第5話

『じゃじゃーん!ミナちゃん、見て!新しいバッシュ!』

『そう』

『よくバッシュの話もしたよね〜!私たち、昔から白いバッシュしか履かなくて』

『すぐ汚れるくせにね』

『そうそう!』

ゆうちゃんのLINEは昔から変わらないゆうちゃんのままで安心する。テレビに映るゆうちゃんは『神門結依選手』って感じでやっぱり違和感があるから。

『そういえばゆうちゃん、『リン様』って呼ばれてるけど』

『そうなんだよ〜なんか、かっこいい!凛々しい!リン様!ってことらしいんだけど……私、そんなかっこいいかなぁ』

『容姿と足の速さじゃない?』

『足の速さがかっこいいって、なんか小学生みたいだね』

『まぁ、あとはテレビの印象?ゆうちゃん滅多に笑わないし』

『緊張するんだもん。流石のミナちゃんもテレビに出たら、ガッチガチだと思うよ!』

『私は愛想振りまくの上手いから平気』

『またまた〜!でも、実際はミナちゃんの方がかっこいい!って感じの性格してるよね』

かっこいい?かっこいいというより、冷めてるだけな気がするんだけど。

『そう?』

『そうだよ〜ミナちゃんもテレビに出ればいいのに』

『出る要素がないじゃん』

『バスケがあるでしょ!』

『ないよ。私バスケやってないし。ただのJK』

『今からでも間に合うよ!もう1回やろう!』

(やらないって言ってるのに)

ゆうちゃんみたいにバスケが好きだって大声で言えるような人間に私はなれなかった。バスケというレールを走る電車の窓から途中で飛び降りた人間だから。もう二度と乗りたいなんて言えない。

『私はいいかな』

『なんで〜』

『ゆうちゃんの応援に徹します』

『嬉しいけど、嬉しくない……ミナちゃんとまたバスケやりたいのに!』

『ごめんね、それだけは無理だよ。第一、ゆうちゃんはプロでしょ。私情は挟んじゃいけません』

『そうだけど〜!』

ゆうちゃんの苦悩の表情が思い浮かぶ。

私はクスッと笑った。

『まあ、そういうわけで。私は課題があるからこの辺で……』

『そっか……ミナちゃんも勉強大変なんだもんね……頑張って!』

よくわからない生き物のスタンプと共にメッセージが送られた。

(相変わらず、変なセンス……)

ゆうちゃんはあまり変わらない。バスケが大好きな、ゆうちゃんのままだ。私がきっと変わってしまった。バスケをここまで嫌いになるなんて、想像もつかなかった。

「……はぁ……」

昔はこの部屋にだって、プロ選手のポスターやボール、それから数々のメダルが置いてあった。

それらは全て、片付けてしまったけれど。

(……球技大会、全然ダメだったな……シュートは入ったけど、パスが人に合わせられなかった。スピードも遅くてカットされたし、ディフェンスも振られたし……)

監督が見たら絶対怒る。

そんなことを思いながら机と向き合った。

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