新しい日常

莟紅梅

…あれ?



私の朝は遅い。学校の裏門の正面に住んでいるからか、寝坊をしがちだ。最近はいつもに増してギリギリに起きてしまう。暖かい布団からモソモソと出て行って、勉強机の椅子に座る。と言っても別に勉強するわけではない。勉強机の上に置かれているノートパソコンが目当てだ。ノートパソコンなどの画面はブルーライトという光が出される。この光は科学的に目を覚ますという光らしい。携帯電話を貰ったばかりの頃、親に内緒に薄暗い部屋の中で動画サイトを深夜まで見ていたことがある。その後時間が遅くなって眠ろうとしたら中々寝付けなかった事からこの事は本当だと信じている。ノートパソコンをつけて最初にツイッターを見る。まだ眠い目を開けて見てみると色とりどりなイラストレーターの美術品が載っている。他にも神秘的な写真や、猫の爆笑動画も。タッチパッドを指でスライドしてゆっくりと観ていく。あ、この絵の色使い綺麗だな。お、ゲームキャラのキーホルダーキャンペーンやってる、とか。

「あ、もう8時だ!」

母の声が聞こえる。知らない間に時間は10分も立っていたようだ。了承の返事をして、急いで着替える。母は私が制服が寒いといったからか似たようなデザインの長袖のYシャツを買ってくれた。本来ならネクタイも付けないといけないのだが、どうせベストとジャケットは脱がないから大丈夫という小さな校則違反をしている。

着替えたら、PCを鞄の中に入れて階段を上がる。

「おはよー」

「あらおはよう。」

緩い声で言うとテーブルの方から母が紅茶を飲みながら挨拶を返した。飼っているモルモットがゲージをがんがんして食べ物を出張する。下からはそのような音は聞こえなかったから今さっき起きたのだろう。母のお気に入りはルイボスティーという物に牛乳をたっぷり入れたものだ。私は麦茶とレモンティー以外好まないから飲んだ事はない。引き出しからフォークを取って自分の席に座る。休日なら妹のみみことすずもいるのだが、彼女達の朝は早い。ここから40分する国際学校に通っていて、7:30分にはバスの中にいるのだ。私の通っていた頃は近くの高校の生徒たちもそのバスを使っていて、凄く迷惑だった事を覚えている。うるさく、足を席にかけたりと、耳障りだった事をよく覚えている。今はどうなっているかは分からないが。

あまり食欲がなかったことから、まな板においてあった食パンをむしゃむしゃと嚙んでまた下の階へと下がる。歯磨きの時間だ。ウォーターフロスという矯正をしている人達が歯の間に挟まっているものをとるために使う道具を手に取る。母はノーマルモードで使っているらしいが、私は変な所で臆病だからソフトモードにしている。ウォーターフロスをオンにすると同時に冷たい水が歯にあたり、しみる。そして、どんどん矯正の間に挟まった食べかすが落ちるのを見る。それが酷く快楽的で、浄化されるような、脱皮しているような気分になる。全て終了した後に、ぐちゅぐちゅぺを行ってから遅刻ギリギリの時間で重いバックを持って家を出る。

車が行きゆきする道路を時を見計らって走って渡る。そこから階段を上がるともう既に学校につく。時計を確認すると、あと数分で鐘がなる。少し走って学校に入る。ワイワイと騒がしい学校。この学校は私の通っている学校だ。



今日は雨が降っている。急いで一限目の国語の授業に向かう。裏門から近いので少し遅刻気味な私にも優しい場所だ。廊下につくと、不良達が相変わらずうるさく立っている。イラつきながらも他の生徒たちと共に教室の中に入る。国語の教室は最近丸いテーブルに変えていることから不便に思いながらも自身の窓際席に座る。隣は中一のころから同じクラスのソフィーの隣だ。彼女はイランから来た子で、私のくるくるカールと似ているもじゃもじゃカールの持ち主だ。相変わらず優しい人だが、最近は凄く落ち込んでいる様子。なんとかしてあげたいけど。近頃ロックなバックを持っていて、穴の開いたジーンズのようなバックで投稿してきていた。彼女に似合っていると伝えてから席にすわり先生の話を聞く。返答はなぜかなかった。先生がはんしているからかな。

