第80話 嵐の前の静けさ

「…なぁ本当に良いのか?」


「…?何がだ?」


馬車に揺られながら、アリアンはエイト達に声をかける


「いや、まだ授業もあるのに帰っちゃうなんて…」


「寧ろ戻ってしまったらそれこそ大変ですよ?」


「いや…まぁ…それはそうなんだけど…」


教室に戻った所で、カイト達の難癖と

ハーレム集団達の嫌がらせが待ち受けいるに決まっている


そんな所に行くくらいなら授業を1日サボる方がいい、勉強の方は…まぁ何とかなる…筈…多分


「…私は別に良かったけど?」


「それは何で?」


「だってエイトを虐める人達を皆んな殺「駄目だからね?」…別に気にしないのに。」


「私はね、エイトさえいればいいの、アリアンもシルフィも大切だけど、エイトが1番なの、だからエイトがいない世界なんていらない、エイトを否定する人なんて、いなくなればいいの。」


そう瞳を真っ黒に染めながら

隣にいるエイトの腕に抱きつく

エイトの前に座っているシルフィは

血眼になって見つめている


(…修羅場?)


(いや、助けろよ)


(あたいが魔王と剣姫に勝てるとでも?)


(…無理だな)


アリアンとエイトは目で言葉を交わすのも(嫌だけど)慣れてしまった、そうしなければミュウが更に暴走するからだ


「エイトの匂い…好き。」


「…普通は嬉しいんだけどな。」


勿論、今も十分嬉しいのだが、目の前のシルフィが目から血を流しながらこちらを見つめるので、素直に喜べない


「しかし、明日からどう致しましょうか?」


シルフィの言葉に一同は少し真面目になる

彼女が言った通り、今日は逃げる事で事なきを得たが、明日からはそうはいかない


学業のこともあるし、ずっと休むわけにはいかない、そう考えると本当に面倒くさい


「そうだなぁ…ずっと引きこもっていたいけど、父さん達に迷惑がかかるしなぁ。」


「そっか…学費もあるもんね。」


「あたい達はあるのか?」


「一定額は免除されてますよ?一応私達は他国から来たと言うのもありますので。」


貴族と平民で払う金額は大きく変わる

(日本で例えるなら平民が月5万として貴族は月50万)

それに伴っての待遇も変わる


食事や寮などの部屋の設備等が良い例だ

金額が違うのに使う物は同じというのは

流石にまずいのでこうなっている


「俺にメグミにアイ、俺たち3人を学園に行かせる為に高い金を払って行かせてくれているんだ、流石に酷い事は出来ないよ。」


そのせいで親達は共働きでまともに家にも帰ってこれないのだ、それを踏み躙る事は出来ない


「エイト…だったら私達が代わりに払うよ?」


「それはありがたい言葉だけど、お断りするよ。」


ミュウ「そう…残念。」


心底悲しそうにエイトを見つめるミュウ

その頭を撫でてあげると

みゅと可愛らしい声をあげて、気持ち良さそうに撫でられている


「では、明日は学園に行くっという事でよろしいですか?」


「あたいはまた引きこもりたいけど、お前達が行くと罪悪感がハンパないから行く。」


「決まりだな。」


エイトが言うと同時に馬車も止まる

どうやら無事に着いた様だ


(平民の俺が貴族やそのメイドと対等に話せる時点で既に可笑しな話だよな。)


「?」


「何でもないよ、ほら降りて降りて。」


そんな事を思いつつも、それを平気で受け入れてくれている彼女達に感謝してエイトは新しい家に向かう


「………話すなら今しかない…か。」


——————————————————————

完治とまでいきませんが、ほとんど良くなりました。

心配してくださった皆様、本当にありがとうございます。

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