第38話 辛い日々

~1週間後~


雨の日、人々は皆傘を差し道を歩く、そんな人達はとある女性を見ながら何事もなかったかのように歩く


長い髪の毛は全て濡れて、前髪の所為で顔は覆われて何処かのホラゲーのキャラクターを想像させる


「風邪ひくぞ?…傘くらい差してから行けよな」


「…瑛人」


「…ミュウ……そんな姿、シルフィに見せられないだろ?」


そう言うと瑛人は用意したタオルでミュウの頭を拭く

ミュウはそのまま瑛人にもたれ掛かる


普通なら濡れるので嫌がるのだが、瑛人は気にせず拭き続ける


「……シルフィ…何処にいるのかなぁ…」


「そうだなぁ、きっと蝶でも追っかけて迷子になってんだよ。」


瑛人は憔悴(しょうすい)しているミュウを優しくなだめる

瑛人もミュウもまだシルフィが死んでいない事を信じて、必死になって探している


自分達の好きなゲームもやらない程に

睡眠時間も平均で2時間も満たない程に


2人のまぶたには酷い隈が出来ており、本当に寝ていない事が容易に想像出来る


それ程までにシルフィと言う存在は2人にとって大きいと言う事だ、そして今もフラフラになりながらも探している


「さ、俺の傘の中に入って…探すんだろ?」


「…瑛人は休んでて良いんだよ?もう限界でしょ?」


「お前こそ休んどけ、可愛い顔が酷くなってるぞ?」


2人とも互いに互いを心配しているが、どちらも探すの諦める事はしないらしい


「…意地を張るのもここら辺にして休もう、もう限界が来てるよ。」


「…うん…視界が少しぼやけて見えてきた。」


しかし、これ以上身体を動かせば2人はもう動けなくなると確信した2人は今日は中断し

身体を休めることにした


「…ほら、もっと近づいて…歩けないだろ?」


「…うん、離れないでね…足が…」


ミュウは既に足取りが悪く、フラフラと進み途中転びそうになりながらも瑛人の支えによってなんとか自宅までたどり着いた


「…お願い…一緒に寝て…1人は…嫌なの…」


「わかった…でも先に風呂入れるぞ?」


ミュウの身体も瑛人も濡れており、このままだと風邪を引く可能性が高い

しかも2人とも身体を休めると思った瞬間から身体中の緊張がとけ、文字通りの限界が近づいてきた


「風呂は1人で…は無理か…」


「久しぶりに瑛人とお風呂入る…」


幼き頃に一緒に入ったきりで、こう言った事がなければ一緒に入る事はなかっただろう


服を脱がし、シャワーで身体を洗い、湯船に浸かる、この単純な作業が疲弊しきっている2人にとっては中々過酷だった


所々記憶が曖昧で、気がつけば2人はミュウのベットの中にいた


瑛人自身も自分の部屋に戻ろうと身体を動かしたが、金縛りにあったかのように身体が動かず、次第にまぶたが重くなり、深い夢の中に入る


この1週間、瑛人はネット住民達に画像を渡してシルフィの捜索を依頼しながら、地道に歩いて回っていた


ミュウももしかしたらといつもの餌を持ちながら橋の下に行き、酷く悲しみながら川上、川下を血眼になって探した


それでも…あの仔猫は…シルフィは見つからなかった。


明日もまた探そう、もしかしたら

また会えるかもしれない


ほんの僅かな可能性に賭けて、2人は涙を零しながら、眠る


____________________________________


だが、そんな2人の姿に嫌気が差している者もいる、そう全ての元凶海斗である




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