この事件、春崎カノンに任せなさい!

めんたいこ太郎

事件編

時代は異能力創成記。


無能力者【ノーマル】と

異能力者【スキラー】の人数が

五分五分であった時代の話。


【ノーマル】と【スキラー】の判別も曖昧であり

【スキラー】の異能力と言っても

「親指からライターくらいの火が出る」や

「スプーンを柔らかくする」など

些細な異能力ばかりであった。


しかしその異能力に対して

曖昧な期間だからこそ

犯罪は複雑化し現場は混乱をきたしていた。


そこで出来たのが

【異能力特別対応部隊】略して【異特隊】。


この物語は

【スキラー】によって複雑化した

犯罪を解決する【異特隊】メンバーの1人

【春崎カノン】の愛と涙の物語である。



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《???》


「絶対に許さない…」


そう言ってナイフを手にし独り言を呟く。


鞄の中にはキャンプ道具のような物が

ひとしきり詰められており

傍にはパンフレットが落ちている。

〔おいでよ、日の坂キャンプ場へ〕



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《日の坂キャンプ場》


「いえーい」「キャーーーー♡」

「みろみろターザン!」

「キャハハハハハハハ♡」


【日の坂キャンプ場】。

千葉県でも有数なきれいな川に面して作られた

大人気のキャンプ場である。


調理場や釣り道具も借りられ

ロッジがあるのも人気なポイントであり

予約もなかなかとれないキャンプ場だ。


そんな人気のキャンプ場に

この物語の中心人物である2人の男女がいる。


「ねぇ、守神。

 これはどういうことかしら?」


「何がだ?」


川から少し離れたロッジの前で

ハンモックに揺られながら

サングラスをしている女の質問に

男は野菜をカットしながら答える。


「私はもっと優雅な避暑地に行きたいって

 言ったはずよね?」


「違う、お前は川が流れて自然あふれるところと

 言っていたぞ。」


「私はクーラーガンガン効いた一流レストランで

 スペイン料理が食べたいって言ったわよね。」


「違う、お前はスパイシーなものがいいって言ったから

 カレーを作っているぞ。」


「私はこの疲れた脳と体を癒すために

 静かな所でリラクゼーションをしたいと言ったわよね。」


「違う、お前はなんかユラユラしながら気持ち良くなり

 たいと言ったからハンモックを用意したぞ。」


「違う違う、うるさいわよ!!

 どうして何で私はこんな所にいるのって話よ!!