「ではシェイクスピアのマクベスの分析を始めるよ。」

英語で先生が言い放つ。私はノートとノートパソコンを取り出して、ノートパソコンがロードしている間にお絵かきを始める。好きなアニメのキャラクターや、通っているアニメ部のためのお絵かきとかをする。ノートは無論、イラストだらけだ。でも、まだまだ未熟でいっぱい練習している。顔を上げるとノートパソコンがロードしたようでパスワードを入力し、グーグルクラスルームを開く。国語ではあまりノートパソコンを使わないので下のほうにあるクラスルームをクリックする。そこから先生が今朝上げたドキュメントを開き、作業を始める。マクベス夫人は、王様を殺すために何を使っただろうか。か、の、じょ、は…とキーボードをうつ。夫人は野心の為に狂い、夫の漢を馬鹿にする事で夫を殺しに向かせた。一通り書き終わるとタブを変えて漫画サイトに入る。仕事がおわったからいいじゃないか、と思いながら日本語の漫画をスクロールする。私だけの暗号文を読み、先生がクラスに呼びかける。返事をして、次の作業に行き、終わったら漫画を読むの繰り返しを続けているうちに授業は終わりをつげた。

のそのそと次の教室へ向かう。昨夜は少し夜更かしをしてしまって、まだすこし疲労感があるのだ。次は理科だ。これは最近テストをやったから気を休めても大丈夫だ。教室に入って、適当に授業を受けたので、覚えていない。

中休みが来る!体力が回復した私は重いバックを持って中央広場に向かう。友達たちはまだついていなく、先に日当たりのいい席に座る。ここ最近は高校一年生達に席を取られる上に食べ物をこぼすのでけがされる前に急いで机の上に座る。貴方の読み間違いではなく、机の上に座った。席はガムなどがついている事からあまり座りたくないのだ。

「でさ、椅子に…」

遠くからジゼルの声が聞こえる。煎餅から顔を上げると、確かにジゼルがそこにニキイタとアデリンと共に歩いてきた。隣に座ってきた。彼女はいつもグミを持って来ている。たまに分けてもらえる。美味しい。携帯の遊戯に夢中になっていると何時の間にか鐘が鳴っていて次の授業に向かい始めたのであった。技術は私の好きな授業のひとつだ。

次は技術の授業だ。今学期はナイトライトを作ることになっており、二階にある教室でギコギコと鋸を使う。木の細かい誇りから少しむずくなっている事を無視しながら部屋に入りエプロン、自身の無完成なな作品と鋸を取る。作業しながら聞耳を立てると日本製の鋸が生徒や先生に評判だと知った時に、すごくうれしかった。私は日本の血が流れていることをすごく誇りに思っている。じいじとばあばから日本の食べ物詰め合わせが送られてくる時は大喜びだ。その際には漫画なども送ってくれるのだが、ここでは一冊17$する(約1700円)するのでこれもまた大喜びというものだった。パタッという音と共に切ろうとしていた木辺が床に落ちる。拾い上げては先生の次の指示を待つ。でも先生から来た指示は掃除と片付けだった。

久しぶりに自然の空気を吸う。やはり技術部屋は埃っぽい。今から保健の授業に向かう。先生はピーウィー二という名前で、人気のある先生だ。教室に入ると、机をどかせるように指示される。皆丸になって座る。

