奪われ続けた少年が助けたおばあちゃんは呪いをかけられたお姫様だった~少年と呪いが解けたお姫様は家族のぬくもりを知る~

ぐうのすけ

第1話

「カモン、お前の評価は1だ」


 会社のオーナーであるクラッシュが冷たく言い放った。

 評価1は最低ランク。

 首を切りたい人につける評価だ。


「……はい」


 目の前に僕が働く会社のオーナーのクラッシュとゴリ社長が並ぶ。


 クラッシュは金髪の髪とブルーの瞳を持ち背が高いイケメンのエルフだ。

 しかもポーション会社を4社も運営するオーナーで更にB級冒険者の資格を持っている。

 この都市にはBランク冒険者までの資格を持った人しかいないからクラッシュはこの都市で最高ランクなんだ。


 若いのに成功して強くて、ファンも多い。

 会社の外からは『ポーション王子』と呼ばれている。


「カモン!声が小さい!はっきりと発言しろ!甘えるなよ!」


 ゴリ社長が太い声で言った。


「はい!すみませんでした!」


 ゴリ社長は背が高く筋肉があっていつも熱そうだ。

 獣人族でゴリラの力を持っており、見た目通りの怪力だ。

 黒髪と黒目で、白目の部分まで黒い。

 怖い顔をしている。

 オーナーが持っている会社の1つ、『ブラックポーション』の社長でもある。


「カモン、今から最低評価の理由を説明する」


「はい」

「声が小さい!」


 ゴリ社長が怒鳴った。


「はい!」

「オーナー、説明をお願いします」


 ゴリ社長は僕の事をすぐに怒鳴るけど、オーナーのクラッシュには笑顔ですごく丁寧だ。


「では最低評価の理由を説明しよう。

 1つ目、ノービスである点だ。

 ノービスは人口の約8割を占めるジョブとなる。

 当然数が多いノービスの希少価値は低く、戦闘にも向かない」


 ゴリ社長は戦士で、オーナーのクラッシュは魔導士だ。

 戦士・魔導士・斥候は人口の約5%ずつしかいない。

 特に戦士と魔導士は就職先には困らないんだ。


 でも、ノービスはたくさんいるから就職する為にはスキルが必要だ。

 でも毎日会社で働いているから勉強や訓練の時間を取れない。


「2つ目、体力・魔力・器用の値が低すぎる点だ。

 私は自己投資が大切だと定期スピーチで何度も話をしてきたはずだが努力が見られない。

 魔石を購入して使用する事で能力値を上げ、自分を磨く事すら怠るその姿勢は我らの経営理念と反する。

 10才で就職し、12才の今になるまでブラックポーションで働き、どの数値も30に達していない点を見ると、カモンは会社の経営理念に合わないと言わざるおえない」


 僕はダンジョンの盾役をやらされている。

 魔物の中には能力値を減少させるスキルを使って来る敵がいて、能力値を上げられない。

 上げたいのに上げられないんだ。


「3つ目、オリジナルスキルが魔物狩りの役にたたない点だ。 

 封印されて使用できない『鬼人化』と、攻撃の役に立たない『マント召喚』のスキルはダンジョンで魔物狩りをし、薬草の採取からポーションの生産までを一貫して行う我がグループと経営方針は合わないだろう。

 鬼人族は鬼人化あっての鬼人族なのだ」


 僕は鬼人族ならみんなが使えるはずの『鬼人化』を使いこなせない。

 オリジナルスキルは遺伝で生まれた時から授かる能力だ。

 オリジナルスキルは親から受け継ぐ能力だから、人の個性になる。

 