 太陽はクソ暑いし、周りはパリピでうるさいし

 ハンモックは思ったより快適じゃないしーー!」


「じゃあカレーは食べないのか?」


「いや、それは食べるわよ。」


「じゃあ大人しくしてろ。」「はーーーい、」


そんな2人のやり取りを

草陰から見ている男が2人いた。


「おいおい、あの女マジヤバくね?」


「ああ、やべぇな。どっかのモデルかよ」


「声かけるか?」


「男連れだろ」


「でもヤリてぇだろ?」


「そりゃそうだけどよ」


「おい、何してんだお前ら?」


ゲスな事を話している2人の後ろから

筋肉質な男が肩を組んでくる。


「あっ、竹之内先輩。ヒヒヒヒ。

 見てください。あの女マジ可愛くないですか?」


「いやいや、体がエロい

 絶対Gはあるな。へへへへ」


「ほおう」


男2人がゲスな笑い方をして

盛り上がっている中

竹之内と呼ばれた男は注意深く観察している。


「やめとけ、お前ら

 ありゃダメだ。」


「えっ?」


「男の方見てみろ腕に赤のバンドしてやがる。

 身体強化系の【スキラー】だ。

 手ェ出したら何されるかわからんぞ。」


「うわっ、マジだ、危ねぇー」


「そんなことより

 向こうのお姫様達を盛り上げろ。

 しっかり美味しい思いさせてやるからよ」


「へへへ、うっす!」


そう言って3人は元いた場所へ戻っていく。


それをサングラス越しに観察していた女は

立ち去るのを確認して

「ふっ、ゲス野郎が」と呟いた。




時は過ぎ日も暮れ

大好きなカレーを食べた女は

先程の不機嫌はどこにいったやら

上機嫌で焚き火を見ていた。


「はあ、癒されるわ♡

 この企画を考えた私はやっぱり天才ね。」


守神と呼ばれた男は傍らで片付けをしている。



「ちょっとやめてよ!!」

「おい、待てよ、話し聞けって!」


隣のロッジから男女が出てくるのが少し見える。


その2人は下の川の方へと

言い合いをしながら降りて行った。


「はあーあ、台無しね。

 シャワー浴びて、寝よ。

 守神、後はよろしく。」


「おう」


そう言って女はロッジへ入っていく。


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《???》


「くそっ、何で呼び出した癖におせーんだよ」


竹之内は不機嫌そうにしている。


「ちっ、こんな事なら

 OKするんじゃなかったぜ。」


そう言ってスマホを取り出そうとした瞬間。

こちらに向かう影がみえた。


「おっ、やっときたか…

 がっ、ぐぁ、、かはぁ、、」


突然竹之内は

何者かにナイフで首を切られ

川のほとりに倒れてしまう。


首を切られた者はその目に涙を浮かべながら。



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《日の坂キャンプ場》


ピーポーピーポー


まだ夜も明けきっていない中

警察と消防車両が数多く止まっている。


その奥から

立ち入り禁止のテープをくぐり

ベテラン刑事のような男が近づいてくる。


「警部、おはようございます。」

「状況は?」


若い刑事が答える。

「はい。被害者は【竹之内大地】21歳、男性

 死因は喉元をナイフのような物で切られた出血死。

 その後体に火をつけられています。」


続けて若い刑事が話す。

「被害者はここのキャンプをしており

 大学サークルの仲間7人と

 川の反対側にあるロッジに宿泊していました。」


「第一発見者は?」


「それが……」


「僕です。中山警部。」


「君は守神君。何でここに?」


「僕らは彼らの隣のロッジに泊まっていまして。」


「ら、という事はあいつもいるのか……。」


「はい、まだいびきをかいて寝てますが。」


「まぁいい、状況を教えてくれ。」


「はい、僕が異変に気づいたのは3時頃です。

 ロッジの外から火が出ているような気がしたのです。

 外に出てみると川の方から火が出ているのが見えました。

 川に到着するとロッジ側から反対側へ渡るための橋が

 燃えていたのです。」


「人影は?」


「いえ、そういうのは、何も。

 反対側へも渡れなかったので

 死体にも気づかず

 消防に緊急連絡しました。」


「消防車はロッジと反対側からしか入れないため

 消化活動を行おうと川に近づくと

 燃えている死体を発見したというわけです。」


「なるほどな、火を放ち物取りとも考えにくいなら

 身内か…。そのサークルってのはどこにいる?」


「現場保全を考えてロッジに待機してもらっています。」


「よし、すぐ行こう。」


「しかし、警部。」


「なんだ?」


「川を渡るには、ここから1km先の橋しか…。」


「な、なんだと……。」


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《ロッジ内》

「ハアハア、それでは皆さんにお話しを

 ハアハア、聞いてくれ田中山。」


中山警部は息を切らしながら若い田中山刑事に任せる。


「すいません、皆さん

 まずは皆さんの名前と【スキラー】の方は

 能力をお願いします。」


まずは金髪の男

「【金城槍多】20っす。【ノーマル】っす。」


その後に坊主の男が

「【丸山真】20歳。【スキラー】で

 異能力は【小さな鉄を5秒固定できる】だよ」

 

次にロック風な女が

「【横田光】21歳。【スキラー】よ。

 【5秒間30cm浮くことができる】能力よ」


ほんわかした女も答える

「【大森蘭子】21歳です。【ノーマル】です。」


続けて痩せた女が

「【川北ひびき】20です。【スキラー】だけど

 【マグカップくらいの水を凍らせる】くらいしか

 出来ないです。」


最後に暗い女が

「【林メメ】20歳です。【スキラー】で

 【真っ暗な所でもほんのり見える力】を持ってます。」


それぞれの話を聞き終えて

田中山刑事が質問を続ける


「皆さんはどう言った集まりですか?」


「名間越大学のサークル仲間っす。」

と金城が答える。


田中山が続けて

「ここには誰が来ようと?」


「竹之内先輩が。あの人サークル長なんで、

 3グループくらいに分けて

 それぞれ別のキャンプ場に行ってます。

 俺たちは竹之内先輩の指示に従って

 グループ分けしてキャンプに来てるんすよ。」


「彼は恨みを買うような人でしたか?」


「……。」

誰一人答えようとしない。

皆バツが悪そうにしている。


「あの人はちょっと強引な所が……」

川北が答え辛そうに話す。


「何かとトラブルがねぇ…」

大森も続く。


どうやら被害者はあまり良く

思われていないようだ。


ここで中山警部が

「わかりました。それでは所持品などを確認しますので

 そうだな別のところへ移動してもらいたいんだが

 どこか場所が……。」


「私のロッジをお使いになられたら

 いかかでしょう?中山警部♡」


「この声は…」


ロッジの扉が開き

自身に満ち溢れた女が立っていた。


その姿は

朝日も相まって神々しく輝いている。


「この事件、【春崎カノン】に任せなさい!」



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