第3話 お約束の白い部屋はありませんでした
異世界編が始まります。
本日も2話投稿します。
20:00に投稿します。
お楽しみ頂けたら、嬉しいです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
“・・・ダイチ・・・目覚めなさ・・・・そし・・・・て・・・・・なさい・・・・・・・”
「ぷはっ!!」
大きく息を吸い込んで目を見開いた。
深い森の匂いが肺を満たした・・・?
ん?肺?
「ど、どこも損傷していない・・・な。む?」
全身を触ってみたが、ダメージは一切認められなかった。
「確か・・サーモバリック爆弾で俺は吹き飛ばされたはずじゃ・・・」
C国基地での出来事を思い返してみた。
「ん―?てか、ここは何処だ?なんで屋外の、しかも巨大樹の森の中なんだ??み、皆は、無事か??」
巨大樹の森には驚いたが隊員の姿を探していると、IVASゴーグルにスマートドッグの起動アイコンが表示された。
「よー、ゴン。無事だったか?」
背後で起動自己診断プロセスを完了させたスマートドッグが音もなく立ち上がった。
スマートドッグは米国ボストン・ダイナミック社が開発した歩兵随伴支援四足歩行AIボットである。
同社は2014年に先代のビッグドッグがアメリカ海兵隊にあと一歩で採用されるところまで開発が進んだのに、騒音問題の所為で海兵隊に採用されなかった。
スマートドッグはそのビッグドッグの正統なる後裔だ。
何よりスマートドッグは静かで賢い。
相棒のコールサインは「ゴン」。
子供の頃に飼っていた犬の名だ。
俺たちは皆パートナーであるスマートドッグにそれぞれコールサインを付けていた。
だが何故か我がケロベロス隊には「ハチ」や「タロー&ジロー」がたくさん生まれてしまった。昭和かよ・・。
でも「タマ」はいなかったな・・・。
そう言えば「パトラッシュ」てのもいたっけ。
そう名付けたマスターは絵画が趣味のいいヤツだったが、七ヶ月前の馬毛島上陸作戦で、「パトラッシュ」と共に天に召されてしまったな。
敵の榴弾砲で・・・。
「おっと、そんな事より状況を把握しないと!」
左腕のコントロールデバイスを操作して、ケロべロス小隊全員のバイタル情報をIVASゴーグルに表示させた。
俺たちは全員首にバイタルチョーカーを付けており、このチョーカーを通じて隊員個々の体温、血圧、心拍、呼吸、発汗状況をモニターしている。
「何――!俺以外のケルベロス隊全員のバイタルシグナルがロストだと!それに隊員に随伴している全スマートドッグのリンクも途絶えているなんて・・・・。」
スマートドッグは常に相互リンクして情報を共有している。更に友軍とは戦術データリンクを通して、高度にネットワーク化されており、それが今全て遮断されていた。
「・・・GPS信号や偵察・通信衛星まで途絶だと!まるで俺とゴンだけが別の惑星に転移されられたみたいじゃないか!」
俺は腕を組んであり得ない可能性を吟味した。
「話に聞く”異世界転生”って、真っ白な部屋で神様からチート能力を授かるもんじゃないのか?
俺のチート能力はどこ行った!!」
異世界転生の可能性!それ自体は悪くない。いやむしろバッチコイである。
しかしお約束の神様チートイベントがないなんて・・・あんまりだっ!
「この怒りの矛先をどうするかは置いておくとして、先ずは兵士として生き残る事を考えねば。」
この見知らぬ世界で生き残るために一番重要なのが”物資”である。
まずそれを確認しなければ!
「てな訳で、ゴン!コンテナハッチ、オープン!」
ゴンは音声コマンドを受けると、俺の左に座り込んで、チタン合金製の蒲鉾型上部構造体のハッチを開いた。
だが・・・そこにあったのは、何もない真っ黒な空間だけだった・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
□ビッグドッグ
だいぶ前に見たこの動画が、この物語のきっかけとなりました。
きっかけの動画:
https://www.google.com/search?q=%E7%B1%B3%E6%B5%B7%E5%85%B5%E9%9A%8A+%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%B0&rlz=1CDGOYI_enJP999JP999&hl=ja&prmd=inv&sxsrf=ALiCzsYFFBMzd62cgIG0aTMEi98m_ccD4g:1664624949428&source=lnms&tbm=vid&sa=X&ved=2ahUKEwjRyq2W-776AhVll1YBHTPMBewQ_AUoA3oECAIQAw&biw=428&bih=739&dpr=3#fpstate=ive&vld=cid:870b3c90,vid:Nm24jYLQNOI,st:0
うん、うるさいよね・・・
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