発言保険 ーあの時、言わなきゃ良かったー

@noberu

証券番号001 ライフプランナー口田

お世話になっています。

ライフプランナーの口田です。

「あの時、あんなこと言わなきゃ良かったのに…」って思うことありませんか?

今回、ご紹介する保険は、あなたの「言わなきゃ良かった」と思う発言をなかったことに出来る商品です。

例えば、これよくある話なんですけど、奥さんが専業主婦で旦那さんが一人で稼いでるご家庭ってあるでしょ。最近は共働きが増えたと言っても、まだまだ昭和の時代から日本では多いパターンですよね。その時に、旦那さんが言っちゃうんですよ。「誰のおかげでお前ら飯を食えてるんだ?」って。これって絶対言ったらダメなやつですよね?ちょっと冷静になって考えてみたらわかるやつですよね?でも、こういう話が多いんです。でも、そんな酷い発言をしてしまった時もこの保険に入っていたら大丈夫。

だって、この保険があなたの「誰のおかげで飯を食えているんだ?」という発言をなかったことにしてくれるんです。

この保険は家庭が崩壊するのを防いでくれるんですよ。

なので、結婚する前に入られる方は多いですね。

結婚生活って本当に「言わなきゃ良かった」ってことだらけですから。

私なんて未だに妻に恨まれていますからね。

私が若い頃にもこの保険があれば良かったんですけどね。


口田は、いつものように冗舌に営業トークを繰り広げる。

彼の仕事は、ライフプランナーという人生設計をお客様と一緒に考え、必要とあれば保険などで人生に対して備えを充実させたりする仕事だ。

もしもの時の備えというのは、幸せな人生を送る上で必要不可欠であるため、どうしても保険が必要になる。

10年前までは保険というものは生命保険や死亡保険など病気や死などに対する備えだけであったが、ここ数年で新たなジャンルの保険である「発言保険」というサービスが現れた。

この保険は、「言わなきゃ良かった」と思う発言をなかったことにしてくれる保険だ。

この保険は少々値段は高いが、加入者の人生をより良くしてくれるため、人気がじわじわ上がって来ているのだ。

口田は特にこの発言保険の営業を得意とするライフプランナーなのだ。


「どうですか?こちらの保険にご興味はおありですか?」

口田は相談者の斉藤圭太の心を見透かしたように尋ねた。

「いや、本当に人生って、言わなきゃ良かったってことだらけですよね。さっきの誰のおかげで飯を食べれているんだってフレーズは実は私も言ってしまってるんですよね」

斉藤圭太は恥ずかしそうに頭を掻いた。

口田は待ってましたと言わんばかりに大きく頷き、「わかりますよ。斉藤さん。私も若い頃は似たり寄ったりな発言をして妻を怒らせてしまってますから。でも、斉藤さんはラッキーです。まだ結婚生活4年目の段階でこの保険と出会えたのですから」と自信満々に言った。

「そうですね。でも、この保険って当然ですが、加入してからの発言しか補償出来ないですよね?」

圭太から出たこの質問を聞いた時、口田は契約を確信した。

「はい、基本プランだとそうなります。加入日から保証は始まり、その後の発言に対してしか補償されません。しかし、この保険にはオプションがありまして、少々値段は上がるのですが、加入前も保証することも可能なんです。例えば、今年加入してもらい3年経過したとするでしょ。すると加入日の3年前までの発言も保証出来るんですよ」

「えっ、マジっすか!その保険是非入りたいです!」

圭太はかなり前のめりになったようだった。

口田はそんな前のめりな圭太にあえて、冷静になるようトークを展開することにした。

「斉藤さん、落ち着いてください。実際にチャラにしたい発言ってこの結婚4年間でいくつありました?それとも、そんなに遡ってまで消したい致命的な発言がお有りでも?」

「いやー実は結婚3年目で子供が産まれたのですが、その時にやらかしているんですよね。そのせいで未だに妻は僕のことを恨んでますし、事あるごとに過去の話を出してきてキツいんですよね」

