第3話

 それから、およそ2時間を掛けて解体した後、扉の前に戻ってくる。


「よし! 行くか!」

「はい!」


 こうして俺はハルとともに、この不思議な扉の先を探検することになったのだった。


 入り口から懐中電灯で中を照らすと、先は緩やかな斜面が続いている。ちょうど人が一人通れるほどの広さがある。ハルは俺が照らした穴を覗き込みながら口を開いた。


「結構深いですね。どっちが先に行きます?」


 ちらりと俺は一度、ハルを見て答える。


「俺が先に行く。ロープはしっかり腰にくくってろよ?」


 ニコニコと頷くハルの様子に不安を感じた俺は、また溜め息をつく。それから洞窟を進む。洞窟の壁面の様子を確認しながらゆっくりとだ。崩落とかされたら洒落にならないからな。するとハルも同じ心配をしていたようだ。


「崩れたりしませんよね?」

「それは俺も気になってた」

「ガスとか空気とか大丈夫ですよね?」

「……知らん」


 こらばかりは壁の様子を確認しながら慎重に進むしかない。


 とは言っても所詮は素人のすることなので気休め程度だが。


 それでもやらないよりはマシと、ゆっくりと慎重に進むこと30分ほど。ハルが沈黙に耐えられずに馬鹿なことを言いだした。


「この先に何があるんですかね? 地底人とかが居るんですかね! 超古代文明が眠っていたとかですかね!」

「北海道の地下にそんな物があるわけ無いだろ!」


 ハルのテンションがおかしいので、頭に手刀を食らわせて黙らせる。そうやって、じゃれ合いながら進んだ先には巨大な洞穴があるだけだった。


「行き止まり、か……」


 ハルからも不満を表す声が漏れる。


「え~」


 俺は振り返って尋ねる。


「何が不満だ?」

「だってぇ。地底人はどこですか? 超古代文明は?」

「さぁな」

「そんなぁ……」


 そう言って口を尖らせるハルに俺は思わず呆れてしまう。


「おまえな……」


 しかし俺の言葉にも構わず、がっくりと肩を落としたハルが口を開く。


「私はてっきり、地底人に出迎えてもらえるものかと……」

「21世紀の、この時代に地底人て……」


 バカは放っておいて、俺は引き返そう壁に手を付いた。すると手の平に岩肌とは違う硬い何かが触れた。驚いてライトを照らすと、そこにはスイッチがあった。


「おいおい。スイッチが有るぞ?」


 戸惑う俺をよそにハルが「スイッチオーン!」と叫んでスイッチを押した。止める間もないぐらいの超反応。


 俺はハルの頭を叩く。スパーンといい音がなった。やはり空っぽか。


「お前な!」

「え~、だってぇ~」

「だってぇ~じゃねぇよ! なに押してんだよ!」

「スイッチがそこにあったから?」

「あったからじぇねぇよ! 押すなよ! 馬鹿じゃないのか!」


 そんな漫才をしていると、頭上の方でケタケタと笑い声が聞こえたのだった。

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