2.はじめまして!?
ここは、コスドーリア王国の中心部。と言っても、全領土の中心よりは、少し北寄りに位置するところ。
この世界では、数ある大国の中でも、最大の城郭都市。コスドーリア王国の人口、約六百万人の半分ほどが住む王都だ。
東側の工業区画では製鉄業が盛んで、国営の製鉄所からは二十四刻間絶え間なく、煙突からもくもくと煙が上がっている。
王都の正門がある南側は商業区画になっていて、王都外よりやってきた荷台が、長い列を作っていた。
王都最大の面積を持つ西側は、住宅街。その南区画は庶民の住居が並び、宮殿寄りの北側になるにつれ、建物が大きく豪奢になっていく。
そこに住まわれるのは騎士団の方々だ。
南側正門からの中央大通りは三キロメルトルと長く、二キロメルトル辺りに大きな噴水広場がある。その左右の通りは王都の台所である、露店街となっていた。
そこから更に進むと、そこは王都北側の王宮区画だ。
その広大な土地の中心に、豪奢と言う言葉だけでは足りない程の、立派な宮殿がそびえ立っていた。
その王宮区画の片隅にある、女性兵士専用宿舎で私たちは今、着替えの最中なのだ。
◇◆◇オキガエチウ◇◆◇◆◇ノゾイチャダメ◇◆◇
私の名前はヒヨリ。
コスドーリア王国の、王都以外の四つの領地のうち、東の領地から来た、十六歳の女の子。
この王国では人気職の、”王宮兵士”に二度目の採用試験で合格。三日間の教育期間を終えて昨日、初任務を果たしたピッチピチの新兵です。
「いや、ピッチピチって……もうちょっと言い方ってもんがあるんじゃないのか、ヒヨリ? ピッカピカ、とか」
隣でそう言ってくるのは、同期入隊のマリマリ。ひとつ年上の十七歳で、三度目の採用試験で合格したみたい。
私よりも、拳ひとつ分背が高く、目鼻立ちがキリッと整った、スレンダーな美人さん。
すっごく真面目でお世話好き。よく喋る女の子で、初めて会った時から話が弾み、それ以降は一緒に行動することになった。
王都に来て、初めてのお友達だ。
そして偶然にも、同じ十七番隊に所属することになり、抱き合うほど大喜びをしたのは昨日のことで。
「いやぁ、ピッチピチもピッカピカもぉ、大して変わんないぞぉ。だったらなぁ、プリップリでもなぁ、いいんじゃないのかぁ。あははぁ」
そう言って笑うのは、こちらも同期入隊のカーニャ。
舌っ足らずでノンビリした喋り方が特徴的で、ボリュームのある髪の毛を、左右で束ねる私と同じ十六歳。
これまた私と同じ、二度目の採用試験で合格したとのこと。
「ふえっ? プリップリって、私達はお魚じゃないよ?」
「うむ、そうだぞカーニャ。確かに私達は鮮度は高いが食べ物じゃないんだ、もうちょっと違う表現があるだろう」
教育期間の初日に、昼刻食をマリマリと食べてた時に知り合った子で、話しているうちに意気投合して一緒に行動することになった。
もちろん同じ十七番隊になって、ピョンピョンと飛び跳ねながら喜びんだのは、記憶に新しい。
二人とも、西の領地からやってきたとかで。だけど、住んでた地区が違うみたいだから、お互い初めましてだったとか。
とは言え同郷と分かった瞬間に、昔からの友達のような話し方になってるけれど。
遠路はるばる、東の領地から王都にやって来てまで、何故に兵士職に着きたがるのか――は単純明快。実は、現実的な理由があったりなんかするのだ。
「お給金、いいもんね。後、それ以外のお手当や保証が手厚いし」
「おぉぉぉ! いやらしい事をぉ、サラリと言うヒヨリは正直者だぁ。ご両親のぉ、育て方が本当に良かったんだろうなぁ」
「そっ、そうかなぁ。エヘへへ」
「いやヒヨリ、それは褒め言葉ではないからな。カーニャを見てみろ」
「ふえっ? そうなの!?」
マリマリにそう言われ、カーニャを見る。すると、ふいっと顔を背けられてしまった。何となくだけど、こちらに向けた後ろ頭が、プルプルと震えているようにも見える。
――頭でも、痛いのかな?
あまり酷いなら薬でもと言うと、隣のマリマリに溜め息を吐かれてしまう不思議。知り合って早々、友達がいがないなぁと思ってしまった瞬間だった。
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