【反逆|Rebellion】「俺にできる手段はただ一つ~母さんの夢を現実にすることだけ~」
コソン
第0章 - プロローグ
第0章 - プロローグ
作者:コソン 翻訳:山城
*** - 新しい場面・キャラクターへの切り替わり
○○○ - 状況やキャラはそのままにわずかな場面転換
~ - 語尾が伸びている
> < - 異なる言語が話されている/読まれている
+ - 会話の同時進行
*__* - キャラクターの動作を表す 例)*ゴホン…* = キャラクターが咳をしている
名前のない引用 - 無名/無名のキャラクターが話している(背景キャラクターも含む)
作者のコメント:
こんにちは! これは、私にとって初めてとなるダークファンタジー小説です。 私は日本人ではありませんから、私の着想は最近の日本人読者間のトレンドには沿っていないかもしれません。 でも、皆さんにとって目を離せない、面白い物語となるようにベストを尽くします。楽しんで読んでくださいね! - Koson
血。 憎悪。 戦争。
人類において、魔王オーグランとその地獄の軍勢との戦いが始まった。現世からは強力な戦士たちと各国の兵士たちとが、この強大なる敵を倒すために参戦した。
カオス領域内においてオーグラン城までの道のりには多大なる勇気と信心とを要し、そのために敵同士であってもほんの一時的にではあるが、手を結び合う戦友にすらなり得た。
空には、倒れた人間や魔物の死体からあがった赤い血の霧が立ち込める。 戦火の煙が空気を汚染していく。剣のぶつかり合う音と魔法の爆発する音とが響き渡り、大気を震わせた。
故郷の民のために戦う戦士たちの口からは、咆哮と戦いの叫びが細切れに聞こえてくる。
「攻めろ!」
「押し込まれるな!」
「心の臓を狙え!」
数え切れないほどのモンスターや悪魔が、カオス領域のあらゆる場所から戦いに参加するために押し寄せてきた。彼らは自らを犠牲にしてまで神を守ろうとしたのだ。
しかし、人間の部隊は一歩も引かず、オーグランの防衛網を突破し続けた。.これが敵地での戦いの第一歩だった。このチャンスをものにするために、彼らはどんな手段でも行使しようとしている。
人類軍を率いるのは、『グレートファイブ』と呼ばれる小集団だ。 近年の人類史上、最強の存在として知られる。 彼らは神に連なる種族の息吹をその血に受けた、”アセンダント”と呼ばれる希少な種族の一員である。 死すべき運命にありながら、神の属性を受け継ぐ者たちだ。
アマデウス・ノクタス王 。レディ・ベラ。 ダミアン・エクトゥス 。ウィリアム・ブランドステイン博士。そして、ハーレン・デスベッド。 彼らは真なる自然の脅威であり、自分たちが無敵であることを数えきれないほどの状況下で互いに証明しあってきた。
「はああああああ!」ハーレン・デスベッドが叫びをあげる。
戦場の真っただ中、ハーレンとウィリアムは魔物の大群に包囲されながら戦っている。
その闘志と、そして眼前に敵が複数いてもなお切り倒すに至る頑丈さ。それらを前にして、ハーレンのもはや野蛮ともいえるほどの耐久力と、呪文で強化された二刀流の斧に肩を並べられる者はいない。
「”ウィルムの絞殺”!!」
ウィリアムの派手な魔法との組み合わせ。 彼が悠々とかけたバフや召喚魔法は、自身に近づかんとする幾人もの悪魔を吹き飛ばし続けた。
「ハッハッハ! これは最後まで味わい尽くせる戦いだな!」ハーレンが嬉しそうに叫ぶ。
「死と隣り合わせの状況で興奮するのはやめてくれないか?」
「おっと!! でも俺の名前の通りなんだぜ、ウィリアム」 ハーレンは嬉しそうに答える。
「こんなことの為になら、ゆうに100回は生きてやるね!」
ハーレンは悪魔を屠るが、別の悪魔にその翼でもって素早く不意を突かれてしまう。 背中がむき出しになり、自身の身を守る時すらもはやない。
「ん!?」
レディーベラのショットガンが翼の悪魔の胴を貫き、大きく開いた傷口を残してハーレンの足と足の間に倒れ込む。
「ハハ! よくやった レディーベラ」
「はぁ、馬鹿ね」と彼女はボソリとこぼす。
彼女は、魔物の体を吹き飛ばしながら、部族の力を使って道を作り、早足に進んでいく。 ハーレンとウィリアムは一緒に魔物たちと戦いながら、彼女の後をついていく。
「見ろよ、空から降ってくるぜ。何兆匹もいるんだろうな」
「数に惑わされないで。オーグランが死ねば、この汚らわしい生き物は自分達の穴に引きこもるわよ」
「女からすれば、そんな単純な話だと思うのも無理はないな」ウィリアムはあざけるように笑う。
レディーベラはウィリアムの頭にショットガンを向け、彼の目が何が起こったのか理解する前に引き金を引いてしまった。
「ぐっ!」