口田は「うーん」と悩んだ様子で更に説明を加えた。

「斉藤さん、一つ注意があります。この保険ですが発言をなかったことにする際に、1発言あたり数年間のお客様の残り寿命を頂くことになってます。発言の内容など人生に与える影響などを考慮に入れて独自の計算式でどれぐらいの寿命を頂くかは決まるのですが、その斉藤さんのなかったことにしたい発言内容をもう少し詳しく聞かせて頂けないでしょうか?」

斉藤圭太は目を見開き、「え、寿命が減るんですか?保険なのに?」と言った。

「はい、これは生命保険ではないので加入者様の寿命を頂いて運営しています。斉藤さん、少し簡単にでも見積もってから加入された方が良いと思いますよ。なかったことにする発言内容を教えて頂ければ、斉藤さんの場合だとどれぐらい寿命が減るかわかりますので」

斉藤圭太は頭を掻きながら、ゆっくり話し始めた。

「実は、子供が産まれて間も無くのとき話しなんですが、妻も身体がボロボロで精神状態も不安定にも関わらず、僕は晩御飯のおかずにケチをつけてしまったんですよ。僕としても毎日家族の為に働いているのに『こんだけしかおかずないよかよ』って思わず言ってしまって、それがかなり妻のメンタルにダメージを与えたらしく、未だにこの話を事あるごとに出してくるんですよね。あと、『誰のおかげで飯が食えてんるだ?』も言ったことあるので、これもなかったことにして欲しいですね」

口田は、「この旦那なかなか言ってはいけない発言をフルコースでしてるな」と思いながら、圭太の発言をパソコンに打ち込み、独自の計算式で計算を始めた。

「承知しました。少々計算しますのでお待ちください」

「はい」

斉藤圭太は、やや俯きかげんで待ち続けた。

「えーと、先程の発言を二件同時になかったことにすると、斎藤さんの残り寿命を5年ほど頂くことになりますね」

「5年ですか…まあ、でもこの発言がなくなれば人生のQOLは上がりそうなので、もしかしたら安いかもしれませんね」

「そうですね。これは考え方次第ではあると思います。ただ、人によっては月々の保険料の支払いに加え、残り寿命が減るこの保険はありえないって言われる方もいますが、これもまた考え方次第ですね。斉藤さんのようにどうしてもなかったことにしたい発言をもう既にしてしまった方だと尚更かと」

「そうなんですよ。僕はけっこう切羽詰まっていて、もしかしたらこの発言のせいでゆくゆくは妻と離婚なんて話にもなりかねないので、芽を摘んでおきたいんですよね」

斉藤圭太は大きく首肯した。

「それはわかりますね。女の人って過去の発言を絶対忘れないですからね。私も妻にどれだけ過去のことを引き合いに出されて怒られるか…」

口田は昨日妻に怒られたことを思い出したため、演技なく共感できた。

「そうなんですよね。もうなんであんなに記憶力しっかりしてるんですかね。女性って」

斉藤圭太は、急にハッとした表情を浮かべた。

「口田さん、もし僕の寿命があと3年だった場合はさっきの発言をなかったことにしたらどうなりますか?5年も残り寿命がないのでマイナスですよね?」

「はい、それは簡単なことです。発言をなかったことにした瞬間に何かしらの事情により死にます」

口田は淡々と応えた。

「えー、マジっすか!その瞬間に死んじゃうんですか?」

「はい、そういうお客様もたまにいますよ。私も過去に二度だけ遭遇しました。一人の方は年配の男性でもう75歳を超えてましたかね。残り寿命もあと2年だったようで、発言をなかったことにするのに3年の寿命が必要だったんですよ。もちろんこの場合は寿命は足りてないですが、しっかりご指摘頂いた発言はなかったことにしました。発言をなかったことにしたことで奥さんにも恨まれることなく葬儀を行ってもらえたみたいですよ。

