第48話 最悪の展開

「お前…シルフィを…いや…有田をどうした?」


ミュウがシルフィの方へ向かうのを抑えながら質問する


数十分前瑛人はシルフィは有田の手の中にいたのを覚えている、つまり海斗が今、シルフィを持っているとなると何かしらの被害に遭われた筈だ


「ん?、これを見てもわからないの?」


「…ひっ!?」


シルフィしか見ていなかった為気づかなかったが、海斗が握っている包丁には固まった血痕がついていた


シルフィに怪我がないとすると…有田のものだろう


「因果応報さ、僕の携帯を壊したんだ、死んで詫びるのが当然だろ?」


そう言ってニコニコ笑う姿はメンヘラ男とはかけ離れた、サイコパスに近い姿だった


「…お前…人を殺したのか?…人を…?」


瑛人やミュウも

殺したい、死んで欲しい、存在する価値のない者などを見てきた

ゲームの世界でもそうだし現実世界でもそうだった、しかしそんな事はしなかった

すれば警察に捕まり、自分達の人生はそこで終わってしまうからだ


「人間?あれは生きる価値のないゴミだよ?死んでも誰も悲しまないよ?」


しかし海斗はまるで小学校低学年が考えそうな言い訳をしながら平然と殺した、まさに狂気の沙汰だ


(逃げたら駄目だ、逃げたら俺達も、シルフィも………命はない)


こんな時に限って人が通らない、もし誰か1人でもいれば警察に電話して助けを求めることができるが、最悪な事に今いるのはこの3人だけだ


(落ち着け…こんな時は素数を数えよう…1…3…5…7…9…11..)


パニック状態になる頭を必死で抑えて、ミュウとシルフィを助ける方法を考える


「…何が目的だ…?なんでそこまでする…?」


(21…23…25..違う!25は5でも割れる…2…31…)


心臓の鼓動がバクバクで今にも弾けそうだが、目の前の男に気を許してはいけない為、必死で冷静に見せる


「簡単だよ?この生塵(シルフィ)をあげるから、ミュウちゃんを返して?」


「…は?」


「なんだと…?」


やっぱり彼は未だに自分がミュウの彼氏だと思い込んでいるらしい、そしてこの光景が本当に許せないらしい


「ミュウちゃんもさぁ?いい加減素直になって僕の所へ来てよ?そしたら毎晩気持ちよくしてあげるからさぁ?」


そう言ってミュウの胸と局部を凝視する

その性欲の目がとても気持ち悪く、絶対に渡したくなかった


しかしその場合だとせっかく見つかったシルフィの命が危ない

瑛人は必死に頭を動かすが、解決策が何一つ浮かばなかった


「………ぃゃ…ぃゃぁ…」


シルフィを助けたい

包丁が怖い

海斗が気持ち悪い


複雑な感情が混ざり合い、ミュウは涙を流し、震えながら瑛人に助けを求める


その姿を見て瑛人は叫ぶ


「いい加減にしてくれよ!なんでそこまで自己中なんだ!!ミュウの彼氏は俺だ!誰にも渡さない!」


それが最悪の引き金になると分かっていながら…それでも溜まりに溜まったストレスを止めることが出来ず、叫び散らす


「シルフィは俺達の家族だ!お前の様な屑が触っていい動物じゃない!」


ミュウが驚いて見てしまうほどの声を荒げながら、瑛人は叫んだ

これがもしドラマならかっこいい展開に繋がるだろうが


「……ふーん、そっか。」


これは現実、悪が勝ち続ける最低な現実だ


「んじゃ、死ね。」


そう言うと海斗はシルフィを道路に投げる


「ピャァァァァァァァァァ!?」


「シルフィ!!!!!???」ダッ


瑛人はシルフィを助ける為道路に飛び出す、地面に叩きつけられる前に捕まえて胸の中に抱き、急いでもど


「瑛人!シルフィ!危ない!!!!」


「!?…しま…」


猛スピードで走るトラックの運転手は瑛人達がいるのを理解しながら…


シルフィ諸共(もろとも)轢(ひ)き殺した


ドグシャと鈍い音をたてながら瑛人は吹き飛び、トラックはそのまま通り過ぎた


「危ねぇよクソガキw、死んで詫びろwww」


そう言って轢(ひ)いた男は酒を飲みながら、通り過ぎる


そして道路には血の海が出来上がった


——————————————————————

続く

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