「じゃあ自分について面白い所を紙に書いてね。」

紙に個人情報を書いて提出したら先生が読み上げて誰か当てるゲームのようだ。

「骨を幼少期のころからおっていた…ウィルか。」

「いやアンドリューだろ!」

「ア〜ンドリュー!ア~ンドリュー!!」

「ちゃうわ!」

「二つの言語が話せる…」

「ショーンだ!」

「あ!俺だよ!正解!」

「しらん。って書いてある。ちゃんと書けよ」

「あ、それうち~!」

「こら。ちゃんと書けよ~!」

賑やかな時間が過ぎてゆく。一人の生徒が携帯を見ていると、もうすぐ鐘が鳴る事に気づいたようで鞄を背負う。その子を見て、時計を見てワクワクしながら鞄をクラスメイト達が背負ってくる。

「校長先生がお前らを授業早めに出すのやめてって言ってたんだ、今日は鐘が鳴るまで出せないからな」

「けち!」

「校長先生ここ見えてないし!」

生徒達の言葉で先生はかんがえる。そこで閃いた顔をしてこう言う。

「今日、校長先生出張だ!内緒だぞ!」

「は~い!」

先生は生徒たちを送り出す。と言っても歩く速度の遅い私が教室から出るころには鐘が鳴り始めていたが。

今日は友達と音楽室に集合だ。演劇の課題と音楽の課題が似ていて、貸出中の音楽室で練習をする。

「『はっははは!お前らみたいな悪魔的な宇宙人机はボコボコしてやる!』」

「『まだやられんぞ!どうだ、悪魔的宇宙人机ビーム!』」

「『くっ、だが負けないよ!』」

どうすればこんなストーリーが思いつくのだろう。班の人数が足りないから敵役を椅子にするなんて…。鍵盤に手を置き、練習していたコフィンダンスの歌を弾こうとするが鍵盤は反応しない。きっと壊れているのだろう。なら弁当を、とおもったがここ最近全然食欲がないし、私は胃が弱いのかすぐ腹痛になる。静かに友達を応援して昼休みを終える。

最後の授業は待ちに待った図工だ。今はグアッシュという特製絵の具でハイブリッドの絵を描いている。私は白虎、カメレオン、コカトゥのクロスだ。でも置いてあった場所に私の絵はない。一応まだ未完成の私の絵はスレイター先生の机に置いてあった。なにかに使ったのかな、と思いながらサインを入れて、虎の瞳を青く塗る。完成だ、課題は終了!先生の机に戻すと同時に先生が倉庫から絵の具の補充を持ってきたようだった。私の絵をみて、苦虫を嚙み潰したような顔をしてから絵の具をおく。駄目だったのかな、と思い先生に寄っていくと彼女は絵を取って壁に張った。

「本当によく書けてる…。完成させられなかったのが残念ね。」

今さっき完成させたのに…。そう思いながら近寄ってみてみると瞳はまだ白かった。サインも書いてない。先生のことを困惑の表情で見つめたら先生は私に向き直った。

「何処をやる?」

先生は絵具をもって私に聞く。青の絵の具とその白い瞳を指さすと綺麗な手つきで塗ってくれた。今回は落ちてないようで、ちゃんと色がついている。

そして、先生は私に手招きする。素直についていく。来たのは陶芸倉庫だった。

「つぼみちゃん…」

悲しみの籠った声色で囁かれる。

「おねがい、もう貴方のこんな姿はみたくないの。」


なんのことだ


「つぼみちゃん。貴方、死んじゃったのよ!」



は…?


「生きていますよ、どうしたんですか急に…あれ?」

先生を安心させようと触ってみたら通り抜けた。

「先生は特異体質みたいなものだから…」

塊になって話す先生はいつものはきはきとした声と違う。

「だから貴方のことが見えるけど…。ねえ、覚えている…?雨が降っていたのに傘を忘れてしまった日。」

ああ、そういえば。そこで思い出す。人間の叫び声、強い風。

「私、車に…」

「思い出した?」


風の強い日だった。雨ももちろん強くて、傘を忘れた私には困難だった。遠くに住んでいたり、雨だから親が車で迎えに来る子がおおい。そこで一つブレーキの利かなかった車があって、道路を渡っていた私に…。


