第47話 感度3000倍は恐ろしいってマジですか?
「ど、どうしてこうなった……」
俺はベッドの上で頭を抱え座っていた。
事の始まりは数十分前、俺が幻術を反射した時だ。
「はい、お待たせしました。詠唱終了です。お客さまには特別に無料でスペシャルコースをご堪能していただきます。では夢幻の世界に行ってらっしゃい」
よし、反射のタイミングはここだ!
俺は無効が成功していたので、反射も問題なく成功すると思っていた。
俺が反射を発動するとヒナタちゃんは一瞬ピタッと動かなくなったかと思うと、さっきまでとは比べ物にならない元気と笑顔でニコニコ笑いだした。
「すっごい良い天気ですね!」
《ヒナタ2倍》
おお!やった!反射できたぞ!
「これプライベートビーチだから誰も来ないんでしょ。あなたとこれてよかった!だーいすき!」
おお、サービスも凄い!てか本当の恋人みたいな表情や反応!凄いな、さすがSSSのヒナタちゃんだ。
「私なんでこんな厚着なんだろ!私達しかいないんだから、脱いじゃお♪」
そう言って服を脱ぎ出す。
でもなんかおかしいんだよな。
さっきから小刻みに震えてるんだよな。
《ヒナタ5倍》
俺プライベートビーチに行く幻術かけられたはずだよね?
それを反射しただけだよね?
ヒナタちゃん服を脱いで服が擦れるだけでびくんびくんしてる。
《ヒナタ10倍》
「だ、大丈夫?ヒナタちゃん?」
「えー、誰ですか、その女?」
下着姿になったヒナタちゃんは何故か名前を言われて怒っている。
「え、だって自分でヒナタちゃんって……」
「私の名前はユリネですよ!ユリネって呼んでください、ダーリン♡」
「え、それ本名じゃない?言っていいの?そんでなんか顔赤くない?本当に大丈夫?」
「なんかダーリンの顔見てから、体が熱いっていうか、ちょっとずつ気持ち良くなってるというか、でも大丈夫です。すっごく気持ち良いだけだから」
《ユリネ20倍》
幻術の反射が終わったら帰ろうと思ったんだけど、なんだかユリネちゃんの様子がおかしいし、もう少し様子を見た方が良さそうだ。
高レベルの幻術による副作用とかがあるのなら治療してから帰らないといけない。
「ダーリンも服脱いで!脱がないなら私が脱がします!」
そう言ってユリネは俺のズボンに飛びつく。
「すっご!これ、すっご!こんなの初めて見た!」
《ユリネ30倍》
俺は慌ててズボンを上げる。
「分かった、分かった。風呂だけ入るよ。水着もあるみたいだし」
「わ、私が洗います!洗いますから!」
「いや、いいよいいよ、自分で洗うから。実は俺サービス受けるつもりないんだ。風呂入ったら帰るよ」
「え、駄目です!お、お願いします!ユリネと一緒にいて下さい!お願いします!」
う、嘘だろ?土下座?
《ユリネ50倍》
これも幻術の効果?それともサービスしないでお客を帰らすと罰とかあるのか?
裏社会の闇?
「わ、分かったよ!だからやめて、土下座はやめて!」
「本当ですか?」
そう言ってぱぁっと顔を明るくするユリネちゃん。
「じゃあお願いします」
「はい♡」
ユリネちゃんは体を綺麗に洗ってくれた。
でもその間はぁはぁ言ってるし、本当に体調悪そう。大丈夫か?
《ユリネ100倍》
「ちょっとベッド行こう!ベッドで休もう!」
「え、ベッド!やった!早く早く!」
ユリネちゃんはベッドと聞いてとても喜んでいる。
あれ、大丈夫なのかな。
俺がベッドに座ると、ユリネちゃんがゆっくり後をついてくる。
「あれ、なんかユリネちゃん歩き方おかしくない?」
《ユリネ300倍》
「な、なんか、んっ!あ、る、く、だ、け、でっ!んっ!」
歩くだけで何なんだ?
なんかやばそうだし、ベッドまで運んであげるか。
「歩くの辛そうだし、抱っこしてあげるよ」
「は、はい、お願いします」
「よいしょ」
《ユリネ500倍》
俺が抱き上げた途端、ユリネちゃんの体がビクビクっと跳ね上がった!
「えっ!なに!マジで何なの!?これ!」
「は、早くベッド!早くベッドでして!もう我慢できない!」
俺は慌ててベッドにユリネちゃんを寝かせる。
「なんか体調悪そうだから今日は……」
「だ、め、で、す、かえった、ら、私、本当におかしく、なる……」
《ユリネ1000倍》
「じゃ、じゃあ時間まで看病してるよ」
「……」
《ユリネ1200倍……1300倍……1400倍……1500倍……》
「ダーリン、実は私、変わった病気で……そのせいでこんな感じに……」
「病気!そっか!持病でこんな感じなんだね!それなら尚更お医者さんを呼んでこないと!」
「いえ、お医者さんは大丈夫なんです。実は私、エッチなことを定期的にしないとこんな風になっちゃう奇病で……」
そんな奇病あるのか!?
でもなるほど!
だからこんなに可愛い子が風俗やってるのか!かわいそうだ、ユリネちゃん!
「だから、お願いします!治療を!これは変なことじゃないんです!治療だから!!!」
「治療……」
「私の命を助けて下さい!」
「命……命か……」
「死にます、このままじゃ!」
「死……死はなぁ……」
「お願いです!」
「……わ、分かった」
「あ、ありがとうございます!ダーリンは命の恩人です!」
俺は覚悟を決めた。ユリネちゃんの命を救わねば!
《ユリネ3000倍》
………………。
そして今に至る。
ベッドで気絶するユリネちゃん。
体を見たけど命に別状はない。一応回復魔法かけておいたから大丈夫なはずではある。
「よし……逃げよう!」
俺は少し多めに金を置いて、そそくさと桃幻郷を後にした。
俺は誓った。
もう風俗には行かない(恐いから)。
もう幻術は反射しない(恐いから)。
俺のユニークスキル(仮)は破魔にはしない(恐いから)。
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