第53話 貴族と魔道士狩りが、じゃなくて報酬がおいしいです

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ミッション達成!

サンダーグローブを手に入れた!

効果:サンダーブリッツが使用可能。何度でも使える。

水神のストールを手に入れた!

効果:防御+30 魔防+150 ウォーターガンが使用可能。何度でも使える。

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「何度でも使えるぁぁぁーーーーーーーーー!」

「フィムちゃん、このストール似あうべーーーーーーー!」

「あああありがとうございますぅぅぁぁあーーーー!」


 本日、二件目の貴族狩り。じゃなかった。

 訪問したおかげで二つもすんごいアイテムが手に入った。

 あの王族達が黒いことをやってる貴族をピックアップしてくれたおかげで報酬が捗る。

 ただシャルンテお嬢様のタカビーシャ家みたいに、警備隊討伐のミッションが発生しないのがネックだった。


「そうこうしているうちにすっかり深夜だね」

「今日はもうファフニル王都に転移して休むか?」

「そうだね。それ! 転移の宝珠!」


 これで私達はファフニル国の王都へ一瞬で移動できた。

 この日はこっちの王都で宿をとって休むことにする。

 そして寝る直前、フィムちゃんが神妙な顔つきで相談を持ちかけてきた。

 報酬のことならいくらでも。


「師匠、一ついいですか。隣国のエクセイシアの件についてです。おかしいと思いませんか?」

「おかしい? 確かに報酬の羽振りはいいけど……」

「私達が最初に襲われた時のことを思い出してください。宿であれだけの騒ぎを起こしたのに宿の人や衛兵がやってくる気配がありませんでした。他のお客さんはちらほら見にきてましたが……」

「そうだっけ?」


 夢中で覚えてない。

 フィムちゃん、あの時は途中から起きてきたにも関わらずよく見てるなぁ。


「そして各貴族に雇われている魔道士……。あれも魔道士協会の魔導士でした。そして魔道士協会はこの国をバックアップしている……つまりどういうことかわかりますか?」

「わかるよ」

「さすがは師匠……。エクセイシアでは現在、魔道士協会がかなり幅を利かせています。それも宿の騒ぎも揉み消せるほどの……」

「うんうん」


 フィムちゃんは偉いなぁ。

 普段から真面目だから、そういうことをちゃんと考えてる。

 まぁそんなところだと思ったけどね。

 だからこそ、今の私達はこうしてる。


「師匠。私達はとんでもない相手と戦っているかもしれません。一度、クリード王子と相談してはどうでしょうか?」

「いや、私に考えがあってね」

「お考えですか!」

 

 つまりこういうことだ。

 確かにエクセイシアの王都内にある支部に突入すればミッションが発生するかもしれない。

 だけどもしそこで支部を潰してしまったら、どうだろう?

 あの王子のことだから、徹底的に魔道士協会をやっつけるはずだ。

 そうすると魔道士協会支部がなくなって、ミッション発生の可能性が潰える。

 だから転移の宝珠を利用してヒット&アウェイをしていた。


「魔道士協会はわざと泳がせているよ。そんなに私を狙いたいならどうぞ」

「し、師匠! それは危険では!」

「大元だけ狙ってもしょうがないよ。おいしいところは他にもあるからね」

「おいしいところ……」


 黙っていても私のところへ報酬がやってくる。

 これって素敵だよね?

 魔道士協会を潰すなんてとんでもない。

 できるだけ報酬をいただいておきたいんだから。


「わかりました、師匠。おいしいところ……つまり他に弱点のようなものがあるということですね。確かに頭を叩けば終わりというのは早計でした」

「わかってくれたんだ。よかった」

「やるなら徹底的に。また一つ、師匠から教わりました。ボクはまだまだ修行不足です」


 フィムちゃんと話してると、何をどうやってもこうなるからもうこれでいい。

 それはそうと、これで魔道士協会がムキーってなってくれたら最高だ。

 もっと来なさい、報酬達。こいこいこいこいこい!


                  * * *


「例の少女が見つからないだと?」


 このバストゥールの耳に入ってきたのは信じがたい情報だ。

 二つの貴族家が襲撃されてから数日が経つ。

 少なくとも王都内で何かあれば、確実に私の耳に入るはずだ。

 王都から出たという情報もなければ、滞在場所が不明だった。


「見つからないはずはないだろう! お前達、それでも神に選ばれし者か!」

「し、しかしこうも影も形も見せないのでは手の打ちようがありません」

「まったく、いきなり消えていなくなったわけでもあるまい。必ずこのエクセイシアの王都内にいるはずだ」

「ハッ……。それともう一つご報告が……」


 今度は何だと言うのだ。

 たかが少女に我らがこうも翻弄されるとは。

 どいつもこいつも、神から選ばれた者とは思えん。


「王宮内の動きが不穏です。王家が魔道士協会に不信感を持ち始めて、近いうちに我らからの資金援助を拒否する方向で決まったようです」

「なに! バカなことを!」

「宮廷魔道士のパイスからの情報です……」

「やはりテホダマーの件が響いたか? いや、それにしても奴らとて資金援助がなければ困るはず。何が起こっている?」


 おのれ、なぜ神に選ばれし我々がここまで翻弄されなければいけない?

 例の少女は何者なのだ?

 まさか神か魔王でもあるまい。

 このバストゥールをここまでコケにするとは。

 仕方ない。使いたくはなかったが奴に任せよう。


「切り裂きジグソーを呼べ」

「バ、バストゥール様。それはさすがに……」

「わかっている。確かに奴は危険だ。だがこうもおちょくられたままではいかんだろう」

「……しかし」


 こいつが躊躇するのも無理はない。

 とある国の町で百人の命が奪われた通称、百裂事件。

 死体がまるでパズルのピースのように切断されていたことから、犯人は切り裂きジグソーと呼ばれた。

 この事件が未解決なのは犯人が見つからなかったからではない。


「当時、あの国で編成された精鋭の魔道士達が残らず返り討ちにあった。しかも丁寧にその死体を切断して、王宮に送り返したのだ」

「いかれてますよ……。なんでそんなのを魔道士協会に……」

「どんな人間だろうと奴も神に選ばれし者。それが神の選択ならば我らも受け入れよう」

「神はお許しになるでしょうか……」


 神はお許しになる。

 選ばれなかった人間による蛮行のほうが認められるはずがない。

 だから私も手段を選ばないのだ。

 たとえこの手が汚れようとも――。ん。また誰かが報告にきたのか?

 吉報であることを願おう。


「バ、バストゥール様! 大変です! あの切り裂きジグソーが瀕死の状態で捕らえられました!」

「そうか、あのジグソーが瀕死で……あ? なんだって?」

「で、ですから。あの切り裂きジグソーが……なんかこう滅多打ちにされたような状態で……泣きながら自白したとか……」

「なんだって?」


 私に何を理解しろというのだ?

 これは現実ではないだろう?

 神も戯れをなさる。これ以上、我々に悪夢を見せて何をするというのだ?

 ハハハ、どうする?

 いや、マジで。 


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