あと、もう一人の方は少し若かったですね。30代後半だったと思います。この方も斉藤さんと似たような発言をなかったことにしたかったらしく、内容もやや斉藤さんよりも過激だったため、8年もの寿命を頂くことになったんですよね。その影響もあってか、発言をなかったことにした途端に心臓麻痺が起こり、すぐに亡くなりましたね。残り寿命は7年だったみたいです。ただ、この方も発言をなかったことにした甲斐があって、奥さんは何の恨みもなく見送られましたね。そう言う意味では残された人にとっても良かったかも知れませんね」

「なるほど」

斉藤圭太は深く納得した様子で頷いた。

「まあ、この保険は自分も幸せにしますが、発言で傷ついた人も救いますからね」

口田は少し遠くを見ながら、一人で頷いた。


✳︎


1年後、斉藤圭太のなかったことにしたい発言に保険を適応できる月がやってきた。

「斎藤さん、お久しぶりです」

口田は力強い口調で挨拶をした。

「口田さん、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

斉藤圭太は少し笑みが溢れているようだった。

やっとあの発言が消せる。なかったことにできる…

斉藤圭太は待ちに待ったこの日を喜んだ。

「では、斎藤さん、ついに例の発言をなかったことに出来る日が来ましたね。オプション付きでしっかり1年間加入していただいたので1年前の発言に対しても保証致します」

「はい、ありがとうございます」

「斎藤さん、以前からおっしゃってた発言以外に追加でなかったことにしたい発言はありますか?」

「いやー実はこの一年間でもいくつか出てきて、細かなことではあるんですがせっかくなんで追加でなかったことにしてもらってもいいですか?」

斉藤圭太は頭を掻きながら言った。

「承知致しました。では、追加でなかったことにしたい発言を教えてください。再度頂くご寿命の計算を行いたいと思います」

口田は待ってましたと言わんばかりの勢いでパソコンを叩き出した。口田としてはここで追加があることは非常に喜ばしいことである。この追加によってより多くの寿命をもらうことができるため、それは自分の営業成績に直結するのだ。


斉藤圭太は自分から残り寿命が6年も減るという事実に少し怯えながらも、これで例の発言がなかったことに出来るのなら安いもんだと思った。

「では、斉藤さん、6年の残り寿命頂きますね」

口田は少しニタッとした笑いを浮かべながら最終手続きを進めようとしていた。

「いや、ちょっと待ってください!」

斉藤圭太は突如、万が一、自分の残り寿命が5年未満である可能性を考えだし、躊躇した。

大抵の人間はここで一回怖気付く。口田のシナリオ通りだ。

「はい、わかりました。まあ、6年もの寿命は流石に惜しいですもんね。しかし、せっかく加入された保険ですから利用なさらないと勿体ない気もしますが、使わずにいけるのであればそれに越したことはないですからね。今回はやめておきますか」

