第38話 青の国のウォッカ
「ばあちゃん、来るのが遅くなっちゃった。」
そうウォッカは言うとベルは
アンタもアンタで大変だっただろうに。
ずっとジヴァニアを探してたんだろ?
すまなかったねぇ、私が巻き込んじゃって。
「いいや、逆だよ。
ばあちゃんがジヴァニアと
一緒でなければどうなってたか」
とウォッカ。
まぁそれでもあんたと同じに
なっちまったがね。運命なのかねぇ。
「エアストの封印場所になるよりは
いいさ。まぁ予備だったけど。
でもルナティアは救いたかったな」
とウォッカはうつむく。
で、魔族になった気分はどうなんだい?
と笑いながらベルは聞く。
ウォッカも笑いながら
「歳取らないから綺麗なままよ?
他は化け物みたいになってるけど。
婆ちゃんもなればいいのに」
と茶化しながら言うと赤い目をする。
ベルは涙を流し目を閉じる。
「すまないねぇ、すまないねぇ」と
何度も繰り返す。
挙句にジヴァニアにお前と同じに
なる様に唆しちまった。
「それはジヴァニアが決めたことだろう。
婆ちゃんは関係ないよ」とウォッカ。
「本当は・・・。」とウォッカは続ける。
バーボンもアスティも「俺がなる」と
言ったんだ。でもエンドの魔力を
あの二人は跳ね返し受け付けなかった。
体質なのかもしれない、異世界の。
「うんうん。聞いていたよ」とベル。
他の者では魔力に侵され自我を保てない
可能性もあったからね。
私とサンテミリオンがなったのは
自然だよ。
「私は先に娘をなくした。親より先に
娘が死んじまった。人の為、世界の為
というがその家族はこんなにも
苦しい思いをする。」
「あんた達だけはと思いながら、同じ事を
してしまった」とベル。
「もういいって。本当に感謝してるんだよ?」
と笑うウォッカ。
「替わってやれるなら替わってやりたい。
でも私にはもう魔力なんて全然だ」
そうベルは言うと。
あぁ、そうだ。お前にも作っておいた。
私渾身の魔法付与した装備だ。
他の者よりも特別製だ。
アンタのは内緒で作ったから
今のうちにボックスに入れときな。
そう笑いながらベッドの下から
ウォッカの装備を取り出す。
ウォッカはボックスにいれず
突然、今着ている物を脱ぎ始め
その装備を目の前で着る。
「すごいね、寸法がぴったりだ。」
そう言うと体を1回転させ
「どう?似合う?」と笑う。
「まさに孫にも衣装だね」と
ベルも笑う。
「なにそれ」とウォッカは笑うと
「向こうの世界にあった言葉さ。
どんな孫も綺麗な衣装を着させると
可愛く見えるって事みたいよ?」と
ベルが説明すると
少し怒ったフリをしながらウォッカは
「ひっどい。元がいいのよ?だから
装備が良く見えるのよ」と笑う。
ジヴァニア!入っておいで!とウォッカは
声を上げると美香が部屋に入ってくる。
「ジヴァニアも装備を着替えなさい」と
ウォッカは美香に向かって言う。
美香もその場で装備を脱ぎ着替える。
「元の装備もおばあちゃんの作った
奴だから交互に着ようかな?」
「おばあちゃん!ありがとう!
大切に着るね」と言う。
装備を大切にしたらダメじゃないか。
体を大切にしなきゃ。と笑うベル。
お前たちの装備は他の者とは違う。
ミネルヴァが刀にそうした様に
私も渾身の力で作った。
あの子のようにすべてを捧げる事は
出来なかったけどね。
私は弱い人間だ。
「そんなことはない」と美香とウォッカ。
「よし!ばあちゃん、また来るからね。
なにか食べたいものはない?」と
ウォッカは言うと
「あんたの料理以外だったら
なんでもいいよ」と笑いながら言うと
緑の国、いや今は自治区だったね。
あそこのプフィルジーが食べたいねぇ。
ウォッカもジヴァニアも顔をべとべとに
させながら3人で食べたことあるねぇ。
もう一度3人で食べたいよ。
「わかった。私が取ってくるよ。
みんなで一緒に食べよう」と
ウォッカは言うと額にキスをする。
「私が行ってくる!」と美香は言う。
母様はおばあちゃんと一緒に居て?
「ははは」ウォッカをここに置くのかい。
そうベルは言うと
「私はウォッカとルナティアを
纏めて面倒見るのかい。
死んじゃうじゃないか。」と笑う。
「殺しても死なないくせに」とウォッカは言う。
3人は笑う。
少し寝ると言ってベルは目を閉じる。
寝息が聞こえるまで二人はいた。
そして部屋の外に出ると
「ルナティア。ジヴァニアが居ない間
あたしがベルの面倒見る。文句は言わさない」
「条件があるわ。その剣を私に渡しなさい」
とルナティア。
ウォッカは言われた通り神器を渡す。
「それから城からは一歩も出ないように」
とルナティアが言うと
「わかった」と一言だけ言う。
美香は城の外に出て準備してもらった
早馬を走らせた。
「素直なのね」とそれを見送りながら
ルナティアはウォッカに言う。
「ふん」とウォッカは言うと
城の中に入っていく。
それを後ろから見てルナティアは
呟く。
「なんだかんだ言いながら人間なんだから。」
とルナティア。
そうだ、ついでに兵士たちを鍛えて
貰おうかな。と言いながら
ルナティアも城に入っていく。
ルナティアの部屋の前にウォッカが
立っている。
「黄の国はどうするんだ?大混乱
らしいじゃないか」とウォッカ。
何もしないわ。静観よ。とエアスト。
「神にしては冷たいじゃないか」
とウォッカは言う。
アンタのせいで何もできないのよ。
それとも私の力が必要なら
アンタが協力しなさい。
私を私の元居た場所に連れて行きなさい。
アンタならできるわ。
そうすればルナティアも元通り。
均衡も元通り。
「本当にそう思うか?」とウォッカ。
そして続ける。
これは感覚の問題だが・・・。
エンドは城から抜け出ている気がする。
そうだな、今のエアストと同じような。
エアストは驚きながら
「そ、それは本当なの!?」と。
あくまでも感覚だ。城に居る気も
するし、出ている気もする。
「もしかしたらホムンクルスかな」
とルナティア。
私も持ってるけど私の城にあるわ。
魂の一部を写すの。
「あの時のお前がホムンクルスだったら
楽だったんだがな」とウォッカ。
「そりゃどうも」とエアストは言うと
早くベルの部屋に行きなさい。
目障りよ。とも言う。
ウォッカは手を挙げながらベルの部屋に
入っていった。
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