのテーブルでパック牛乳を飲んでおりましたっと。

 よく見ると茶色の髪と同じ色の猫耳が頭に生えてて、お尻も茶色い茶トラっぽい尻尾が二つ生えている女の子。

 しかも、ショートパンツにタンクトップって、おいこらえっちぃぞ。胸もそれなりあって、まぶしいよ。谷間とかあったりして、なんてことだ。すごすぎるぞ。

 太ももも白くて、なんというか、むしゃぶりつきたくなるような肉付き。ナニコレ、ユメナノ? ユメナラ覚メテ。



「おっやぁ、雅弥。私の横乳を見て興奮しているかにゃん。タンクトップは目の毒かな。短パンだと太ももが丸見えで直視できないかな。よぅし、今度は短パンのお尻を見せて」

 とのたまう少女は猫口をほうふつとさせる笑みを浮かべて、俺の名を呼ぶ。

 アラサーの家にダンベルで汗をかいている、猫耳少女がいるってどういうことよ?

 

「DT、女の子の太ももに興奮する。どうよ」


 したい。したいよ。でも、犯罪になりそうだからやっちゃいけない。

 チラッと見たいけど、見たいけど、できないこの悲しみをどこにもぶつけることができないのがこの現代社会の悲しみよ。 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る