口田はこの「勿体ない」という言葉で加入者に保険の利用をさせてきたのだ。

人間って生き物はつくづくケチな生き物だ。

支払ったお金、かけたコストは回収したくなる。損をしたくない生き物なのだ。

「いや、ちょっと待ってください!口田さん!」

斉藤圭太は少し焦りながら、口田の提案を制した。

「えっ、どうしました?斉藤さん」

口田の頭の中ではチェックメイトという言葉が響いた。

「口田さん、やっぱり、保険使います!」

すると、突如口田のケータイが鳴り出した。

やれやれ、良いところで電話か。

口田は少しガッカリした様子で、「斉藤さん、すみません。電話対応してもいいですか?」と聞いた。

「あ、はい、どうぞ」

斉藤圭太は少し出鼻を挫かれた顔をしていた。

「はい、いつもお世話になっております。口田です」

口田はケータイを耳に当てた。

「はい、はい、えっ、また使うんですか?いや、そんな発言なんてきっと旦那様気にしてないですよ。残り寿命が足らなくなりますよ」

斉藤圭太は口田の顔をじっと見続けた。

そんな様子に口田は気づきながらも、電話口の先の奥様の保険利用を止めようと考えていた。

「いやー少し最近、保険利用の頻度が多い気がしまして…はい、はい、確かに私たちとしては何も問題はないのですがご自身の寿命が縮まるわけで、即ち人生が減るわけで…」

実は、口田はここまで保険を利用し続けるのは危険だと感じていた。

この電話先の加入者は、発言消去依存者だ。

この保険サービスが始まって以来、ちらほら現れてきたのだ。

自分の人生を間違いないものにしたい…

そんな想いを持つ人がなりやすいらしい。

もっとも間違いだらけの口田からしたら理解不能ではあるのだが、小さな頃から優等生できたタイプの人からすると命をかけても良いことのようだ。

「はい、今すぐなかったことにすればいいんですか?今からだと手続き込みで明日の午後からの適応が最短です」

口田は電話先の加入者を止めることが出来ず、またしても保険を使うことになりそうだった。

口田としても、加入者の寿命がもらえれば良いと思ってこの仕事をしているわけではない。

確かにこの手の発言消去依存者が自分のお客にいると、仕事の成績は上がる。

たが、口田も加入者のより良い人生の為に保険を勧めているわけで、その人の人生までもなかったことにするのは本末転倒だと思っているのだ。

確かに、どうしても消したい発言があって、その一つを消したら死んでしまったという話は稀にある。

しかし、その場合はその人の人生を輝かせる為の一回の保険の使用だ。

今回の発言消去依存者の利用とは訳が違う。

しかし、今回も口田は負けてしまった。

「はい、承知しました。急いで手続きを進めます」

口田は電話を切るとため息をついてしまった。

「あ、すみません、斉藤さん」

「いえいえ、全然大丈夫ですよ。なんか口田さんも大変そうですね」

「お気遣いありがとうございます。では、斉藤さん、続きを進めましょうか」

口田がパソコンの入力を進めようとすると、斉藤圭太はバツの悪そうな顔で、「すみません、やっぱり今日は保険利用やめておきます」

あーこうなってしまったか。

さっきの電話のせいで斉藤圭太は怖気ついたのかもしれないと口田は思った。

「そうですか。まあ、もし利用したくなったらいつでも電話ください」

口田はそう言い、席を立った。



1週間後、斉藤圭太から口田に電話が来た。

「はい、斉藤さんですか?はい、そうなんですね。わかりました。一度面談致しましょう」

口田は斉藤圭太との面談の日時を設定し、電話を切った。

何故か、斉藤圭太は落ち込んだ様子で、保険を継続するか悩んでいると言っていた。一度も利用してないのに彼は保険を解約しようとしている。しかも使うことが出来る状態になっているにも関わらず…

