第8話

【プロテクタ視点】


 カモンは目覚めて活動を再開したか。

 リンゴをシャクシャクと食べ、植物を編んで魚取り用の罠を作っている。


 採取スキルは薬草だけじゃなく、魚・キノコ・食べられる草なんかの食料や素材となる砂鉄や粘土も採取できる、そう考えれば……

 セーフゾーンで体力を回復するには良いスキルだ。

 カモンは痩せすぎなんだ。

 もっと食って寝るのがいい。


 倒木を集めて、生活魔法で火をつけて焚火を始めた。

 サバイバル能力が高い。


 食料で困る事は無いだろう。

 今は冬だ。

 外よりダンジョン内の方がまだ暖かい。

 不幸中の幸いか。


 ん?靴を脱いだ?


 マント召喚のスキルを操作しているのか?

 マントが足を覆って靴になっていく。

 もうこれで靴も服もスキルで代用できるか。


 カモンがセーフゾーンから動いた!

 跳ねうさぎ!肉だぞ!カモン!



 カモンが跳ねうさぎをナイフの斬撃で仕留める。

 すぐにセーフゾーンに戻り、解体スキルで皮を剥いで肉を切って焚火で焼いていく。


 カモンは見ていて飽きないぜ。


 カモンが急にこっちを向いた。

 俺は咄嗟に木の陰に隠れる。

 勘のいい奴だな。

 犬のようだ。

 ノービスだが斥候向きの性格をしてやがる。



 カモンは肉を焼いて食べ、また出かけた。

 3体のゴーストに走って行く。


 わざと音を出している?

 ゴーストのEXPスティールが発動してカモンを狙う。


 ん?ワザとEXPスティールを受けている?しかもEXPを吸われていないのか?

 ……間違いない!EXPスティールを無効化する何かを持ってやがる!

 おいおい!それを無効化出来るなら、この薬草ダンジョンは不遇ダンジョンから一気に稼ぎやすい狩場に変わる!


 カモンはその後、セーフゾーンから離れすぎないように周りを探索し、ゴーストやスケルトンを狩って行った。

 セーフゾーンの近くならすぐ逃げ帰る事が出来る。


 これなら、もう大丈夫だ。

 だが待て、カモンはティアにお礼をする事にこだわっている。

 カモン、お前は今が成長のタイミングだ!


 カモンのサバイバル能力は高い。

 むしろここで過ごせば体力は回復するだろう。

 カモン、お前はもっと食って寝ろ。

 もっと肉をつけろ。



 カモンと話をして説得しよう。

 その後帰って受付嬢のインスティとティア姫に無事を伝えに行く。

 おし!

 それでいく!

 




【カモン視点】


 僕はステータスを確認する。


 カモン  男

 中級ノービス(★ナイフ召喚・裁縫・採取・解体・鍛冶・紋章魔法の最終成長率を10倍にする)

 体力:【15/50 EXP0/16→50/50 EXP0/51】

 魔力: 10/50 EXP0/11

 器用:【10/50 EXP0/11→20/50 EXP7/21】

 才能:【38→43】

 スキル『★鬼人化:封印中』『短剣レベル【5→6】(戦闘力+18%)』『裁縫レベル4』『採取レベル【4→5】』『解体レベル4』『生活魔法レベル4』『鍛冶レベル1』『紋章魔法レベル1』

 武器:『★ナイフ召喚【レベル5攻撃力50→レベル8攻撃力80】(魔力吸収・斬撃)』

 防具:『★マント召喚レベル10防御力50(自動防御・魔力自動回復・状態異常耐性)』




 中級ノービスの効果で★ナイフ召喚・裁縫・採取・解体・鍛冶・紋章魔法のレベルがすぐに上がるようになった。

 才能の値が上がればスキルを覚えやすくなるからスキル上げが楽になる!


 マント召喚とナイフ召喚の追加能力も使いやすい。


 魔力吸収=ナイフ攻撃を当てると、魔力を吸収できる。

 吸収率は1ヒットにつき魔物の最大魔力1%か。

 このおかげでマントやナイフがボロボロになってもすぐに魔力を流して修復できる。


 斬撃=ナイフ攻撃を繰り出すと2メートルの黒い斬撃が発生する。

 攻撃力はナイフで斬るのと同じだし、魔力の消費も無い。

 それに斬撃を当てても魔力吸収が発動するから斬撃を使いながら魔力を回復できる。

 短剣はリーチの短さが弱点の1つだったけど、その弱点を克服できた。


 魔力自動回復=1分につき1%の魔力を回復する。


 状態異常耐性=状態異常に強くなくなる

 このスキルのおかげでEXPスティールが効かなくなった。

 もう、体力も魔力も器用も奪われない。

 奪われたくない!


 ティアおばあちゃんにお礼をしたら、またここにこよう。


「よお、カモン、元気か?」

「えーと」

「俺の名はプロテクタだ」


「プロテクタ、さん?」

「そうだ、中々帰らねえから気になって様子を見に来たぜ。大丈夫か?」


「……」

「ん?どうした?」

「ずっと僕を見守ってませんでした?」

「ば、ばっか!俺はそんなに暇じゃねえんだよ!暇がありゃ酒を飲む!」


「う~ん、でも、気配がしたような気が」

「魔物だろう。カモン、これから街に戻るのか?」

「ティアおばあちゃんにお礼をして、またここに戻って修行します」


「そうか、少し話をしようじゃねえか。普通に話してくれ」


 プロテクタさんが笑顔で言った後、焚火の前に座った。


「はい、うん。プロテクタさんは魚を食べる?」

「さんもいらねえ。貰うぜ!お礼に塩を渡そう」

「え?こんなに?塩は高いのに」


「ばっか、先輩が貰ってばかりじゃカッコがつかねえだろ?」

「分かりま、分かったよ」


「所で、ティアにお礼をすると言ったが、ティアなら大丈夫だ。後に回してくれ」

「でも、パンを貰ってるからお礼をしないと」


「あーあれだ。お礼をするなら強くなって楽に稼げるようになってからの方がお礼は楽になる。うまく言えねえがまずは強くなるのが大事だぜ」


 僕はプロテクタの言葉を聞いてポーション王子・クラッシュの言葉を思い出す。


『よく慈善活動を行いたいと答える者がいる。信仰心が厚くて大変結構、と言いたい所だが、もし本当に多くの人を救いたいと思うのならたくさん稼げるようになるまで金はすべて自己投資に回せ!楽に稼げるようになれば同じ努力でより多くの人を救えるのだ!』


「そうか!分かったよ!自己投資だね!」

「お、おう、そうだな。それだ、自己投資が大事だ」

「強くなっていっぱい稼げるようになってからティアおばあちゃんにお礼をするよ!」


「今度は分かったようだな。魚、うまかったぜえ!じゃあな!」


 プロテクタは笑顔で帰って行った。


 そうか!たくさん強くなってたくさんたくさん返せばいいんだ!


「頑張るぞ!」


 たくさんお金を稼げるようになってたくさん返すんだ!




 プロテクタは返すのは後にしろと言ったが、たくさん返せとは言っていない。

 カモンの受け取り方は微妙に間違っていた。




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