第8話 首の後ろを手刀でポーンとすると気絶するってマジですか?

「申し訳ありませんでした!」


「い、いえ、助けて頂いたのですから、謝られる必要なんてありません」


こんな田舎にいるから貴族と言っても男爵か精々子爵くらいだと思っていたのに……皇帝クラスじゃねぇか!!!


姫さまの裸見たんだぞ!


軽く見積もって打首獄門だ!


謝らなくて良いとか多分嘘だ!油断するな、俺!


「いいえ、私は豚です、卑しい豚です。どうかお慈悲を!」


「えー!ほんと、どうすればいいの、これ」


「申し訳ございません!生まれてきてすいません!」


「えーっと、タクトさんと言いましたね」


「しまったーーーー!!!」


「ええぇぇ!何急に!」


しまった!うっかり本名名乗っちゃったよ!


名前も顔もバレた!逃げるの不可能!お尋ね者確定じゃん!


ごめんアリサ。駄目な兄ちゃんですまん……。


かくなる上は……


「ひ、姫さま!肩とか凝ってませんか?あ、なんか飲みますか?」


ポイントを稼いでなんとか減刑を勝ち取る!


「い、いえ、恩人にそんな事させられません!」


なんか怒ってる、やばいよ、やばいよ!


「な、なんでもするので本当勘弁して下さい!」


「い、いえほんとにそんな……でも、できればこの森から抜けたいので力を貸して欲しいのですが……」


「森?」


あぁ確かにここは森のようだ。


俺は一体どこまで来ちゃったんだ?


というか家まで帰れるかな?


迷子だ、俺。もしかしてこの姫様も迷子なのかな?


なんかそう思うと親近感湧くな。


「へっへっへ」


「ひっ、なんで急に笑って!もしかして私の体を見て欲情!?」


とんでもない事言い出すな、この姫様。


あ、でも昨日のドラゴンの肝とマンドラゴラの効果がまだ残ってる!やば!


「じゃ、じゃあちょっと歩きましょう!なんか村とかあるかもしれませんよ」


「な、なんで内股なの!?こ、恐い!それに、あ、あるはずないでしょ!村なんて!ここは魔王の領域なのよ!人間がいること事態おかしな事なんだから!ま、待って、もしかして、あなた、魔族!?」


「え、魔王の領域?魔族?な、何を言ってるかさっぱり……」


「とぼけないで!私ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエールは魔族なんぞに騙されないし、屈しない!」


すると姫様はどこに隠していたのか、短剣をいきなり取り出し俺に襲い掛かってきた。


「うわっ!マントはだけるからやめて!」


俺は目を瞑ったままそこらにあった細長い石で短剣を捌く。


「キィーンキィーンキィーンキィーン」


「嘘でしょ!私の王宮剣術を!目を瞑って!そんな石ころで!」


俺はその時、短剣を捌くのと姫様のマントがはだけたのに意識を向けてしまい、股間の守りが疎かになってしまった事に気がつくのが遅れた。


「な、何!?その下半身のそれは!?ぶ、武器ね!武器を隠し持っているのね!」


「い、いやぁぁぁぁ!見ないでぇぇぇぇぇぇ!」


「ドス」


あ……。


「やっちまった……」


ひ、姫様を!手刀でポーンとやるやつで、気絶させちまったぁぁぁぁぁぁ!


知らない魔王の領域とかいう森。そして俺の腕の中には気絶する裸の姫様……。


俺の人生は着実におかしな方向に向かっていた。

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