「今ではそこに横断歩道ができているでしょう、あまりにもそこで渡る人が多いのだから。」

先生が話していると確かに、て思った。食欲がなくなった次の日に道路には横断歩道ができており、皆が憐れみの顔を持っていた。


そういえば、と思い出す。誰も、私に答えてくれなかった。母は、私ではなくモルモットに挨拶をして、友達が隣に座ったのも偶然。鍵盤が反応しないのも体がないから。私の絵が完成させられなかったのもきっと最初から絵の具などを持てなかったからだ。

鞄は死んだ時に持っていたから使えるのだろう。糞重いのは変わらない。

「成仏して…。」

泣きそうな声で先生が私をみる。

「先生、悪いんですけど、私やり残したことがあるので!」

「え?」

先生は驚きすぎて涙も止まったようだ。

「いつかちゃんねるのオカルトスレで【車にひかれて】どうも、幽霊です【死んだ人だよ】って名前でスレをしたかったんです!」

「ちゃんと考えなさいよっ!触れないんだよ!?」


先生の怒号が部屋に響いた。



確かにそうだ。目的を変えよう。


「ならチクります!」

「付きまとわないで!チクるのはいいけど!」





そこからは自覚した毎日が始まった。きっと普通はショックになると思っていただろう。二次創作小説の読みすぎだな。よく分からないけど、先生から見た私は浮いているようだ。悪事をする生徒を先生にチクり、成り立っていた生活。でもそこから良からぬ噂が現れた。

『悪事をしたりふざけたりすると亡霊にチクられる。』

この学校にもう一人、見える人がいるのかもしれない。丁度全校集会の日が迫っている。色んな人の前で変顔をして反応するかどうかという作戦を思いついていた。先生のクラスは大体全員実行したけど、全員をやるにはまだまだ足りない。図工が好きじゃない人もいるからね。そこで全校集会でヘンテコダンスをして、少しでも反応のあった人に変顔をすることにしたのだ。

「らぁ~ららら~!」

先生は少しくすくすしている。歌いながら踊っているのだもの。そこで目を見張る一人、いや五人が微笑んでいる。位置を覚えてから一人ずつ飛んでみる。一人目と二人目は隣同士だった。ただの恋バナで盛り上がっていたみたい。三人目は携帯で人気動画投稿者をみており、ついでにチクりにいった。名前はジェイミーらしい。同じクラスだったんだがあまりにも不良品だったせいで底辺に落とされていたそうな。次に四人目。彼女はなんとソフィーだった。私が飛んできたのに明らかに反応していた。

「ソフィー!つぼみだよ!」

「…ひぃ……」

真面目だから幻覚をみているとでも思っているのだろう。

「死んじゃったけどまだ友達だし!」

「え…つぼみちゃん…?」

「そう!つぼみちゃん!」

呆然と見つめるソフィーはまるでこの事態が信じられないみたいだ。私も貴方が突然亡霊としてきたらこんな顔するわな。にっこりと微笑んで彼女を抱きしめる。いつもぎゅっと抱きしめるのが私だ。その度に少し強めにぎゅって抱き返すのがソフィーだ。今回もそう。全校集会の真っ最中でも私達はハグした。

後日、ソフィーに説明した。

「特異体質?」

「うん!そうだよ!先生も私のことが見えるのだ!」

腰に手を当ててニコニコする。先生も微笑みながら続ける。

「私も最初は幻覚をみているのか、病院に行こうかと迷っていたわ。」

「そう、私だけが異常じゃなかったのね。」

ソフィーはあからさまに安心した顔をした。

「これからつきまとってあげるから!」

「え」

ソフィーは混乱して、私は微笑み、先生は溜息をついたのであった。




※なんとこれは中学生時代の妄想です。死んじゃうって所まで本当だよ。何処に住んでいたか当ててみてね。生きてますよ、ほんとn





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