彼女の弾丸は幸運にも彼の耳たぶをかすめ、ウィリアムの背後から襲いかからんとしていた悪魔を消滅させた。
「次は絶対に外さないわよ」
「チッ」ウィリアムは呻くように声を出す。
「お前の遊びに付き合ってられ……」
ウィリアムの言葉は、突如として戦場が地鳴りのような音を立てて揺れ始めた途端、途絶える。 突然の地響きに戸惑いながらも、両軍の戦いは続いていた
「あれは……?」
遥か彼方、地面が割れて巨大な穴ができ、何人かの兵士が落下していく。 穴の内部、深くから伸びた巨大な腕が外縁に食い込み、ゆっくりと上に向かって自身を引っ張り上げていた。
出てきたのは、原始的な生物だった。 皮膚は土でできており、目と手は奇妙な黄色いエネルギーで満たされている。
「グゥルルル!」
「古代の奴らが、神々によって蘇ったぞ!」 ハーレンが叫ぶ。
ウィリアムとハーレンは、その生物がこの戦争に関わるすべての者達に存在を知らしめていくのをただただ立ち尽くし、目の当たりにしていた。 戦士や魔物の中にはこの生物の力を恐れて、その激しい怒りを避けんとして逃げ出す者もいた。
レディーベラは何のためらいもなく高い岩山に登り、視力を強化してショットガンからスナイパーライフルに持ち替えた。 その古代の生物の頭部に無数の弾丸を撃ち込み、目玉の一つを弾き飛ばそうとする。
「はああああああ!」
ハーレンは古代のものに向かって疾走し、目の前の悪魔の大群を切り裂くように進んでいく。ウィリアムはハーレンに2つの魔法をかける。ひとつは彼のスピードを上げ、いとも簡単に大群の中を進んでいかせるものだった。 そしてもうひとつの魔法が、彼がダメージを受けないようにシールドを張るものだ。
ハーレンはその勢いのまま空高くジャンプし、その生物の頬にちょうど着地すると、2本の斧でその地肌を削り始める。
「スペクタル・フューリーの呼び声!」 とウィリアムは叫んだ。
ウィリアムは別の呪文を唱えて三体のアンデッドスピリットを召喚し、古代生物の行動を防ぐように命じた。 3体の精霊はそれぞれ古代生物の半分の大きさであったが、組み合わさってしまえば、それら力は古代生物に匹敵するものであった。
古代生物は獰猛に体を振り回し、ウィリアムの精霊らを遠ざけようとする。目から発射されたレーザーは下方の戦場に降り注ぎ、接触したものを殲滅していった。
「グゥオオオオオオオオオオ」
レーザーの破壊の跡に残ったのは人間や魔物の溶けた死体が一緒に詰まった姿で、その死体からは骨や内臓が飛び出していた。 血の海が戦場を彩っている。
「グゥオオオオオオオオオオ」
ハーレンの攻撃はその皮膚を突き破り、体内から青白い血を噴出させ、ようやく古代生物に彼の存在を気づかせることとなった。
「もっと泣け、獣よ! お前の血をもっと味わいたいぞ!」ハーレンが叫ぶ。
古代生物の反応は激怒の情であり、まるで不安定な子供のように激しく体を投げ出す。
その動きにバランスを崩したハーレンは、間一髪で両手の斧を古代生物の皮膚に突き刺し、命拾いをする。
「おっと!」
怒りに力を膨れ上がらせた古代生物はウィリアムの精霊を強引に振り払い、強力なパンチの一振りで一気に叩き潰す。 そして口からエネルギー球を作り出し、ウィリアムとレディーベラの方向へ向けて放つ。
「グゥオオオオオオ」
「ふん、気を散らそうというのだろうが、もう十分だ。“アタの憤怒”よ! 降り注ぎ、この偽りの偶像にお前の力を示すのだ!」ウィリアムが叫びをあげる。
ウィリアムの召喚した呪いの炎は、拳のような形をしていた。 そしてその拳は地獄のような空から降ってきて古代生物にぶつかり、一撃を与えた後に爆発をする。
爆発により大きな突風が発生し、風に巻き込まれた体が蝿のように空中に舞い上がる。戦場の半分が吹き飛ばされた。 遠くから見ていた人たちは、砂粒が顔にかかって目がくらむので、顔をそむけた。
○○○
風が治まったところで、ウィリアムとレディーベラは爆発の中にあった古代生物の運命を確認するため、後ろを振り返った。 どうやらウィリアムの呪文によって大きなダメージを受け、気絶してしまったようだ。
最初はほっとした二人だったが、呪文が引き起こした被害を見渡す。 レディーベラはハーレンの痕跡をどこにも見つけることができなかった。そして彼もまた爆風に巻き込まれていたことに気づいた。彼女はウィリアムの襟首を乱暴に掴み、二人は険悪な形相で睨み合う。 二人の間に緊張が走り始めた。
「あなたが彼を殺したのよ!」と彼女は叫んだ。
「おい、静かにしろ、女! 俺たちは、俺たちにとって大切なもの全てのために戦争をしているんだ」
ウィリアムが噛みつくように言う。
「この世界の大陸を通り抜けるために何年もかけて計画をしてきたんだろう。だというのに、俺が失敗者として娘のもとに帰るとでも思っているのか!?」