 マント召喚は自動で防御する能力があるけど攻撃の役に立たなくて、防御力がそこまで高いわけでもないから皆に無能と馬鹿にされている。


「4つ目は希少スキルを持たない点だ。

 習得が難しいストレージ(異空間収納)や調合(ポーション作成)などのスキルを何一つ習得していない。

 重ねて言うが私は何度も自己投資が大切だと話をしてきた。

 カモン、お前からは努力の成果が見えない」


 僕は休みの日も毎日仕事をしていて訓練の時間を取れない。

 帰ると体中が痛くて、寝て起きて仕事をして帰って寝る生活をしている。


「5点目は弱い短剣スキルで戦っている点だ。

 他の魔法や剣などの武器スキルなら重複しないものの戦闘力をlレベルにつき5%引き上げる。

 だが短剣はlレベルにつき3%しか戦闘力を引き上げる事が出来ない。

 しかも短剣自体武器攻撃力が低い。

 体力・魔力・器用の値が低いだけでなく、スキルの戦闘力底上げもうまく出来ていないのだ。


 最後、6点目は勤務態度だ。

 ゴリ社長から提出された資料を見る限り、勤務態度の悪さについては繰り返し報告を受けている。

 裁縫・採取・解体のレベルは高いが、勤務態度が悪い。

 働かないのならばスキルを持つ意味が無い。

 私は何度もゴリ社長に勤務態度を重ねて聞き、更に周りの社員からも勤務態度を聞き取りした結果君の評価はすべて低かったのだ。

 以上がゴリから提出された評価となる」


 ……話が長い。

 オーナーの話を聞いていると体調が悪くなってくる。


 僕の顔を見てゴリ社長が不気味に笑った。

 僕は仕事の成果をみんなに取られ続けて仕事をしているんだ。

 でも何か言うと殴られたり、髪を掴まれて魔物に投げ飛ばされる。

 そして何も言えなくなるまでいじめられる。


 休みの日も休ませてもらえないし、腕が痺れて動かなくなってくるまで仕事を続けているんだ。


「カモン、お前このまま働き続けるつもりか?」

「来期はわが社に何をもたらすか答えるのだ」


 そうか、僕を辞めさせたいんだ。


 リストラをすればオーナーは僕に多くお金を払う事になる。

 でも僕から辞めると言えばそうしなくていいんだ。


 もう、ここに残る事は出来ない。


 でも、最後になるなら、本当の事を言おう。


「僕はゴリ社長や皆に仕事の成果を奪われてきました!本当は!」


 その瞬間にゴリ社長が僕の話を遮るように怒鳴る。


「オーナーの質問に答えろ!!聞かれた事にだけに答えろ!!!オーナーの時間を奪うな!!!!」


 その瞬間体が震えた。

 怖くて何も言えない。

 反射的に腕をクロスさせて防御の構えをとった。


「すいませんでした!今すぐ辞めさせてもらいます!今までありがとうございました!」


 礼をして出て行こうとする。


「待て!ブラックポーションの社長として腐ったお前をこのまま追い出す事は出来ねえ!最終日の今日は再教育をしてやろう」

「ご、ゴリ社長!だ、大丈夫です!もう辞めたので大丈夫です!」


「遠慮するな!最後に色々可愛がってやる!!」


 そう言ってゴリ社長は僕を担ぐ。


 僕はそのまま外に連れて行かれそうになる。


「オーナー!僕はもう辞めました!もう大丈夫です」


 オーナーのクラッシュは僕を無視して提出された書類を見つめる。


「オーナーの仕事を奪うんじゃねえ!」

 

 そう言ってゴリ社長は部屋を出て扉を閉める。


 僕はポーションタワーの最上階から降りて外に出る。

 するとゴリが不気味に笑う。


「お前!余計な事言ってんじゃねえぞ!可愛がりが必要だな!」


 外で待機していた夜勤組と一緒に都市の防壁南門をくぐってダンジョンに向かって歩いていく。

 ゴリ社長は僕を掴んで逃げられないように抱える。


 僕はゴリ社長に捕まえられたままダンジョンに向かった。


 僕は、またいじめられるんだ。





 あとがき

 ここからはプチ設定集&補足説明です。

 読み飛ばしても問題ありません。


 僕が前作と前々作で執筆した作品ですが、コメントを読むと「説明が足りない!」と指摘を何度も受けた為、少し説明を増やしました。

 ですが、説明ばかりの文章は家電の取扱説明書を読んでいる気分にさせてしまうなど、他にも様々なデメリットが多くあります。

 が、中には「きちんと説明して欲しい」と考えられている方もいらっしゃいます。


 色々考えた末、最低限の設定を記載しました。

 重ねて言いますがあとがきは読み飛ばしても大丈夫です。


 


 設定集


 

 初期ステータス


 クラッシュ

 若くして4つのポーション会社のオーナーに上り詰めた。

 この都市で最高ランクであるBランク冒険者の資格を持っている。

 ※冒険者ランクは国家共通資格でS~Gランクまであり、後にもっと詳しい解説が出てきます。

 

 クラッシュ 男

 上級魔導士(????)

