第77話 初めての奴隷ってマジですか?

「ストップストップ!服脱がないで!!」


俺がそう叫ぶとキョトンとしているエリザ姫。


「何故止めるのですか?ジェイド様」


「いやいやいやいや!逆になんで服ぬぐの!?」


俺が狼狽えていると、「何をご冗談をおっしゃるのですかジェイド様」と言わんばかりの涼しげな微笑みをたずさえ、エリザ姫は、


「私めはジェイド様の奴隷で卑しい豚ですから。豚が服を着ているのはおかしいので、脱ぐのは当然かと?」


と平然と言い放つ。


「ああそうだね、豚は服なんて着ないよね、って違うよ!あなたは姫ですよ!奴隷でも、ましてや豚だなんて、ある訳ないでしょ!」


俺がつい声を荒げそう言うと、エリザ姫はジワリと瞳を潤ませ、ポロポロと涙をこぼし始めた。


「いや待って!なんで泣いてるの!?ちょっとちょっと!」


「私めはジェイド様の奴隷にはしてもらえないのですね。それもこれも姫なんて肩書きがあるから……かくなる上は姫の肩書を捨てるために狂人のフリをして裸で街に……」


「待った待った!奴隷にします!喜んで奴隷にします!だから止めて!」


俺がそう言うとエリザ姫の顔がぱぁっと明るくなった。


「ありがとうございます!ではすぐに服を!」


「いや待った!奴隷にするけど服は着たままでいいから」


すでに半分下着姿のエリザ姫を止めるが、またエリザ姫は涙を流し始める。


「裸になれないのであれば、せめて奴隷の証を!私めに首輪をおつけ下さい!ジェイド様の奴隷であるという、証が欲しいのです!」


「く、首輪って。それもちょっと……」


「首輪を頂けないのであれば、私はこれから一生涯服を着る事なく、四つん這いで生活させていただきます」


「ああ!急に首輪つけたくなってきた!エリザ姫に似合う首輪何処かにないかなぁ」


とりあえずこう言っとくしかない!

首輪なんてそうそうあるわけがないから、この場さえ凌いで、折を見て呪いを解きにくれば……


「はい♡首はならここにたくさんあります♡」


そう言ってエリザ姫は大量の首輪が入った箱を俺に差し出す。


俺は思わず吹き出してしまう。


「な、何故こんな大量に首輪が……」


エリザ姫はニコニコと俺が首輪を選ぶのを楽しそうに待っている。

こ、こうなったらなるべく首につけても首輪っぽくないやつを探すしかない!

そう思っていると、ごっつい首輪の数々の中、一つだけおしゃれなチョーカーの様な物を見つけた。


宝石をあしらっており、これなら王族がつけていても何も違和感がない。


「これだ!これにしよう!」


「さすがジェイド様!お目が高い!早速私めに着けて下さいませ!」


俺がつけなきゃならないのか。

俺は渋々エリザ姫の首にチョーカーをカチリと着けてあげた。


すると、チョーカーについていた宝石が怪しくポォっと光った。


「えっ?まさかこれ魔道具?」


「その通りで御座います。この首輪はいつか私が結婚した際、婚約者の男に付けさせようと思い密かに作らせていた魔法の首輪で御座います」


なんだろう。めちゃくちゃ嫌な予感がする。


「ち、ちなみにどんな装備効果があるのかな?」


「はい♡この首輪を付けていただいた相手に敵意や嫌悪感を持った瞬間、この首輪が絞まる仕掛けになっております♪」


「えっ?ま、待って!それって解除できるよね?」


エリザ姫はキョトンとしている。


「この首輪の魔法は強力ですから、死ぬまで外れませんよ?無理やり取ろうとしたら首と胴体が離れ離れになってしまいますわ」


「じゃ、じゃあどうすんの!首絞まったら!」


「大丈夫です!私がジェイド様に反抗するなんてあり得ませんから!」


いや、呪い解いた途端殺意剥き出しになるでしょ!


「待ってお願いします!首の絞まりを解除する方法だけ教えて!」


「首が絞まるのを解除するのには必要な物があります、それは……」


「それは?」


「ズバリ、相手の体液ですわ♪」


「はっ?」


「奴隷は許しを頂けるよう懇願し、足を舐めさせていただくんですわ♪そうすると首の締まりがとけ、それと同時に脳に大量の快楽部質が送られます。反抗すると罰、体液を摂取すると快楽部質。こうして自然と身も心も奴隷になっていく!我ながら素晴らしい首輪を作ったものです」


何そのめちゃくちゃ恐ろしい魔道具……。


「も、もしもだよ、敵意だけならまだしも、殺意なんて持ったら?」


「体液を取らないと数分で死んでしまうくらいキツく首が絞まります」


「……そ、その場合も体液ですか?」


「うーんどうでしょ。足舐めじゃどう考えても足りないと思いますわ。口と口で直接?あと……エッチな事とか?あ、もちろんジェイド様が私をお使いになりたいのでしたらいつでも言って頂ければ……」


「大丈夫。今めっちゃ萎えたから」


「ちなみにこの首輪をしてエッチな事なんてしたら、人間が味わっていいレベルじゃない快楽と多幸感に溢れるはずですわ。私豚じゃなくて、○ックスの事しか考えられない猿になってしまうんじゃないかしら」


そう言ってクスクスと可笑しそうに笑うエリザ姫。

どこに笑うポイントあった!!

絶対にエリザ姫には俺に触れさせもしないぞ!

恐ろしすぎる!


いつか呪いと首輪、両方解除しないと!


「ところで、話は変わるけど、この王宮に禁書庫ってあったりする?」


「はい。ありますわ。案内いたしましょうか?」


「い、いや場所だけ教えてくれれば。城中に兵士たちがいるから一緒にいるところを見られたらまずいし」


「ご心配には及びません」


そう言うとエリザ姫は部屋にあった本棚の本の位置をいくつか入れ替え出した。

すると……


「ゴゴゴゴゴゴゴゴッ」


本棚がゆっくりと動き、本棚があった場所に階段が姿を現した。


「王宮内の隠し通路であれば、私この城の誰よりも把握しておりますから」

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