淫夢魔(サキュバス)な幼馴染と吸血鬼な彼女
東雲 葵
1.超絶美少女は何かと訳アリだった。
第1話 問題は少女に何を吸われるか。
■サキュバス(淫夢魔)
サキュバスまたはサッキュバス(英: Succubus)は、性行為を通じて男性を誘惑するために、女性の形で夢の中に現れる、中世の伝説にまで遡る民間伝承における超自然的存在である。日本語訳は、
宗教的な伝承においては、サキュバスとの繰り返しの性行為は健康や精神状態の悪化、あるいは死をももたらすと考えられている。現代の表現ではしばしば非常に魅力的な誘惑者または魅惑的女性として描写される。一方、過去にはサキュバスは一般的に恐ろしいもの、悪魔的なものとして描かれていた。
■吸血鬼
吸血鬼は、民話や伝説などに登場する存在で、生命の根源とも言われる血を吸い、栄養源とする、蘇った死人または不死の存在である。その存在や力には実態が無いとされる。日光を嫌う(人工光には強い)ため、昼間は墓地や洞窟などに身を隠す。
狼男、フランケンシュタインの怪物と並び、世界中で知られている怪物のひとつである。また、用語の転用として、不当に人々から利益を搾り取る人間などを指すこともある。
みんなはこのような存在を目にしたことがあるだろうか?
ボクは今までない。いや、もちろん、ゲームとかアニメの世界の中では見たことがあった。ボクもアニメが好きだし、高校生という身ではあるものの、そっち系のゲーム会社に勤める姉からテストプレイを頼まれたり、新作だと言っていただけたりして、夜な夜な性欲のお供にそういったゲームにはお世話になったことがある。そういうゲームやアニメに出てくるサキュバスや吸血鬼はどれも可愛らしくエッチで誰しもが、犠牲にあってもいいかもしれない! なんて思わされてしまうような存在だ。
もちろん、それは本来の姿ではなく、もしかすると本来の姿は、以前見たことのあるホラー映画のような様相が正しいのかもしれない。
だが、今、目の前に……、ボクが夢を見ているのでなければ、間違いなく、ホラーではなくエッチな方に認識してしまわざるを得ないような状況と言っても過言ではないだろう。
目の前には美少女二人が、ボクを見下ろすように立っていた。
片方は、肌の露出面積が大きく、大きな胸と恥部だけが布あてのようなもので隠された大半がひものようなデザインの黒い水着を着た茶髪の美少女。何やら頭の上に、角のようなものが見え、それにお尻のほうから先がハートの形をしたしっぽのようなものがふにょふにょと泳いでいる。
もう片方は、ゴスロリもびっくりのような黒のフリルがあらゆるところにデザインされたロング丈のドレス(しかし、胸のところは大きく割れていて、豊満な胸はこれでもかと強調されている!)を着た黒髪美少女。こちらも頭から角が生えているようだし、なにやら、八重歯が普通より鋭くなっているような気がしないでもない。
そんなことを思っていると、彼女たちはボクのほうに一歩ずつ歩み寄る。
「「ねえ、私たちのどっちがいい?」」
「ひぃっ!?」
ボクは思わず小さく悲鳴を上げてしまう。
ボクは後ずさり、ベッドに押し倒されたように仰向けに倒れてしまう。
部屋から逃げ出せるものなら、逃げ出したかった。しかし、ボクの部屋のドアは彼女たちの向こう側にある。
逃げるためには彼女たちを突き飛ばしていかなくてはならない。でも、さすがに自分の良心がそれを許してくれそうにない。
だって、彼女たちはボクにとっては、知っている女の子なのだから。
「それにしても、まさか、あなたがここに来るとは思ってもいませんでしたわ」
「あら? それはあたしも一緒。優一がまさか、この女にあっさりとほだされてしまうなんて……」
「何よ! 私は普通にお付き合いをすることにしただけよ。もちろん、私のメリットからね」
「ふんっ! 千尋は優一のことをそうやってモノとしてしか見ていないの?」
「あらあら、それは嫉妬しているの、麻友?」
「なっ――――!?」
「あら、図星かしら? 私は優一さんの優しさをずっと見てきたの。確かに麻友のほうが、友達としての付き合いは長かったのかもしれないけれど、声すらかけなきゃ何も始まるわけないじゃない。それこそ、食パンでも咥えて、遅刻間際に叫びながら走ってみたりしたの?」
「はぁっ!? そんなの何十回もしたわよ! 古典的だとは感じていたけれどね」
「え………。本当にやったの? それ、虚しくなかった?」
「いや、ここで真面目に聞き返すのやめてくれない? 心が傷つきそうだから……。と、とにかく、優一は渡せないわ!」
「それを言うなら、こちらも同じよ。優一さんは私とお付き合いをすることになったの。たとえ、あなたの人生に関わってくるとはいえ、これは私とそのご主人様である優一さんとの愛の物語にモブはいりませんの」
「あーっ! 今、あたしのことをモブって言ったわね!」
「そうよ……。だって、これから、私は優一さんと愛を育んでいって、最終的には愛の結晶を……そうね、できれば男の子と女の子の一人ずつ欲しいかしら……」
彼女たちの小競り合いを見ていて、ボクはふと違和感を覚えた。
ちょ、ちょっと、待ってくれ。一体、この子は何を言っているんだ!?
もしかして、もう結婚すること前提で、子どもが欲しいと言っているということだろうか!?
いや、ボクはまだ高校生なんだぞ!!!
そ、それに清楚可憐な千尋さんは、一体どこにいってしまったんだ!?
「とにかく、私としては人生設計計画に則って、優一さんとまずは……け、眷属としての契約を………」
「だ、駄目よ! 優一とはあたしと奴隷契約を結ぶんだから!」
いや、どっちもなかなか危なそうな言葉が目白押しだな。
眷属と奴隷……。
いや、どっちも従わされる側じゃないか!
「ちょ、ちょっと……これは一体?」
ボクは訳が分からず、言葉に出す。
すると、彼女たちは妖艶な微笑みを浮かべて、ボクにキスしそうな勢いで迫ってきた。
「「簡単なことよ。どちらに吸われるか、ってこと」」
「す、吸われる!?」
どうやらボクの平穏無事な高校生ライフを送れるようなことはなかったようです。
二人の艶めかしい姿態が、健全な男性であるボクの性欲だけを掻き立てたのでした。
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