R18から始まる性春ラブコメ
ななし
第1話 エロ本は隠すよりも堂々と置け!
男と生まれたからには
誰でも一生のうち一度は夢見る
"甘酸っぱい青春"
"エロ漫画"とはそんな青春をリアルで味合うことができない男に向けられた芸術作品である……!by 松原 タクト 17歳(高2)
そんなくだらないオープニングナレーションを考えながら俺は授業終了のチャイムを待った。
「…………」
クソ……どうしてこうも嫌な時間というのは長く感じるのだろう。つまらない授業しかりトイレを我慢している時間しかり。
あの時だけ絶対、時間操作系の能力者が時間を遅くしているに違いない。
今だって!!
今朝、友人から借りた"例のブツ"を一刻も早くみたいのに!!
10分休みや昼休みも我慢した分、見たい欲求が強くなっている。
なんといったって今回は友人曰くシュチュエーションも絵も俺好みの代物らしいからな。すげぇー楽しみだぜ。
キーンコーンカーンコーン。
「え、あもうこんな時間! それじゃあ授業を終わらせましょう」
先生がチョークを置いて、終礼をし、1日の授業が終わった。
俺はすぐに筆記用具やノートをカバンにしまった。
よし"あの場所"に行こう! "例のブツ"も今朝そのまま置いてきたからな。このまま直行しよう。
そう思い教室を出ようとしたその時。
「あ、松原くん」
ある女子が俺に声をかけた。
「え、あ、はい?」
振り返るとそこには……学年成績&人気ナンバーワン、学校で付き合いたい女の子ナンバーワン、席替えで隣になりたい女の子ナンバーワン、黒髪ロングヘアーが似合う清楚系女の子ナンバーワンなどの肩書きを持つ美少女……"
「お、おっふ浅上さん……」
思わず口元が緩んでしまった。
「松原くん、今日私と掃除当番だよ」
「え、あ、そうだっけ?」
「うん、掃除しよ」
そう言い箒と塵取りを渡される。
こんな時に掃除当番なんてついてないぜ……しかし、それ以上にあのお嬢様結びが似合う女の子ナンバーワンの浅上さんと共に掃除できるなんてついてるぜ!
「よし! やりましょう!」
俺は気合いを入れて掃除に望んだ。
俺と浅上さんだけが残った教室で……。
「松原くんって部活とか入ってなかったっけ?」
床を掃いている時、浅上さんが突然この俺に話しかけてきた。
クラスであまり目立たないポジションにいる、この俺ごときに……!
「え、あ……いや、やってるよ。これでも部長なんだ、ハハ」
「へぇーすごいね。何部なの」
「帰宅部」
「え?」
「帰宅部部長」
そう言うと彼女は少し固まり、
「ふふふ、やってないじゃん」
と笑ってくれた。
いやーー可愛い。
俺の渾身の帰宅部ネタも笑ってくれるなんてなんて良い人なんだ。
「浅上さんは部活何やってるの?」
「ん? なんだと思う?」
俺の顔を下から覗くように聞いてきた。
このちょっとした仕草が堪らない。
「え、えと運動系?」
「ブー」
「じゃあ文化系?」
「ブー」
え、どっちでもないってなんだ?
