第78話 禁書庫
エリザ姫は俺を案内しながら入り組んだ道を進んだ。
確かにここまでややこしい道順だと、ルートを教えてもらっても自分1人では辿り着けなかったかもしれない。
さらに、エリザ姫は宣言通り城の兵士達を全て回避し進んだ。
隠し通路を抜けると、城内のどこかしらに出るのだが、姫は場内に出たかと思うとすぐに、なんの変哲も無いと思われる城の壁をコツコツコツコツと執拗にノックする。
すると今度は壁が動き出しまた隠し通路が現れた。
なんでこんな場所知ってるんだろ?この人城中の壁叩いて回ったのかな?と思うほどだ。
そんな事を繰り返し、俺たちはついに城の禁書庫だという黒い扉の前についに辿り着いた。
「ここですわ。でも入るのはちょっと待っていただけますか?」
「何かあるんですか?」
「大したことでは無いのですが、王族以外がその扉に触れると電流が流れて常人なら死にます」
「えっ?」
「ああ、でもジェイド様は常人じゃ無いので大丈夫ですわね」
そう言ってエリザ姫は「さぁ開けて開けて」と言わんばかりににっこり笑う。
いや、姫本当に呪いにかかってる?呪いはかかったフリで、実は俺殺されるんじゃないか?
「死ななくても電撃が流れるのは嫌なので、悪いのですがエリザ様、開けてもらえませんか?」
「エリザ様ではありません。エリザ、もしくは雌豚とお呼びください」
場内に忍び込んで姫の事を雌豚と呼びつける馬鹿などこの世にいるものか。
「エリザ、開けて下さい」
「はい♡喜んで」
エリザ様がドアを押さえていてくれるので続けて禁書庫に入る。
しかしその瞬間バチリと軽い衝撃を感じた。
まずい、扉だけじゃなくて部屋にも電流が流れるタイプの結界が張ってたんだと瞬時に理解する。
ダメージを受け弾き飛ばされると思ったのだが、そうはならなかった。
結界はスッと突然消えてしまった。
「あれ?」
「どうかされました?ジェイド様」
「いや、結界が張ってたからさ」
「結界?そんな物があったのですか?私は気づきませんでした」
「たぶん王族はすり抜けられる特殊な結界なんだろうね。でも今消えちゃった。なんでだろう」
「ジェイド様が消したのでは?」
「いや、何もしてない。ユニークスキルでも結界を壊す系は持ってない」
「それは不思議ですわ。あとでお父様に聞いておきますわ」
「いいよ、入れたんだから。それよりも読みたい本読んじゃうからちょっと待ってて」
「はい♡」
禁書庫は意外とこじんまりしていおり、それっぽい本はすぐに見つかった。
まぁ禁書がそんなにあっても困るよね。
『魔王について』
「これかな?」
パラパラとめくってみる。
『魔王パズスとの戦いは30年以上も続いてきた。
パズスは魔界の領土だけでは飽き足らず、我々の土地を奪おうとしている』
あれ?魔王ってノエルじゃないのか?
『魔王パズスとの戦いは私が王になる前からだ。
我が国はSSSランクの冒険者等の活躍もあり、ついにパズスを殺すことに成功した。
国に平和が取り戻された。
しかしそんな平和は長くは続かなかった。
数年の後、パズスが復活したのだ』
魔王の脅威が俺の子供の頃にあったのは知っている。
でも大人になる頃には魔族からの侵攻は無くなっていたので全然知らなかった。
『何度倒しても魔王は数年後に復活する。
ただ殺すのでは駄目だ。
我々は魔族を捉えたり、極少数いる友好的な魔族と契約を結び、魔王に関して調査を始めた』
俺が知りたいのはノエルが張った結界の解除方法だが、この魔王についての情報もかなり気になったので、そのまま読み進める事にした。
『そこで分かった事。
魔王とは称号であり受け継がれるものであるという事。
具体的には魔族が魔王の称号を持つものを倒すと、魔王の称号が倒した物に受け継がれる。
つまり魔族の誰かがパズスを倒した場合、倒した魔族が新魔王になりパズスは復活しない』
流れから言うとノエルがパズスを殺したって事?
『つまり魔族はより強い魔族に魔王の称号を受け継いで行くのだ。
放っておけばどんどん魔王は強くなっていくかもしれない。
どうにかして魔王を我々人類の手で討ち滅ぼす方法はないかと考えていたところ、手に入れた情報がロンギヌスの槍だ』
おお、ついに出てきたロンギヌスの槍。
『しかしこのロンギヌスの槍は眉唾だ。
古い神話、おとぎ話の研究家がロンギヌスの槍というスキルが有り、それならば魔王を称号ごと消し去れると言ったのだ。
しかしロンギヌスの槍などというスキルを持つものは今までかつて見たことがない』
実際俺がここにいるわけで、この研究家の言うことはあってたわけだ。
『我々はロンギヌスの槍を見つけようと調査を開始した。
しかし結局今日までロンギヌスの槍のスキルは見つかっていない。
さらに悪いことが起こる。
悠長な事は言っていられなくなった。
パズスがなりふり構わず侵攻を開始したのだ。
多くの村が焼き払われた。
そんな時救いが現れる
ノエルという魔族だ』
「ノエルだ!」
思わず本を読みながら俺はそう叫んでしまった。
『何故かその魔族は村を滅ぼす魔族を全て殲滅していった。
我々はノエルを友好的な魔族とみなした。
ノエルは王である私を救ってくれた命の恩人でもあった。
私はパズスの城に招かれ事があった。和平交渉を結ぼうとパズスが申し出てきたのだ。
もちろんそれは罠だった。
しかし私はそんな罠にコロリと騙されてしまうほどに精神がまいっていたのだ。
パズスが出した10メートルはあろうかという火球が城に来た私と兵士達を襲った。
私は死を悟ったがそうはならなかった。
どこからともなく突然現れたノエルが一瞬で火球を消し去り、我々の命を救ったのだ。
あの時私を見つめて、「帰れ」
とノエルは一言だけ。
幼いが美しいその姿は、今でも私の脳裏に焼きついている』
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