紫の国 第4章

erst-vodka

第1話 コルンの髪の毛

既に夕食を終え、

皆はゆっくりしている時間。

しかし、その時間に机に向かって

仕事をしている者が居る。


名前はコルン。


その男は両手で頭を抱え

ワシャワシャしている。


「あ」と言う声と共に

両手を頭から離して、見る。


「大丈夫だ、今日は12本だ。」

とホッとする。


この短期間で金貨4100枚を

使う。残り900枚。

速さ重視で街を作った分、

依頼の金額が上がったのである。

更に予定にないフランゴ飼育場。


しかしその分、既に街の形は出来ている。

衣食住にかかわる施設は勿論の事

余暇を楽しむ為の施設もある。


政務を行う建物は一番先に作っており、

他国から移り住む者達は、まずここで

登録することとなる。


通常は元の国からの書類が必要なのだが

ここに移り住もうというほぼ全ての者が

ソレを持ってなかった。


そして全体の7割が亜人であった。

・・・2割は爺と婆である。

大丈夫なのか、この国は。


移住を許可していいのか悪いのか。

わからなかったのでバーボンさんに

尋ねたら、


「お前ならできる。」と言われた。

そりゃそうだ、許可だけなら

誰でもできる。


問題は中身なのだよ!と

言いたかったが・・・、

言えなかったのでジェニ様に尋ねた。


するとこういった返事が返ってきた。


受け入れてくれ。問題ない。

住まいも与える。

しかし身分証のない者には必ず

この紙を渡してくれ。


この世界で使われている文字だ。

言葉が一緒なので向こうの世界にある

表を基に作ってある。


その者の名前に使われている文字に

マル印をつけ、右下に名前を

こちらが書いてくれ。


そして自分の名前が書ける様に

訓練して、と言うか練習して

7日で書ける様にしてもらう。

それが審査だ。


こちらが発行した身分証を渡す際に

受け取りの名前を書いてもらい

初めて住民となる。


そしてお互いで規則を読み合い

それに自分の名前を書いて

こちらに渡す。


規則はこうだ。

・物を盗まない。

・むやみに傷つけない。

・殺さない。

・なにかあったらすぐに相談所

これの決まり事を破るものには

罰がある。


めんどくさいけどこれで問題ないよ。

と笑いながら言ってくれた。


ジェニ様は多分、向こうの世界での

知識で住民を管理しようとしている。


しかし、規則は少なすぎる。

これだけですか?舐められますよ?

と聞いたら。


「あぁ、大丈夫。調査する専門と

 罰をする専門が居るので」

と、笑いながら返ってきた。


それは誰ですか?と聞いたら。


「教えない。俺とバーボンさんと

 その本人しか知らない。」と言われた。


どうせその事に対して細かく

追加する事にもなるので。

基本はこれ。とも付け加えた。



そして今、なんと!ほぼ全ての

移住を希望した者は自分の名前だけは

書ける様になっていた。


まだある。他国と大きく違う事が

もう一つあった。

これが私の髪の毛が抜ける原因と

なっているのだ。


「働かないとお金がもらえない」


当たり前だと思うが、

実はそうでもないのだ。

無償で食事を準備する所が

他国にはある。


しかしここでは病気やケガを除いて

仕事を必ず斡旋する。

病気のフリは出来ない様になっている。

そう言ったのを見破る「専門」が居る。

・・・らしい。


病気の場合は国が負担する。

怪我の場合は怪我をさせた者が払う。


体がまともに動かない爺さんや婆さんは

どうするんです?と聞くと


無論、寝た切りになるまで働いてもらう。

しかし、そうなったら国で面倒を見る。

と、バーボンさん。


爺さんや婆さんの生活の知恵は

使い道があるらしい。


そして問題のコレ。

「この国には物々交換なんてない。」

必ず間にお金をはさむのだ。


物の買取は国が行う事となっている。

が!相場がわからないのだ!

他国の相場を調べているうちに

既に相場が変わるのだ!


そして私が合計400本ほどの

髪の毛が抜けた今。

閃いた。・・・かもしれない。


「もういいや。自分たちで

 売らせればいいや、それでいこう」と。


私はお腹がすいたのだ。眠いのだ。

休みたいのだ。文句あるか!

物々交換さえしなければいいのだ。


売る場所だけ国が決めて、もう全員が

店を持てるようにすればいいや。


次の朝、ジェニ様とバーボンさんに

報告をする。

眉間にしわを寄せているバーボンさん。


保留となった・・・。

そりゃそうだ。


それはそうと、新しい施設を作る。

とジェニ様。嫌な予感がする。

「学校を作ります。」と。


誰でも受け入れていいらしい。

他の国では誰でもとはいかない。

教えるのも商売だからだ。


そして嫌な予感は当たった。

「その学校でおしえるのは、美香ね」

とバーボンさん。


私はジェニ様をチラリと見るが

ジェニ様も「問題ないよ」と笑う。

この世界はどうやら向こうの世界と比べて

相当にダメらしい。


教えることがほぼ魔法や剣のような

職業に関することだけで

生活の為の基本的な事を誰も

教えないからだ。というか

そんなところはない。


貴族が家庭教師を雇って

個別に教えているのが現状。

勿論私もそうだった。


なので向こうの10歳の子が

わかる事がこちらでは国の政務クラス

に匹敵するらしい。


恐るべし異世界。


そういえば、と私は手元にある

モノを見ながら思った。


確かにこのソロバンと言う器具。

最初はとても難しかったが慣れると

それは凄いものではあった。


しかし、美香さんが教師?

大丈夫なのか。・・・この国は。

















































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