明らかに不自然だと口田は思った。

すると、口田のケータイがまた鳴り出した。

次は、本部からの電話だ。

「はい、はい、えっ、あの人死んだんですか?」

そう、斉藤圭太が保険を利用するかどうか悩んでいた時に、電話をしてきたあの女が死んだのだ。

発言消去依存者の末路は、いつもこんな感じだ。

極度に残り寿命が減っている為、いつの間にやら死んでいることがあるのだ。

保険の利用の際に1秒でも寿命が残っていたら、ライフプランナーの担当の人間には残り寿命は知らされないルールになっている。

つまり、口田は今回の件に関しては利用者が直近で死ぬことはわからなかったのだ。

最も、本部にある巨大なサーバーはちゃんと残り寿命を把握しているのだが、そこにアクセス出来る人間は会社の超上層部だけだ。

口田は、そういえば、亡くなった彼女も斉藤だったなと思い、登録を見返した。

「え、嘘だろ?この人、斉藤さんの奥さんじゃん!」

口田は一気に血の気が引くのを感じた。


「口田さん、すみません。僕、保険を解約したいです」

斉藤圭太は俯きがちに言った。

口田は、大きく首肯しながら

「わかりました。ちなみに何故解約したくなったのか教えて頂けないでしょうか?」

と斉藤圭太の事情を念のために確認することにした。

まあ、口田からするとおおよそ解約の理由は見当はついていた。

奥さんの死だ。

そう、あの発言消去依存者は斉藤圭太の妻である斉藤紀子だったのだ。

斉藤紀子はヒステリックなまでに自分自身に完璧を求めた。

そして、斉藤圭太を愛してた。

いや、未だに恋をしていたという方が正解かも知れない。

付き合いたての彼氏にすっぴんを見せて、ガッカリされたら嫌だなぁ。

はじめはそんな気持ちで自分の発言を消し、少しでも良く見せようとしていた。

紀子は、圭太から嫌われたくなかった。

でも、時として思わず、言う必要のない発言、一言多い発言をしてしまう。

それに苛立っている圭太の様子を見るといつも後悔した。

「あーなんであんなことを言ってしまったんだろう」

そんな時に、出会ったのが口田だった。

「斉藤さん、そんな人にピッタリの保険があるんです!」

斉藤紀子は、口田を友人の紹介で知った。

その友人も実は口田のお客であり、いつも契約が完了したら口田は、友人を紹介してくれるよう頼むのだ。

そうやって口田は、芋づる式に多くの人と出会い、契約をものにしてきた。

口田は、斉藤紀子とのとある日の会話を思い出した。


「斉藤さん、ご自身の発言ばかり消すことを考えてますが、逆に旦那さんから言われて消したいぐらい嫌な発言ってありましたか?」

「いえ、何もないですよ。私は夫のどんな発言も大切なので」

斉藤紀子はにこりと笑った。

「じゃあ、そろそろやめましょうよ。旦那さんも同じように思ってると思いますよ」

「口田さん、変わってますね。保険を利用してもらえれば得するのは貴方でしょ?私は変に完璧主義なんです。しかも、悪いところってわかってるのにやめられないです。人って簡単には変わらないものですね」

「大丈夫ですって!斉藤さん、勇気を持ちましょうよ!」

「そうですね。勇気か…私に一番ないものですね。どうにもできない現実を受け入れる勇気がないんでしょうね。なのでもう一度保険使わせてください」

「そんな…」

口田は、こんなにも気乗りしない保険利用はないと悔しく思った。


「ごめんね、圭ちゃん、勇気がなくて…そのせいで貴方と一緒にいれなくなっちゃった」


斉藤圭太が最後に妻から言われた言葉だった。

全く持って妻の勝手だ。ワガママだ。

口田はそう思った。

口田は、斉藤圭太から解約の書類と一緒に保険の利用の案内の書類も渡した。

「斉藤さん、貴方のプロポーズの言葉をなかったことにするのも一つの手です。大幅な寿命は持っていかれますが、奥さんを取り戻すことが出来るかもしれませんよ」

そもそも結婚しなければ、こんなことにならなかったかもしれない。

口田はそう思った。

そして、口田は斉藤紀子を現実に連れ戻し、一言、言ってやりたかった。

「こんなにも愛されているのに、自分の為だけに命を無駄遣いするな!」と言ってやりたかった。

しかし、斉藤圭太は首を横に振り、「口田さん、僕は現実から逃げないですよ。だから、悲しいですが妻の死も、彼女のワガママも受け入れるつもりです。それが夫ってもんでしょ。しかも、子供までなかったことになるかと思うと辛すぎます」と言い、涙を浮かべた。

「貴方はお強い。斉藤さん、貴方のような人は間違っても、乗り越える人だ。この保険は貴方には必要ないですね」

口田はそう言うと、深く頭を下げ、その場を立ち去った。

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