第14話 なかま
本日2本目の投稿です。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「とうさまは
それなのに村長様の跡を継いだテルーさんが獣人は人間じゃない!穢らわしい生き物で、半モンスターだ!村に大きな災いを招く!って言い出して・・・」
コロンの表情は隠れて見えなかったが、感情を殺して語るコロンの気持ちが痛いほど伝わった。
「そしてついに去年の夏、テルーさんは村の若い男衆を唆して、村の獣人だった私たち母娘と、羊人族のホブラ小父さん一家をコサド村から追い出したんです・・・」
コロンは顔を俺から背けたまま、小さくすすり泣き始めた。
胸が締め付けられ、コロンの肩にそっと手を置いた。
「・・・かあさまは元々足が悪かったの・・・、村から追われた時、村の男衆が投げた礫から私を庇って・・・それで・・・ホブラ小父さんたちと一緒に・・・、でもかあさまは足手まといになるから、別れるって・・・わ–––ん、かあさま–––!」
辛い過去に耐えきれなくなって、コロンは俺の手にすがって泣き崩れた。
◆◆◆
『ホブラ、私はこれ以上貴方達に迷惑は掛けられないわ。だから、一人でここに残ります。でも、どうかどうかコロンの事お願い。一緒に連れて行って・・・』
『だめ!だめよ、コロン?あなたはホブラたちと一緒に街を目指すの。母さんは大丈夫だから。足の傷が癒えたら、すぐに後を追うから・・・』
『コロン。私の可愛い娘。あなたをひとりぼっちにしてしまう母さんを許してちょうだい。この森は人を寄せ付けない恐ろしい森。でもきっと精霊様があなたを守ってくれるわ・・。これ程精霊様に愛されているあなたなら・・・。
私のコロン。どうか幸せになってね。強く生きて・・・』
◆◆◆
どうやら村を追われる際、コロンの母親は以前から悪かった足を負傷して、歩くのが困難だったらしい。
そんなコロンの母親を羊人族のホブラが助けながら村から逃げたのだが、ホブラにも自分の妻と幼い子供がいる。
皆の負担である事を気に病んだコロンの母親が、ホブラ一家と途中で袂を分ち、コロンと母親だけがこの森の泉まで逃げて来たそうだ。
「そして・・そして、去年の冬の雪の朝、かあさまは二度と目を覚さなかったの・・・冷たくなって・・・だからコロンはかあさまと約束した・・の・・ひっぐ・・約束、したとおりに、つ、冷たい、穴を深く深く掘って・・ほって、かあさまをそこにうめたの・・・コロンひとりで。ああっ––かあさま、どうしてコロンを連れていってぐれなかっだのー!
かあさまとの、やぐぞぐっ、ひどりでも、づよぐいぎだよ–––がんばっだぁ!
でも、もうだめ––ひどりぼっぢはもういや–––うわあ––––!」
俺は細く小さなコロンの体を強く抱きしめた。
「大丈夫だ!俺がいる!俺とゴンがコロンのそばにずっとずっといる!だからコロンは決してひとりぼっちなんかじゃない!」
だが、コロンは俺の胸でイヤイヤしながら叫んだ。
「でもーでもでも、コロンは獣人!人間じゃない!穢れた・半分モンスター!・・・きっどきっど、ダイチざまも、不幸にする・・・ううっ・・ぅわああ––ん・・」
きっと心無い村人に浴びせられた言葉が、呪の様にコロンの心を蝕んでいたのだろう。
ありったけの思いを込めて、優しくコロンに語りかけた。
どうか、伝われ!俺の想い!
「コロン。それは違うよ。人間と獣人、何が違うって言うんだ?
人間だって黒い肌や黄色い肌の人間もいる。大きな人や小さな人。黒い髪や金色の髪、色んな人間がいるんだよ。
コロンの大きな耳と立派な尻尾だってそれといっしよ。君の素敵な個性なんだよ。
何より俺はそんなコロンがとーっても可愛いと思う!」
「・・・ほんと?」
コロンは俺の胸に顔を押し当てながら尋ねた。
「ああ、本当だとも!
それに、コロンの母様は自分の耳と尻尾のことを、人間と違っていて恥ずかしいとか残念だとか言ったことがあったかい?」
コロンは俺の胸で強く頭を横にふった。
「かあさまのお耳と尻尾はとってもおっきくて、とってもとーっても綺麗だったの!」
「コロンのお耳と尻尾もとーっても綺麗だよ!それは人間にはない魅力だ!君だけの魅力なんだよ。」
コロンは俺に強くしがみついてきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダイチしゃま・・・ダイチしゃま。コロンをダイチしゃまの群れに入れてくだしゃい。きっときっとお役に立ちましゅ・・・だから、おそばにいしゃせて!コロンをおいてかないでぇ––!コロンをひとりぼっちにしないで––––!!」
コロンは絞り出す様に俺の胸で叫んだ。
「もちろんだよ、コロン。君はもう俺の仲間だ!」
「う゛あ゛あ゛ーーー」
俺はコロンの頭を優しく撫で続けた。
そんな俺の目の前に、ステータスウィンドウが音もなく現れた。
【異世界人を仲間にしました。
レベルアップの条件が満たされました。
八神 大地はレベル4になりました。】
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