頭を悩ましていると浅上さんはニコッと笑い俺に向かって、
「帰宅部副部長!」
そう元気よく言った。
ハァ………好き。
こりゃあ……惚れるわ。
無条件で恋に落ちますわ。
この破壊力……鼻血通り越して吐血しますわ。
「え……あれ……松原くん、口から血が出てるというか垂れてるけど大丈夫?」
「ん、あ、大丈夫、ちょっと尊死しかけただけだから」
「そ、そう……ならいいけど……それじゃあ早く掃除終わらせて部活に向かおう」
「ああ!」
本当は永遠にこの時間が続けばいいのにと思うけど、しかし時間操作系の能力者は俺には厳しくて、こいう時に限ってはすぐ時間を加速させてしまう。
つまり楽しい時間はあっという間に終わったのだ。
「よし、掃除終わり! あとはゴミを捨てに行って終了だね」
「だね」
マジであっという間に終わってしまった……。
「あ、しまった。そう言えば私、使わなくなった教材を"古倉庫"に置いてくるよう先生に頼まれていたんだった!」
「あ、そうなの? だったら俺がゴミを捨てとくからその頼まれ事してきていいよ」
「本当!! ありがとう松原くん!」
俺は両手でゴミを持ち浅上さんを見送り、ゴミ捨て場に向かった。
古い教材は未だに"古倉庫"に置かれるんだな。確かにあそこには古い教科書とか沢山あった。
"古倉庫"は今は校舎裏にあるあまり使われていないプレハブの小さな倉庫である。
新しい倉庫が最近建てられて以降、施錠もしなくなり誰でも出入りできるようになっている。
と言っても今あそこを出入りしているのはそこを秘密基地としている俺くらいだろう。
俺の大切な"コレクション"や今朝友人から預かった"例のブツ"もあの古倉庫に大切に保管されているしね……ん?
"使わなくなった教材を古倉庫に置いてくる"
つまり浅上さんが古倉庫に行く。
つまり俺のコレクションを目の当たりにする可能性が高い。
あれ……これ……?
「やべぇーじゃん!!!」
その事実に気づいたのはゴミ捨て場に着いてゴミを捨てた瞬間だった。
俺は急いで古倉庫に向かった。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!
俺のコレクションを見られたら浅上さんに嫌われる!!
それだけじゃない! そのことが多方面で伝わり俺の青春は終わる!! まだ何も始まってないけど!
急いで回収しないと!!
いやでも待て! 俺のコレクションはちゃんと隠してあるから万が一入っても気づかないだろう!
いやでも! 今朝急いでいたから友人から預かった"例のブツ"は隠してねぇ!!
倉庫の扉を開けた瞬間、すぐ見つかるようになってる!
いやでも! それが俺の物とは特定できないだろう! なら大丈夫か。
いやでも待て! 確か"例のブツ"を友人に預かる時、貸してたノートも渡されていたな。その俺のノートもそのブツと一緒に置いていたような……ノートにはしっかり俺の名前が刻まれているし、見たら言い逃れはできないかも……。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!
俺は全力疾走で古倉庫に向かった。
しかし……。
「あ……」
時すでに遅しだった……。
倉庫の扉を開けた時に広がった光景は、あのラブコメヒロインにふさわしい女の子ナンバーワンの浅上さんが俺の楽しみにしていた"例のブツ"を眺めていた。
そう"例のブツ"ことエロ本を……。
俺の大好きなイチャラブが描かれたエロ本を見ていたのだ!
そして、そのすぐ横には俺のノートが置いてあった。
オワタ……。
頭が真っ白になった。
そんな俺の方へエロ本を持ったまま浅上さんは冷たい視線を向けた。
「これ……松原くんの?」
低い声でそう聞く。
誤魔化せないと思った俺は小さく頷いた。
「そっか……」
そうして彼女は数秒沈黙しエロ本を眺めた。
"きもちわる"
そんな罵声を言われる!!
悟った次の瞬間……
「お子ちゃまね……」
「え……?」
意外な言葉がかえってきた。
お子ちゃま……一体どういう意味なのだろう。
聞き直す前に彼女は続けて俺に言い放った。
「松原くん……相変わらず、甘っちょろいね。何もわかっていないよ」
何を言っている……?
さらに頭が真っ白になっていく。
首を傾げ呆然としていると、彼女はニヤリと今まで見たことない不気味な笑みを浮かべて、色っぽくそして、自信満々に宣言した。
「私が君に教えてあげるよ……本当の"エロ"というものをね……ふふふ」
「え……?」
この時、俺は思いも知らなかった。
一緒に異世界転生したい女の子ナンバーワンの浅上 凛花がまさか……あんな……
"やばい女"だなんて。
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