なぜ俺がお前の願いを聞かなきゃならない
自宅に帰って居間で今日の出来事に悩む。
冷蔵庫から缶チューハイとチーズを取り出しての晩酌で気持ちを落ち着かせてみる。
酒はそんなに好きでは無い。
なんせ、どんなに酔っても記憶に残るタイプだからな。
あまり良い思い出がなかったりする。
俺は一軒家を丸々借りているが、バイクの盗難を防ぐために車庫付きを勤め先のオーナーのツテで借りた。
ちなみに母親も一緒に住んでいる。
朝方に帰宅したようでソファーで爆睡してるが。
「母親を
身内なら許される、と言う酔いに任せた行動。
名前:伊地知真理亜
職業:編集部部長
種族:人
幸運: 100
スキル 一発校了
加護 和弥の加護
称号 ハヤブサマスター 光聖の理解者
肩書きあってるな…幸運100って凄いな。
しかしスキルがよくわからん。
加護は親父の名前だな。
…親父とは随分と前からほとんど会った記憶が無い。
母親は親父の話をしたがら無いから、敢えて俺も聞く事をしなかったんだが。
まあいいか。
称号は、ハヤブサには確かに乗ってるけどマスターとは…。
しかし光聖の理解者が一番恥ずかしいな。
「うーん、わからん」
ピロン🎵
メールの着信音が聞こえた。
『私のお願いを聞いてください』
伊東からのメールだ。
実は今日だけですでに数十件。
かなりしつこい。
だから最初に即ブロック、完全ブロックしたのだが未だにメールが届く。
間違いなく部長が伊東の相談を受けているのだろう。仏心かな?
要らんアドバイスをしてるな。
違うアカウントを作っては検索を繰り返し、俺にメールが届いてしまう…面倒くさい。
ちらりとメール内容を見てしまった。
『Welcome to the world of AIDS』
「ようこそ、エイズの世界へ…アホか」
当時は不治の病と言われたウィルス。
その発見当初からは想像も出来なかったであろう。
特効薬が出来て抗ウィルス薬で病状をコントロール出来るようになった。
しかも二次感染をも、だ。
だから未知の病気では無くなりつつある…が、出来るなら関わりたくはないよね。
まあ結局、
種類によってはある意味不治の病ではあるかな。
性器ヘルペス。
まあ…それを知ったのは、実は街中で伊東とニアミスした事があるからだ。
奴は俺に気づかなかったが。
空港から帰って…それから
当然だが、学者もネットもテレビの識者も駄菓子屋のおばちゃんも知らないだろうわけわからん能力である
ラノベやアニメの世界ならあり得るが現実世界ではあり得ない。
だから実験で実情を知るしかない。
…だからあちこちで
宝くじ売り場で
しかしスクラッチを目の前に出してもらい、選ぼうとするタイミングで
「お姉さん、これ一枚ね」
周囲に人が居ない事を確認してその場で削り、そのままお姉さんに渡す。
「これは当たり?」
「えーと、あ!凄いわね!5万円当たりよ!」
周りに人が居ないのを確認しといて良かった。
お姉さん、声が大きいよ。
まあでも…金額が大きいと銀行に行かなきゃならないが、5万円なら手渡し可能だった。
まあ、分かってて選んだんだけど…もう一枚は最高額だったんだよね。
その幸運は本来の運の良い人に渡るべきだ。
『
急に機械的な女性の声が脳内に響いた。
「!?」
急に空を見上げたら近くにいた人も釣られて俺と同じように見上げた。
しばらく空を見上げていた俺をその人が訝しがるように見ていたのを不意に感じた。
俺は誤魔化すように解けた靴紐を結ぶ…ようにかがんだ。
その時だった。
「ありがとうございます。先輩、また相談あったら…はい、はい」
かがんだ俺の頭上をすぎる声…うん、伊東の声だな。
立ち上がり振り向くと、スマホの画面を見て電話しながら歩く伊東が反対側に向かって歩いていた。
名前:伊東都香砂
職業:帝都短大学生
種族:人
幸運: 10
スキル 無し
加護 無し
称号 オーラルマスター・性に堕ちし者・感染者(性器ヘルペス)・軽度のセックス依存性(new)
あれ?こないだ見たのとちょっと違う…。
加護が消え
少しだけ細かい情報が出てるな。
てか依存性(new)って、称号なのかよ。
彼女は振り向く事なく去って行く…あっ、ちょっとつまづいた。
「歩きスマホは危険」
独りごちる。
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