どうも、物欲の聖女です～無双スキル「クリア報酬」で盛大に勘違いされました～【Web版】

第42話 聖女の休日

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ミッション達成！　エンチャントカード・魔防１０％無視を手に入れた！

効果：敵の魔防を１０％無視する。

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「マテリ、どこに行ってた？」

「ミッション」

「そっか」

「私にはわかります。聖女として治安を維持するため、王都の見回りを行っていたんですね」

　ミリータちゃんはその一言で納得してくれる。

　フィムちゃんは思考停止して私の聖女活動の一環だと捉えてくれる。

　ここファフニル国の王都で、私は久しぶりにのんびりと過ごすことにした。

　ただし訳の分からない魔族にいいようにされていたせいで、以前の活気はない。

　少しずつ復興に向かっているけど、閉店したままの店が目立つ。

「ひどいですね……。こんな状況でマウさん達、魔族が受け入れられるでしょうか？」

「無理だろうね。それにマウちゃん達だって完全に信用できるわけじゃない」

「そ、それならなぜ和平に協力すると引き受けたのですか？」

「そこに掴みたいものがあるから」

　殺戮のカードだけは何としてでもほしい。

　仮にマウちゃん達が何か企んでいたとしても、約束だけは守らせる。

　逆に言えば約束さえ守れば、何かを企んでいてもスルーするかもしれない。

　そんな算段だけど、フィムちゃんは目を輝かせていた。

「何かとはやはり平和ですね。師匠の志は常に高みにあるということですか」

「そろそろフィムちゃんがいろんな意味で心配になってきたよ」

「ボ、ボクに至らないところが！？」

「いや、あのね……」

　フィムちゃんに関してはこのままでいいかな。

　そのノリでも、ついてきてくれるなら色々と助かる。

「あ、師匠！　あそこの瓦礫がひどいですね。皆さん、苦労されてますよ」

「そうだね」

　大変だとは思う。

　だけど私は今日、のんびりすると決めて――

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新たなミッションが発生！

・瓦礫の撤去作業を手伝う。報酬：ドラゴンボム

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「毎日、お疲れ様です！　私に任せてください！」

「聖女様！？　いえ、あなたにこんな作業をさせるわけには」

「任せてくださぁぁいッ！」

「は、はい……」

「ファイアファファイッ！」

　崩れた建物の瓦礫を火の玉でぶっ飛ばす。

　こんなもの、どかすより壊したほうが早い。

　破片をミリータちゃんが槌で叩き潰して、ものの数分とかからなかった。

「聖女様、助かりました！　時間はかかりますが、これでまたここに店を建てられます！」

「あ、うん。それはよかった」

「やはりあなたはこの国における聖女……今は何のお礼もできませんが、いつか必ず！」

「うんうん」

　報酬は？

　いや、この人達に言ってるんじゃなくてね？　

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ミッション達成！　ドラゴンボムを手に入れた！

効果：食べるとやみつきになる幻の果実。

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「あ、よかった。でもあまり見ないタイプの報酬だ」

「ド、ドドドド、ドラゴンボム！　今はもう見られねぇとか言われてる果実だ！」

「へぇ、でも栽培かぁ。どうしようかな？」

「まぁ後で食うべ」

　たまにはこんなのもいいか。

　隣でフィムちゃんが涎を垂らし始めたけど、お昼にはまだ早い。

　ガン見してくるけど我慢してほしい。

「し、師匠、そろそろ食べごろでは？」

「まだ腹ごなしのミッションがこないからダメ」

「だいぶ運動になったのでは？」

「最近、ステータスが上がったせいなのかな。あまり疲れを感じないんだよね」

「さすが師匠です……じゅるり」

　何をどう話しても最後にはこうなる。

　飢えた子は無視して歩き続けると、何か人だかりができている。

　事件かなと思ったけど、何のミッションも発生しない。

　これはスルーだなと思ったけど、真っ先に何かを嗅ぎつけて行ったのはフィムちゃんだ。

「皆さん、どうされたんですか？」

「王都内でも地方でも、食料不足が問題になっていてな。魔物に畑を荒らされるし、困ったもんだよ」

「魔族襲撃の影響も？」

「それもある。たまたま王都内に行商にきていた商人や生産者も犠牲になったからなぁ。これからどうするか……」

　なるほど、それは確かに深刻だ。

　あれ？　なんだか私、異様に気分が上がらない。

　こんな時ですらミッションが発生しないとしょせんは他人事みたいに思ってる？

　マテリ、いつからそんな薄情な女の子になったの！

　確かにあなたは正義の味方じゃないけど、人並みの心は持っているはず。

　奮い立て！

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新たなミッションが発生！

・食料を恵んであげる。報酬：ゴールデンポテトの種

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「奮い立ったぁぁぁ！　私は人間！」

「ひっ！」

「皆さん！　ドラゴンボムをどうぞ！」

「なんですかそれ！？」

　皆、見たことがない果実に戸惑っている。

　隣でフィムちゃんがこの世の終わりみたいな顔をしてるけど気にしない。

　後でマウちゃんと一緒においしい食事を作るからさ。ミリータちゃんが。

「これ、食えるのか？　赤々としていて、なんだか……」

「でも聖女様がくれたんだから一口……」

　がぶりとかじったおじさんがカッと目を見開く。

　そして夢中になってあっという間に食べつくしてしまった。

「あ、あ、甘うまいっ！　なんだこれは！」

「なに？　どれどれ……ほわぁぁぁぁーーーー！」

「だ、大丈夫か！」

「一口で感じる甘味の後で襲う酸味の波状攻撃……甘味だけなら甘ったるさが勝って暴力ともとれるが、絶妙な酸味が加わればそれはハーモニー……。そう、これは合唱団だ！」

「お、おう」

　すごい饒舌。

　私の語彙じゃおいしいしか言えないと思う。

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ミッション達成！　ゴールデンポテトを手に入れた！

効果：黄金のような色合いの芋。栄養価満点。

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「また食べ物だ」

「ゴォォォーーーールデンッ！」

「わっ！　ビックリした……なに、ミリータちゃん」

「ポテトだ！　煮てよし！　焼いてよし！　何をしても栄養価が失われない満点食材！」

「へぇ……。そうだなぁ」

　食べ物には困ってないし、ここは一つ――

「皆さん、これよかったら栽培してみません？」

「ほぉ、見たことない芋だな」

「それとさっきのドラゴンボムの種も一緒にどうですか？」

「そ、そうか！　この芋とドラゴンボム……やってみる価値はあるかもしれん！　きたぁーーーーーーーーーーーーー！」

　皆のテンションが一斉に上がった。

　うんうん、わかるよ。

　私もミッションがきたらそうなるからね。

　よかった、これで私が普通の子だと証明された。

　スキル中毒者なんて謂れのない称号がステータスについてしまっているからね。

　誰だって報酬をもらったら嬉しいはず。

「マテリ、あの人達が喜んでるのは食糧問題が解決するからだ」

「え？　ど、どうしたのかな？」

「いや、なんでもない」

　最近、ミリータちゃんが鋭くて怖い。

　後日、試しに王都内の菜園に植えたら芽が出てきたと聞いた。

　王都内が活気づいて、一気に名物化したのはいい。

　私が恵みをもたらした聖女なんて呼ばれて、より神格化されてしまった。

　窮屈に感じるけど、これでミッションが増えるならどんどん神格化しなさい。

　待ってるよ。

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