試食と食品アレルギーとか


私がまだ販売業をしていた頃。

(※こちらは、コロナ禍以前の話です)

私の勤めていた店舗は、複数のお店が連なっている所だったのですが、店員さんの間でも有名なお客様がおりました。

その人はいつも同じルートでお店を回っている方です。ですが見ていくだけで、お買い物はせずに帰っていきます。

誤解のないように言いますが、そのようなお客様は割といらっしゃいます。お客様は様々な用事で来店されますし、何なら私も夏の暑い日は買い物ではなく涼しい場所を求めて、ショッピングモールや複合スーパーへ行くこともあります。

ええまあ、懐事情もありますし多少は、ね?


ただ…その女性が有名だったのは、ありったけの試食を掻っ攫っていく試食ハンターだったのです。

毎回涼しい顔をして、何処かのお店の試食をもぐもぐしながら帰っていくのでした。

和菓子コーナーのお煎餅を二つ摘んで、その足でどら焼のカットの刺さった楊枝を2つ3つ手に取り、もぐもぐと味わってから、今度は洋菓子のチョコレートを摘み……プリンを流し込み、お惣菜屋の唐揚げ、焼き鳥、フライ……等など。

その人の礼儀正しい所(?)は、毎回立ち止まって味わってから次の試食に行く所ですかね。

……悪いとは言いません、ええ。

もしかしたら(先程の話ではありませんが)懐事情が良くなかったのかもしれませんし、その時たまたま空腹で倒れそうだったのかもしれません。

ましてや、「一人一個ずつです」とはどこにも書いてありませんからね。


ただですね。

試食は…そのメーカー様が、商品の味を知ってもらうという目的で用意している訳なのですね。例えその時に買われなくても、一人でも多くの人に商品の良さを伝えたいのですよね、こっちは!

食べるなら商品を買ってくれとは言わないし、ましてや押し付けがましい売り方はしたくありません。

けれど、一応店内にはお子さんもいらっしゃるので、両手にごっそり持ってくのは止めて貰えませんかね…という気持ちなのです。

……まあその、試食を余らせて捨ててしまうくらいなら、食べたい人が食べた方がいいんですがね。


とか思ってるのを隠しつつ毎回「いらっしゃいませ」とお声掛けするんですけどね。

ちなみに。コロナ禍になり試食全般をやらなくなってからは、その女性はめっきりお店に寄り付かなくなりました。やはり試食を目当てに来店をしていたのかもしれない……?

それはそれでコロナ禍の間、何を食って生きていたのでしょうかね、あのお客様…。



さてさて。

新型コロナが5類になってから暫く経ちまして、にわかに試食コーナーが復活してきていますよね。

皆さんは試食コーナーで、試食を食べた事はありますか?

私は子供の頃に、お惣菜の唐揚げを喜んで貰いにいった記憶がありますが、母親にいい顔をされなかった記憶があります。

なんでかって、試食を食べたらお店の人に悪いし「何かしら買わないといけない」と母親が考えていたからですね。

実際に私も、大人になって販売業をやるまではそう考えていました。

何となく……買わずにスルーは良くないと思い込んでいたところがあって。

多分、こう考えている人は多いかもしれません。


お客様に試食をオススメしようとすると「大丈夫よ、見ているだけだから」

とやんわり断られる事もありますし。

ですので、こちらは「いえいえ。こちらはお味のご紹介です。知っていただければ十分ですよ」とよく返してました。

これ、ただの詭弁や方便だと思われがちなのですが、(少なくとも私の勤めていた会社の方針として)本心からの言葉なのですよね。

勿論、その商品を気に入ってくださり買ってくれたら僥倖ぎょうこうですし、嬉しいんですがね。

(他の企業やメーカーの方針は、違うかもしれませんが)私の務めていたメーカーさんの方針……上司の方々が言うには、「あくまでも試食はお味の紹介。今すぐに繋がらなくても次回来店された時に、うちの商品を買ってもらえたらそれでいいんだよ」

と言ってまして。

……なので、アレルギーや好き嫌い等がなければ遠慮をなさらずに食べて頂きたいです!


後もう一つ。これは結構認識されてないのですけども……

昨今のアレルギー問題、最近は様々な要因で起こると認識されていますよね。

親子連れで来店されるお客様の中には、試食を食べたそうにしていたお子さんに、親御さんが「一人で貰って来なさい」って言うんですよね。

こちら側としては、小さなお子さんに試食を渡すのに、保護者の了承が必要でして。

お子さんお一人の時には渡せないのですね。

理由は主に、食物アレルギーのお子さんに誤って渡さない為ですね。

(そもそもアレルギー持ちの人が、アレルゲンに近付くかと言われればそれまでなのですが)

それでも、事故がないわけではありません。

店員さんも、ご両親にも試食を勧めるかもしれませんが、気を使って何かを買って頂かなくて結構だと思って接客をしていると思います。

にっこにこして食べてくれるお子さんの反応一つで、わりと嬉しいものなのですよ。「よかった、やっぱりうちの商品は美味しいんだ」ってこちらの自信にもなるのですし。


ここまで、まるで試食を断るなみたいな事を申しておりますが……

私は試食を食べないよ!という人もいますよね。ちなみに、試食を断るのは問題ありませんし、仕草や言葉で「食べれません」といってもらえますと、こちらも助かります。

アレルギーを持っている、またはその食品が苦手な人に無理強いは出来ないです。だって極論、人の考え方に寄りますからね。

お断りされたから店員さんの対応が雑になる、ということはないと思いますよ。

(対応が雑になったとしたら、それはその店員さんの力量の問題です。お客様に非はないですよ)


なので、試食の際は遠慮なさらずに親子一緒に来てくれると嬉しいです。

こちらも安心してお子さんにお渡しできます。


これから秋になると、美味しいものが増えると思います。

新型感染症等の対策には充分に気を付けつつ、また試食を楽しめるような世間になっていったら良いですよね!


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