勘違い

からいれたす。

勘違い

 偶然、都内の街角で再会した友達。


 故郷を離れて七年、私も彼女もちょっとくたびれたOLになっていた。


 とはいえ、一緒に食事をしてお酒も入れば懐かしさも手伝ってあっという間に時間も巻きもどり、当時と変わらぬ砕けた会話に至るまでにはそうはかからなかった。


 いい具合にお酒も体に循環したころ、彼女がつぶやいた。


「好きだったんだ、高校のとき」


 唐突に告げられた言葉に、私は目を瞬いた。


「えっ、まじですか」


 私の乾いた唇がようやく紡ぎだした言葉。


 初めてされた告白が同性からとか。しかも、もうすでに過去になっているし……。彼女との思い出が去来する。


「まじまじ。そんなに驚く? なんか見た目とかすっごい好きだったんだよね」


 なんかやけに親しげにしてくるから、ちょっとはおかしいと思ってたけど。そうゆうことだったんだね。まさかねぇ。


「へー。知らなかった」


 私は平静を装ったけど、心臓はバクバクしているのがわかる。お酒が入っていなければ頬に朱がさしていたことに気づかれたかも知れない。


「そうかもね。いまはもう違うけどね?」

「あ、そうなんだ」


 あ、なんかがっかりしたようなホッとしたような。高校三年間ずっと一緒につるんでた、もっとも仲のよい友達ではあったから尚更だ。


 なんだこのいきなり恋して秒で振られたような気持ちは。


「でも、だいぶ雰囲気変わっちゃって今は見る影もないよ」

「えーっ、そんなに?」


 ちょっとまって、私そんなに変わっちゃってるの。そりゃー体重もちょーっと増えたかもだし、老けたかもしれないけれど、これでもアンチエイジングとか頑張ってるんだけれども!


「そんなにビックリする? デザインも大幅に変わっちゃってるから」

「デザイン?」


 え、どゆこと? 人間の体型とかにデザインとかいう? なかなかにエキセントリックなセンスしてない?


「キジになっちゃったんだよね、トキが」

「トキ?」

「そうそう。校章に描いてあったでしょ。学校が合併して変わっちゃったんだよね」


「恋バナかと思ったよ」

「なんでよ……。ああ、そっかロマンスがほしいわね」


 気がついちゃいましたか、赤面ものだよ。それですね。


「ときにはね」


 新潟県出身のふたりは島と本州ぐらいすれ違っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勘違い からいれたす。 @retasun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説