第203話 私がそんなに冷たいことを言うわけがない。

 あ、あわわわわわ………………。

 私は妊娠検査薬を再度マジマジとみる。

 うん。私もこれは見たことがあるからわかる……。

 これは間違いなく線が二本見える。


「あんたねぇ……。どうしてそうなった?」

「いや、あんたも見てたでしょ? 優一とのエッチな時間を」

「ま、まあ、見てたけれど……。てか、どうして綺麗に排卵日に重なっちゃうかな……」


 できればこういう問題が起こらないようにするために別の日に設定して欲しかったものだ……。

 とはいえ、こればかりはそうもいかなかったのかもしれない……。


「そもそもあたしたち淫夢魔ってのは体質的に妊娠しにくくなっているんだけれどねぇ……」


 そう。麻友の言うとおりだ。

 淫夢魔は元来から、異性の精を搾り取ることにより生活をしている存在だからこそ、もちろんオーラルセックスとか実際にハメるとかあるわけだ。

 だからこそ、本番行為でも精液を体内に吸収させる関係で、コンドームを付けるなんてことは絶対にありえない。

 それは生活に必要な糧を搾り取るためなのだから。

 だからこそ、簡単に妊娠してしまってはいけないので、卵巣から排卵されることもあまりない。というか、異性に屈服させられるほどに攻められなければ——————。

 あ—————。


「優くん、あんたのときもガッツリとやっちゃてたわね」

「ええ、もう別人格がわざわざお出ましするほどに……」

「間違いなく、それね……」

「やっぱりそうよね。あたしも思ったんだよねぇ……。あ、これ、完全に屈服させられちゃうって。すると、卵巣とか子宮が疼いちゃって♡」

「いや、ハートじゃないんだけど?」

「まあ、出来ちゃったものは仕方ないじゃない?」

「そ、そりゃ、下ろせとかひどいことは言わないけれどさ……。あんたはそれでもいいの?」

「え? あー、あたしが二番目ってこと?」

「ま、まあ、正妻の座は譲る気はないんだけれどね……」

「いいよ。あたしはどちらかというと、こういう風になるなんて思ってなかった。そもそも千尋が優一に出会った瞬間から、あー、あたし、負けちゃったなぁ……って思っちゃったもん」

「何それ……」

「だってそうじゃない。そりゃ、あたしは優一と幼馴染という関係ではあったけれど、だからと言って、優一があたしのことを恋人という関係で見てくれるわけでもない。むしろ、幼馴染の元気な子、くらいにしか思ってなかったもの」

「ま、まあ、そうかもしれないわね」


 私は麻友の身なりを見てみると、今日もボーイッシュな感じの短パンにダブダブなシャツを着て、腰の部分で結わえている。

 可愛いけれど、どうして優一さんは麻友には、彼女にしようと思わなかったのかしら……。


「あ、どこ見てんのよ? あんたよりもあたしの方が少し肉付きがいいのは昔からだからね?」

「そ、そんなこと言ってないじゃない!?」

「何だか、目で言われた気がしたから……」

「それは間違いなく被害妄想ね……」

「ま、とにかく、あたしはこの子を産むね。今日はね、その許可を取りに来たの」

「私がダメって言うと思っていたの?」

「うーん。それは大丈夫って信じていたかな。お互い、優一のことが好きなもの同士だし」

「そうよ。ここで否定しちゃったら、優くんに可哀想だわ。きっと優くんは麻友に対して、罪悪感でいっぱいになっちゃうと思うもの」

「そうだね。優一ならきっと思い悩んじゃうね」

「でも、私たちが望む優くんとの関係ってそうじゃないよね」

「そう。お互いに安心して好きの共存ができるのがいいんだから」

「あー、でもわがまま言うと、優くんを独り占めしたかったなぁ~」

「うわ。本当に言っちゃったよ……。そんなこと言わないで欲しいんだけれど」

「あはは、冗談だから……。妊娠しにくい淫夢魔すら妊娠させちゃう優くんの精子……。これって本当に凄いわね……」

「本当よね。あたしもビックリしちゃったよ。生理来ないなぁ……ん? もしかしてっと思って検査したらこれだもの。まあ、この後で、あのぶっといのをお尻に挿しちゃう乙女がいるんだけれどねぇ」

「ああっ! 言わないで……。考えるだけで恐怖で身が震えちゃうんだけれど……。麻友はしたことあるの?」

「何であたしがそんな変態なことするのよ……。あるわけないでしょ!」

「うう……。経験者はいないかぁ……。ねえ? お尻、壊れちゃうのかな?」

「いや、普通にプレイとして成立しているみたいだし、それはないんじゃないの?」

「あ、そうなんだ……」

「てか、逆に気持ちよすぎて、あんたの精神が壊れちゃうってことは?」

「ええっ!? 私、そんなに変態じゃないよ?」


 私は引くほど驚く。

 そりゃそうでしょう。私はそういう変態プレイは今まで一切、優一さんとしてきたことはないのだから。


「まあ、あんたなら、すっごいアヘ顔が録画できそうよね」

「し、失礼ね! 本当に私は大丈夫なんだから!」

「はいはい。分かった分かった……。明らかなフラグ立て感謝するわね」

「もう! 本当なんだから……」

「じゃあ、あたしも認識阻害の魔法を使って生活する日々かぁ……。あれ、地味に魔力使っちゃうから嫌なんだけどなぁ……」

「でも、見えてたらそれはそれで大問題になるでしょうに」

「まあ、そうだよねぇ……。あとは部活をどうしよっかなぁ……。まあ、大きい大会は出尽くしたから、もう辞めてもいいんだけど」

「軽いわね」

「そんなものよ。だって、優一の赤ちゃんの方が大切だもの」

「それは私だってわかるわ。こんなに可愛い子、授かれたことに本当に感謝してるもの」

「ま、先輩! これから色々と教えてくださいね!」

「あはは……。まあ、酸っぱいものは好むようになるから、常備しておくことをお勧めするわ」


 私たちは幸せいっぱいの笑顔で語り合ったのであった。

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