第4話 孵化作業




 俺の家は親が研究者なだけあって実験用の施設もある

 実験器具も取り揃えてあって使っていいと言われている


 そして俺は目の前で今焚き火をしていた


 その炎の上には買ってきたフライバットの卵がぶら下げてある

 別にフライバットを調理しようとしているわけじゃない

 これは孵化作業の一種だ


 孵化する時に特定の作業をすることによってモンスターの能力を上昇させられる

 その作業はモンスターによって異なるがフライバットの場合は卵の表面を火で炙ったり冷やしたりするのが基本だ


 表面を火で炙ると体力が上昇し冷やすと筋力が上昇する

 はっきり言ってどちらも必要な要素だ

 だから孵化作業の時はどちらかを選択する必要がある


 しかしこれにも裏技があり卵の殻に焦げ目が付いたあたりで冷水につけるとどちらの能力も上昇する

 冷静につけていると訳が分からないが焦げ目が消えていくので再び火で炙る


 それを繰り返していくとどちらの能力も最大まで上昇したフライバットが誕生する


 もちろんこれ以外にも育成方法はあるが他の能力が特に必要としていないのでその作業は省く


 そんな面倒な作業を6時間ほど繰り返していると卵が揺れだした


「キタキタキタッ」


 よし孵化作業ももう終盤


 あらかじめ用意しておいた卵と全く同じサイズの鉄の入れ物に卵を入れる


「悪いな

 これも孵化作業なんだ」


 少し罪悪感を感じながら鉄の入れ物に入れて鍵を閉める


 中に入るフライバッドが暴れているようで鉄の入れ物が揺れるが放置

 1時間ほど放置しているとゆれがおさまった


「そろそろだな」


 そっと鉄の入れ物を外してひびの入った卵をこちらからはってやると中にいるフライバットが勢いよく出てきた


 真っ黒な見た目をしている巨大コウモリだが

 こちらにベタベタひっついてくるのは可愛らしい


 生まれてくる直前に硬い入れ物に入れて卵から出れないようにする

 そして中にいるモンスターが卵を破るのは諦めた後にこちらから破ってやると最初からなつき度が大きく上昇し刷り込みと呼ばれる1ヶ月位かかる作業を飛ばすことができる


「よーしよしよしよしよし

 可愛いな」


「ピュピュゥ」


「よし!お前の名前はピュピュゥに決定だ」


「ピュ?」


「さてさっそくダンジョンに連れてくか」


 ピュピュゥをバックに入れてダンジョンに向かう





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




 ダンジョンとはランダムに発生する地の底に続く洞穴のようなもので中にはモンスターが生息している


 中にいるモンスターは千差万別だが一度モンスターを全滅させるとしばらくモンスターが発生しなくなる


 しかし放置していると中にいるモンスターがあふれ出したりもするため探索者達が対応している


 モンスターを倒すとその死骸を回収することができる

 モンスターの素材は非常に有用で最近の建物にはモンスターの骨を溶かした建材が使われている


 俺が今向かっているのは中にいるモンスターが全滅してしばらく安全なダンジョンだ

 こういう安全なダンジョンは一般人も入れるようになっている




「着いたな」


 地面に続く洞穴のようなものがある

 そのままダンジョンの中に入っていくとピュピュゥが大きくなっていく

 モンスターは自分の大きさを変えることができるが生まれたてでは変化させる方法を理解していない


 だが一度ダンジョンに入ることによって学習して大きさを変えることができるようになる


 大きくなったピュピュゥは翼を広げると横に3メートルほどの大きさがある


「覚えたか?」


「ピュゥ」


「小さくなれ」


 指示すると先ほどバッグに入っていたよりも小さくなった


 ゲームでは軽く説明がなされただけだったがどういう仕組みで小さくなっているのかよく分からない

 そういうものとして理解するしかなさそうだ


「家に帰ろう」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る