 体力:300/300 EXP0/3010

 魔力:500/500 EXP0/5010

 器用:300/300 EXP0/3010

 才能:40

 スキル『★魔法威力上昇(????)』『生活魔法レベル5』『水魔法レベル5(????)』『炎魔法レベル5(????)』『土魔法レベル5(????)』『風魔法レベル5(????)』『光魔法レベ5(????)』『闇魔法レベル5(????)』『調合レベル5』

 武器:ヘンデルの杖500

 防具:ヘンデルのローブセット250


 ゴリ

 ブラックポーションの社長で元カモンの上司。

 戦士と相性のいい『ゴリラパワー』と『ゴリラブースト』のスキルを持つ。

 戦士として必須と言われる『身体強化』を覚える気配がない為ジョブランクは低い。



 ゴリ 男

 下級戦士(????)

 体力:100/100   EXP0/1010

 魔力:30/50    EXP0/31

 器用:50/50    EXP0/51

 才能:5

 スキル『★ゴリラパワー』『★ゴリラブースト』『剣レベル3(????)』

 武器:ショートソード60

 防具:カニ甲羅のプレートメイル30



 カモン

 今作の主人公。

 鬼人族だが、鬼人族が皆使えるはずの『鬼人化』を使いこなす事が出来ない。

 12才でありながら裁縫・採取・解体レベルは高いが、これはゴリ社長から怒鳴られ、危機感を覚えつつ仕事を続けた結果だ。


 カモン  男

 下級ノービス(ボーナス効果無し)

 体力:10/30 EXP0/11

 魔力:10/30 EXP0/11

 器用:10/30 EXP0/11

 才能:25

 スキル『★鬼人化:封印中』『短剣レベル3(戦闘力+9%)』『裁縫レベル4』『採取レベル4」』『解体レベル4』『生活魔法レベル4』

 武器:ナイフ15

 防具:『★マント召喚Lv6防御力30(自動防御)』




 ステータスの表示解説


・()内はステータスを開示しても自分にしか見る事が出来ない。


・スキル横の★はオリジナルスキルの意味となる。

 オリジナルスキル=人によって全く違い多様な能力・個性の象徴。

 オリジナルスキルは親からの遺伝で先天的に覚え、レベルがある場合と無い場合がある。

 オリジナルスキルは()内の説明がある物と無いものがある。

 後天的に新たなオリジナルスキルを覚える事もある。

 多様性の象徴です。

 

・スキルレベルの上限は全部10。


・体力・魔力・器用の上昇方法。

 横にあるEXPを上げていくと能力が上昇する。

 体力の場合、

 体力:10(現在値)/30(限界値) EXP0(今のEXP)/11(体力上昇に必要なEXP)

 となり上の例で行くと、倒した魔物の体内からとれる魔石を11個使用する事で体力が11に上昇する。

 戦士の場合体力・魔導士の場合魔力・斥候の場合器用に成長率アップボーナスが加算される。


・体力・魔力・器用の効果

 体力=HP・物理防御・力・スタミナが上昇

 魔力=魔力の質と量、魔法防御が上昇

 器用=命中・回避・クリティカル・異常耐性


・体力・魔力・器用の限界値について

 特定のスキルを覚える事でジョブランクが上がり、それにより限界値も上がっていく。

 戦士の場合、武器スキル1種と、身体強化をレベル3に上昇させることで下級戦士から中級戦士にランクアップする。

 ノービスの場合はランクアップ条件が多様。


・才能=すべてのスキルレベルが上がりやすくなる。

 (例、才能値10の場合より20の値の者が2倍スキル経験値上がる)

 才能の値=全スキルレベルの合計値となる。

 なのでスキルを覚えてレベルを上げていくほど上がり、才能が上がるほどスキルが上げやすくなる。


・スキルの上がりやすさ 

 上記の説明通り才能値の値が高い方がスキルを上昇させやすい。

 スキルは何度も使う事で上がっていく。

 死の危険を感じ追い詰められる事ですぐ上昇しやすくなる。(追い詰められ、剣を構えただけで剣レベルが上昇する事もある)


・スキルの取得方法

 オリジナルスキルでなければジョブに関係なく取得可能

 1つのスキルを覚える為に数か月の訓練が必要な為、多くの者は始めから覚えているスキルを使用し、新たにスキルを覚えようとはしない。

 

・戦闘力について

 簡易的な計算式が存在する。

 体力・魔力・器用の合計値×スキル戦闘力

 クラッシュの場合

 (体力300+魔力500+器用300)×(魔法レベル5×5%上昇により25%上昇)

 1100×1.25=戦闘力1375

 となるが、戦闘力はあくまで目安である。

 理由としては武具の性能や多様過ぎるオリジナルスキルの影響を考慮できていない点。

 相性の問題を排除できない点などの不確定要素が多すぎる為だ。

 


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