第16話 一緒に朝食を食べたら、それはもう家族と呼んでも良いよね
異世界三日目の朝。東の空が明るくなり始めた。
まずはコロンのバイタルと輸液の残量を確認した。
だいぶ血色も良くなったので、輸液はこれで終わりにして、少しずつ消化の良いものから食べさせよう。
さて、コーヒーでも淹れよかと思ったら、IVASゴーグルにゴンの燃料補充アイコンが点滅していた。
「お前さんも食事かい?」
「ピッピー」
なんか嬉しそうに聞こえる。
前にも話だが、ゴンは米国ボストン・ダイナミック社製の歩兵随伴支援四足歩行AIボットである。
先代のビッグドッグの苦い経験から、このスマートドッグを開発するにあたって開発・設計担当者はこの騒音対策に最大限配慮した。
先代は重量110kgのボディーと最大180kgの積載物を詰み込んで歩兵に随伴させる機動力を得る為、ボストン・ダイナミックのエンジニアたちはビッグドッグに15馬力2ストローク単気筒のガソリンエンジンを搭載し、毎分9000回転で油圧駆動する動力を与えた。
想像して欲しい。毎分9000回転で回っている2ストエンジンがどんだけウルサイか!
まあ、こんな騒音源を連れて前線に行きたがる兵士なんてどこにもいやしない。
そこでボストン・ダイナミック社は、二代目となるスマートドッグに直接エタノール燃料電池と高効率モーターを与えて生まれ変わらせた。
なので、ゴンの燃料はエタノールである。無水エタノール4ℓで凡そ40時間稼働する。
インベントリから4ℓの無水エタノール携行缶を取り出して、ドラム缶を縦に切った様な蒲鉾ボディーの下部側面にある動力ユニットの燃料補給口からエタノールを補充した。
「キュ、キュピ〜」
どことなく、ゴンの声が満足そうに聞こえる。
「朝からアルコールとは、良いご身分なこって!」
「ピッ、ピー!」
「ふふふ、おはようございます!ダイチ様。ゴンちゃん。」
コロンは体を起こして、朝日に負けない笑顔で挨拶した。
「ま、まぶしい・・」「ピ、ピー」
天使の笑顔におっさんの脈が上がってしまったではないかっ!
「お、おはよう、コロン。どうだい、体の具合は?」
コロンは首を傾げて考えてから、答えた。
「はい、どこもおかしくありません。すごくスッキリしてます!」
「そっか、それは良かった。じゃ、朝ご飯にしよう。」
俺はゴンのコンテナを開けて、欲しいものをイメージした。
「お粥パックと水とバーナーとクックポットとシュラカップにスプーンと。」
お粥は美味しいと評判の〇の素の白がゆパックだ。コシヒカリ100%使用!(ゴンヱモンセレクト)
俺は取り出したバーナーにクックポットをセットして、その中にお粥パックをあけて温めた。
「コロンはまだ消化に良い食べ物しか食べられないから、お粥で我慢してくれ。それから、これを小まめに飲んで、水分を補給するんだよ。」
そう言って俺はポカリをインベントリから取り出して、キャップを開けてコロンに渡した。
「はい、ダイチ様。」
コロンは屈託のない笑顔を浮かべながら、ポカリのペットボトルを受け取った。
「まあ、甘くて美味しいの!私これ大好きです!」
「ピッ、ピッピ」
ゴンがコンテナを開けてもっと取れとインベントリをコロンに向けた。
「おい、ゴン!そんないっぺんには飲めんよ」
そう言って、俺はコンテナハッチを力を込めて閉じた。
バン!「ピー」
「ふふっ、仲が良いのね、ゴンちゃん。ふふふ」
コロンの鈴の様な笑い声が可愛らしい。元気が出て本当に良かった。
クックポットの粥を、更に水で薄くして飢餓患者にも優しいお粥を作った。
最後にちょっとお値段高めの藻塩で味を整えて、コロンと自分のシュラカップによそった。
「さあ、食べよう。」
コロンの様子を伺っていると、
「美味しい!久しぶりのお塩の味だけど・・・とっても優しい味!」
スプーンですくった薄粥を口に含んだロコンは、目を大きく開いて喜んでくれた。
どうやら気に入ってくれたようで何よりだ。
コロンに合わせて同じ薄粥を食べたが、なんか心がホカホカする味だった。こんなのも悪くないな。
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