65.勇者様とミンナ副団長!?

 次の瞬間、勇者様は一瞬で私達の横を通り抜けていった。振り返ってみると、もう既に遠くで戦っている兵士の元にたどり着き、モンスターを圧倒している。


 その横を、颯爽と翔け抜けるアンネロッテ。彼女に跨るミンナ先輩が、次々にイエティを倒していくのだった。



 そんな光景が暫く続く。二人のお姿に奮起して、私達も他の仲間の元に駆け寄ろうとした時だった。一緒に戦っていた騎士様が、声を出してきたのだ。


「待ちたまえっ! モンスター打倒は我々騎士団が受け持つ。君たち兵士には、鉱石の破壊をお願いしたい」

「そうですね。あまり多く群がると、勇者様や騎士様に迷惑がかかりそうです」


「理解が早くて助かる。毎度、迷惑事を押し付けるが、君たちの仕事には騎士団団長や副団長共々感謝している。よろしく頼む」

「恐縮です。こちらこそ、騎士様方の働きには感謝の限りです。どうぞ、ご武運を」


 そんな会話を交わす、騎士様とシャチル部隊長。お互いに感謝の言葉を忘れないところは、さすが王宮戦士。


 大いに尊敬できます。


 颯爽と救援に赴く騎士様を見送り、私達は倒されたモンスターの残骸に向かった行った。拳部隊の短剣や術部隊の杖では鉱石を砕くことが大変ので、剣部隊が後処理を担当することに。


 後から聞いた話だけど、勇者様とミンナ先輩は、この先に出現したブリザードドラゴンと戦っていたのだとか。騎士団の方々も参戦しようとしたところ、このモンスターの群れが現れて交戦する事になったらしいとのこと。


 勇者様とミンナ先輩が戻られてからの戦場は、王宮戦士の独壇場で、あっという間にモンスターは一掃。その亡骸を剣部隊が魔法鉱石を砕き、拳部隊と術部隊が回収していったのだった。



 ◇◆◇オフタカタ◇◆◇◆◇◆◇トッテモツヨイ◆◇◆



「勇者様とミンナ先輩、カッコ良かったねぇ。私、感動しちゃったなぁ」

「あぁ、まったくだ。鮮やかすぎて視線が離せずに、後の作業が全く手につかなかったしな」


「ふっふっふぅ、違うだろぉ。ヒヨリの場合はぁ、ミンナ副団長よりなぁ、勇者様に感動してたんじゃないのかぁ。あははぁ」

「ふえっ? えと、 そっ……そんなことないよ。ミンナ先輩もカッコ良かったし、アンネロッテも頼もしかったよ」


「ふっ……”も”な!」

「おぉぉぉ! ヒヨリがぁ、照れてるぞぉ。動揺しているところがぁ、正直者だぁ」


「ふえぇぇぇっ!? ちっ……違うよっ! だっ……だって私、勇者様ことよく知らないしっ! 勇者様はそのっ……あのっ……私……じゃ無くって私の事を……って、違うからっ! 私じゃ無くって……私の事がっ……」

「「おぉう……落ち着け落ち着け」」


 詳しいことが言えないものだから、頭がクラクラしてのぼせてしまいそうに。何故に、そうなっているのかと言えば、そのものズバリ、お湯に浸かっているからなのだ。


 と、言うことで浴場です。


 私たちは今、第二中継所の宿舎にある浴場で、久しぶりにお湯に浸かって遠征の疲れを癒しているのだった。



 ◇◆◇アッタカイ◇◆◇◆◇◆◇キモチイイ◇◆◇



 あの戦闘の後、魔法鉱石の回収を終えて、先行していった勇者様と騎士団の後を追うように移動を再開。それ以降、モンスターの残骸もなく、無事に第二中継所までたどり着いたのだった。


 その頃には辺り一面が銀世界となり、チラホラと雪も降っていた。仮面の口元から吐き出される息も、真っ白になっていたし。


 ちなみに、第二中継所の宿舎も第一中継所同様に、男女の宿舎の間に高い壁がある。ただ、第一中継所の宿舎と違って、ここの宿舎には浴場があったのだ。


 とは言え、そんなに大きくない為に、隊ごとで交代に入ることに。それでもやっぱり、お湯に浸かれるのはとても有難かったのは間違いなかった。


 そしてようやく十七番隊の順番となり、こうして会話を楽しんでいたと言うわけなのでして。とはいえ、私はマリマリとカーニャに弄られまくっているのですけど。


 そんなまったりした時間の中で、サリッシュ隊長だけが厳しい目つきでお湯を睨みつけていた。そのただならぬ雰囲気に、誰も話しかけることが出来なかったのだ。


 そろそろ誰か話しかけてくれないかなぁと思った瞬間。サリッシュ隊長はいきなり立ち上がり、女の子の大事なところをしぶきでキラキラさせながら、高らかに宣言したのだった。


「よしっ、決めたっ! 決めたぞっ! 私はこの遠征中に、勇者様に告白するっ!」


 話しかけなくて良かったと思う、その他隊員たち。ただ、その宣言に理解が及ぶのに、暫しの時間を要してしまった私達だったのだ。


 

 そして翌日、我々先遣隊は四日間の移動を経て、無事に北の領地にある城塞都市に、辿り着いたたのだった。

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