第175話 優越に浸る男(気持ち悪)

「このモブが僕よりも強い?」


「そうだ、名前はエイトだ」


エイトとカイトの実力はエイトの方が強い

それは約3年前の戦いで明白になった事だ

しかし、それを認められないカイトはワナワナと震えだし、エイトを指差す。


「ふざけるな!こんなモブよりも弱いだと!僕は勇者だぞ!」


「だが、負けたのは事実だろう?」


その言葉を言われてカイトは「ぐっ」とグゥーの音も出ない状態になった

しかし、それをよく思わないサユリ達は国王に抗議する。


「カイトお兄ちゃんは負けてません!」


「そうです!あの試合はカイトくんの勝ちです!」


「あんな不正行為を認めるわけにはいきません!」


カイトを擁護するアイ達は必死に弁明する、その姿にカイトは喜ぶが、国王は冷ややかな目で見つめ続ける。


「勇者ともあろう者が、たかだかその程度の事で負けたのか?」


「え?」


「同じ事を何度も言わせるな、お前のその文句もターピーから聞いている。」


「何!?」


そこでやっとカイトはミュウとエイト以外の人物達がいることに気づく。


「全く、君達の目は何のためにあるのですか?」


「なんだと!?」


「国王陛下の御前でよくそんな事ができますね、むしろ尊敬しますよ。」


最初に学園長、次にカイトはシルフィを見る、そしてその隣にアリアンがいる事に気がつき、ニヤつく

カイトは国王に目線を戻して勝手に話し始める。


「国王陛下、だったらこうしましょう?」


「…何だ?」


「僕とモブ、どちらが先に厄災を殺せるか勝負しましょう。」


(…成る程、そっちの方が都合がいいな)


エイト自身そちらの方が、色々な意味で都合が良いので、ここはカイトに任せる。


勝負?と不思議に思う国王だが、カイトが自信満々に答える。


「ミュウの母と約束しました、モブよりも先に厄災を殺せば、ミュウと結婚する事を認めてくれると。」


「な!?」


カイトの言葉にミュウは驚く、無理もない、自分の母親があり得ない事を言っていたのだから。


「元々婚約事態は決定事項だが、そこのモブが馬鹿にもこの勇者である僕よりも先に厄災を殺したらミュウと結婚すると言う馬鹿な約束をしたからな、勝負って言うわけだ。」


(成る程、奥様はその様な事を)


「聞いてないわよ!それ!」


国王の前だが、関係ない、いきなりそんな事を言われたら誰だって反応するはずだ。

シルフィは心の中で収まったが、ミュウはそうもいかなかった。


「へぇ、つまり僕と結婚出来るって言う喜びを隠す為に、黙ってたんだな。」


「今は洗脳されているけど、」


「でも、あのモブが死ねば、」


「全て解決だね!」


国王の前だと言うのに、英雄であるエイトを殺害すると予告するカイトと馬鹿3人、当然それは許されることではない。


「国王陛下が直々に頼んだ相手を君達の身勝手で殺害する事は出来ませんよ?」


「そもそも、お前達じゃエイトは殺せないよ。」


正論だ、あれから3年、エイト達は更に強くなった、厄災にまだ勝てない段階にしろ、既に人間レベルはとうに超えているのだ。

学園長とアリアンがそう言ってもカイトは鼻で笑う。


「はぁ?不正行為をしてやっと勝てた塵に僕が負けるとでもぉ?」


(学習能力0かよ、同じ事を何回言うんだよ…)


エイトは心の中でうんざりした、

しかも同じ事を何回も言い返されているのにこの言いようだ、本当に救いようがない


エイト達が呆れ過ぎて、国王陛下の前だと言うのも忘れて、手を顔に当てて、おもいっきりため息をこぼす。


国王ももう何も言う事がなくなったのか、それとも言う気力を奪われたのかはわからないが、こほんと咳を出してカイト達を黙らし、話を終わらせる。


「兎に角、君達には協力をするかしないかは知らんが、厄災を倒してきてほしい、そして倒した者にはそれ相応の褒美をやる、勿論結婚の件もだ、それで良いな?」


「ああ、いいですよ。」


「はい、態々ありがとうございます、国王陛下。」


エイトとカイトはそう言うと国王は頷き、彼らを下がらせた。

彼らが全員いなくなった後、国王はため息をこぼし、身震いをする


「全く、たかだかこの話をする為にこんなにも時間がかかるとは…」


そう言って先程の光景を思い出す

そこには1人恐ろしい者がいた。


「私の妻にそっくりだ…」


自分の好きな人を蔑ろにした者達に向けるあの殺意、ミュウがカイト達に向けた憎悪は、国王陛下の妻と同じオーラを感じたのだ。


「…………あの男も苦労するな」


そう言って、いつもの業務に戻る。


——————————————————————

国王の妻の性格は、お察しの通りです…。





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