第29話 さらなる謎解き
さて、それでは夢野久作『ドグラ・マグラ』の冒頭で、主人公の「私」が柱時計の時鐘の音で眼醒めたのは、何年何月何日の「今日」だったのだろうか? それは、主人公が何巡目の学術実験(=ドグラ・マグラ実験)を受けさせられていたかによって、大きく動く可能性がある。
最短ルートだと、二巡目のドグラ・マグラ実験で夢野久作『ドグラ・マグラ』と作中作「ドグラ・マグラ」はその記述内容が100%一致する。しかし、夢野久作『ドグラ・マグラ』と100%一致している「今日」が動く可能性があるという点を踏まえると、我々読者は、二巡目の作中作「ドグラ・マグラ」以後の作中作を読んでいる可能性もあるということになる。
つまり、もしも最短ルートでなければ、翌月か翌年かは分からないが、何処かもっと未来の時点で両者が一致するという可能性もある訳だ。あるいはそれは第三巡目の「ドグラ・マグラ」かもしれないし、第十三巡目の「ドグラ・マグラ」かもしれない。ことによると第百十三巡目の「ドグラ・マグラ」かもしれない。
主人公の「私」の立場に立てば毎月の「…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。」の眼醒めのたびに記憶喪失を繰り返しているために、いったい自分が何巡目のドグラ・マグラ実験を受けさせられているのか、そして、「今日」がいったい何年の何月何日なのかが
ところが、である。読者が丹念に読み込めば、実は主人公が作中で今、何回目の学術実験を被験中なのか、その日時までも論理的に推理できるように『ドグラ・マグラ』は書かれているのである。
夢野久作は、『ドグラ・マグラ』の作品世界の「今日」がいつなのかを特定できるように、さりげないヒントを伏線として文中に忍ばせていたのだ。
× × ×
× × ×
W:……………………………………………………………………………………。
I:どうです……聴いてしまわれましたか。
W:素晴らしい……。
I:ハイ。作品世界の「今日」がいつなのかについては、ここではお楽しみの宿題に取っておくとして、ですね。
ドグラ・マグラ入門編の初歩的な読み解きについては、お互いに推理のズレがないということが確認できました。それでは次は、『ドグラ・マグラ』の著者・夢野久作について、その人物像から追ってみましょうか、教授‼
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