第19話

 ティアが元の姿に戻ると、銀色の髪を伸ばし、赤い目をした少女がそこにいた。

 ハーフエルフなのか耳は少し尖がっている。

 まるで彫刻のモデルのようにそこにいるだけで空気が変わるような感覚がした。


「は!体のサイズを測るね!」

「数分しか持たないから、大体でいいのよ」

「出来るだけやるよ!」


 僕は急いて体のサイズを測って紙に書く。

 その後ティアの周りをくるくると回ってイメージを膨らませて紙に書いていく。


 ティアの姿がおばあちゃんに戻る。


「ありがとう、すぐに作るよ」


 僕はその日からギルドの部屋を借りてティアのローブ・杖・ブーツを作っていく。


 ギルドで一泊3000ゴールドもするのは高いと思ったけど、思い切って借りた。

 白いローブになるからキャンプをしながら作って汚したくなかった。


 装備を作っているとファフとステップが僕をじっと見る。

 やりにくい。

 黙々と作っているだけだから見ても面白くないと思うけど。


「ちゅぎはわたしのふくね」


 ステップが言った。


「わたちも」


 ファフも服が欲しいらしい。


「う、うん、ティアの次に作るよ」


 僕は服作りに没頭していた。

 ファフとステップはしばらく僕の作業を見ていた。




 ローブ・ブーツ・杖を作るとティアに試着してもらい、今度は紋章魔法で性能を強化していく。

 紋章魔法を装備に使う事で、体全体をコーティングするバリア効果をつけたり、特殊効果をつける事が出来る。

 僕は今できる最高の出来を目指して何度も紋章魔法の強化を繰り返した。



 

 今出来る最高状態のローブとブーツ、杖をティアに持って行く。


「ティア、やっとできたよ」

「ありがとう。お礼は後で必ずするね」


 部屋に戻ると眠くなってきた。

 僕はベッドに倒れこむ。


 ファフとステップが部屋に入って来る。

 ステップが僕の上に乗って僕を見る。

 ベッドの横を見るとファフが僕を見ていた。


「……」

「……」

「……」


「な、なに?」


「わたしのふくいつなの?」

「わたちも、いつ?」

「寝て起きたら作るよ」


「じぇったい?」

「絶対」


 そうして僕は眠った。




 ◇




 起きると、ファフとステップが僕の隣で寝ていた。

 これは、服を作るまで離れてくれないか。


 僕は2人用の服と靴を作った。





 ステップとファフは服とブーツを渡すとギルドの中で動き回る。

 特にネコ族のステップは素早く動き回る。


 新しい靴と服が嬉しかったようだ。

 

「パン、たべるう?」


 ファフがテーブルにパンを持ってきて、背伸びをしながらテーブルに置いた。


「もらうよ。ありがとう」


 2人と少しだけ仲が良くなった気がする。

 僕はパンを食べながらステータスを開いた。




 カモン  男

 特級ノービス(裁縫・解体・鍛冶・紋章魔法の最終成長率を10倍にする)

 体力:【100/200 EXP0/1010→105/200 EXP56/1060】

 魔力:100/200 EXP0/1010

 器用:100/200 EXP0/1010

 才能:【70→78】

 スキル『★鬼人化:封印中』『短剣レベル8(戦闘力+24%)』『裁縫レベル【6→8】』『採取レベル10』『解体レベル【6→7】』『生活魔法レベル4』『鍛冶レベル【5→6】』『紋章魔法レベル【1→5】』

 武器:『★ナイフ召喚レベル10攻撃力100(魔力吸収・斬撃・マーキング・鍛冶攻撃力強化【+50→+60】・解体攻撃力強化【+60→+70】)』『★鞘召喚レベル10(異空間収納・自動採取・次元工房・マーキングスラッシュ)』

 防具:『★マント召喚レベル10防御力50(自動防御・魔力自動回復・状態異常耐性・裁縫防御力強化【+60→+80】)』


 

 体力を上げているけど、100を超えると必要な魔石の数が多くなる。

 体力の成長が悪くなってきた。


 裁縫・解体・鍛冶のレベルが上がったらナイフとマントが強くなった。

 紋章魔法のレベルが上がった事でマーキングスラッシュの攻撃力が通常攻撃の110%から150%に上がった。


 ……今はダンジョンで魔物を倒して魔石を集めるより物を作っている方が強くなれる気がする。


 才能値が上がったのも嬉しい。

 どんどん生活が楽になっていく。

 次は物作りを進めて強くなる。

 そうすればゴリ社長から追い回されても平気だ。


 ステータスを閉じると、プロテクタが前に座っていた。


「わあ!びっくりした!」

「驚いたか」


「びっくり、ちた?」

「びっくり?びっくり?」


 そう言ってファフとステップが僕の隣に座る。


「カモン、頼みがある」

「な、何?」


「明日はティアの15才の誕生日で王位継承権破棄の儀式がある。カモンにはティアの付き添いとして同行して欲しい」

「……え?」


「あーあれだ。ティアはお姫様だ。何度か命を狙われている。お前が隣にいれば安心できる」

「プロテクタとインスティじゃ駄目かな?僕より強いよね?」


「俺とインスティじゃ会場からつまみ出されるかもしれねえ。俺とインスティの顔を王は知ってるから俺達じゃ無理だ」

「守り切れるかな?」

「もし暗殺がありゃ俺とインスティが止める。ただそばにいるだけでいいんだ」


「分かったよ」

「助かるぜ」

「でもこの格好じゃまずいかな」

「燕尾服に変えられるか?」

「練習してみるよ」


「頼む」


 僕はその日、マント召喚の外見を燕尾服に帰る練習をして過ごした。


 明日、ティアの儀式が始まる。

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