「オーグランは止められないわ! 私たちが仲間を殺してなんかいたらね!」
「ではオーグランが我々を一瞬で消し去ることを願えばいい。この戦争に勝つために、もっと犠牲を払う必要がある前に」
二人の視線が激しく交差する間、古代生物はその奇妙な魔法によって怪我から回復し、蓄積されたエネルギーの球で再び二人に襲いかからんとしていた。
「グゥオオオオオオオオ!」
「くそ!」ベラが叫ぶ。
○○○
古代生物が一撃を振りかぶるまさにその時。 また別の爆発がこの古代生物の企みを妨害する。いや、それどころかこの爆発によって、古代生物は爆心圏内のあらゆるものとともに戦場から姿を消し去られたのだ。 しかし、大きさから言っても、そしてウィリアムとレディ・ベラ両名の周りを優しく囲い込むような輪をもってしても、違いがあるのは明らかだった。
二人は振り返って、誰が、あるいは何がこの生物にとどめを刺したのかを確認するために辺りを見回した。
しかし、驚いたことに。
二人とも、まさかアマデウス・ノクタス王と、その傍らに彼の三人の子供たちがいるとは思わなかったのだ。 デレック、リア、トークン。 その傍らには、棺桶らしきものを担いだ騎士の一団がいた。
「二人ともどうしたんだ?
まさかこの状況に呆けてしまったのではあるまいな」アマデウス・ノクタス王が冗談を言う。
さらに驚いたのは、宿敵である”ヘルメーカー”ダミアン・エクトゥスのものであった炎の剣を見たときだった。 それをノクタスの娘、リアがもっているのだ。
「なぜ彼女はダミアンの剣を持っているのでしょうか?」
「ああ、わかるか。残念ながら我々の良き友は戦場で死んだが、彼の遺志は残されたのだ。オーグランを斬る剣を使うのは我が娘に頼む、と伝えられたよ」
「何ですって!?」
「まあ、やつは自分の名誉のためにも下っ端に囲まれて死んだと覚えておかれることを望まなかったし……もっとも嫌がっていたのは、私にそれを振るわせることだ」
「だから……」王は咳払いをする。
「 このような強力な刃を振るうのは、完璧な子供に他ならない。そうだろう、リア?」再び、王は咳払いをした。
「はい、お父様」
アマデウス王は胸を打ち、激しく咳き込みながら、胸のつまりを取ろうとする。
ウィリアムもベラも、この馬鹿げた知らせにショックを受けていた。 自分たちが彼ら五人の中で一番強いと信じていた男が、オルグランと対峙する前にあっけなく死んでしまうなんて、納得がいかない。 二人の表情は凍りついていた。 ただ、その場に立ち尽くして、考え込んでいた。
「いや、それはありえない……. 彼は城の反対側から攻撃しているはずだ」ウィリアムが言う。
「そして、ここのマナのレベルは、我々の通信を遮断しているのよ。だからオーグランが討たれるまで、彼の死など誰も知り得ないわ」
「我々の父が嘘をつくとでもいうのか、不作法者どもめ!」とデレク・ノクタスが叫んだ。
ノクタスはデレクの顔を平手打ちし、だしぬけの無礼に対する躾とした。 恐る恐る父に顔を向けると、彼は顔を押さえている。
「こやつが無礼をした。申し訳ない。
こやつも、弟のダリウスも、戦争の最中には子供のように振舞うのが一番だと考えている。
「言っただろ。そういうわけじゃ……」
デレクはアマデウス王から再び平手打ちをされて躾けられるが、今度は自分の過ちを受け入れ、黙って父に従った。
「それでは……包囲網を続行しようじゃないか。王様を待たせてはいけないぞ」とアマデウス王が冗談を言った。
ノクタス王が一人笑いながら先頭を切ってオーグランの城に向かい、その後ろを子供たちや騎士たちが続き、ウィリアムとレディーベラの前を通っていく。
ダミアンが下っ端の兵士のように死んでしまう可能性はゼロではないと思いながら、二人は立ち尽くす。 彼らはこの戦争の裏で本当に何が起こっていたかを考えるべく、お互いをちらりと見た。
二人は平静を装い、棺を担いで戦場を横切るノクタス王の騎士の後に続いた。
「ところで、ハーレンはどこだ?」 とアマデウス王は聞いた。
「彼も… …戦いで倒れたわ」
「そうか……残念だ。
それならば、彼の遺族に戦士としての死を知らせなければならない」
グレート・ファイブのうちの三人は、暴君オーグランを城で倒して平和への第一歩をもたらすことを願い、前に進んでいく。人類は、自分たちを脅かすものすべてを打ち負かすまで、止まることはないのだから。
終わり
作者:コソン
ツイッター: https://twitter.com/Koson_san
パトロン: https://www.patreon.com/Kosonsan
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