うつろわなくても、日々
頭野 融
きみに捧ぐ
Sherwood Anderson は "Winesburg, Ohio" の Paper Pills の中で、歪んだリンゴは整ったリンゴより魅惑的だ、なんて言った。だけど僕にはきみがリンゴかすら分からない。梨かもしれないし、レモンかもしれない。もしかしたら果物ですらないのかもしれない。
それは当たり前で、きみはホモ・サピエンスの一個体にすぎないのだけれど、僕はきみが実は宇宙から来たんだと告白をしても驚かない自信がある。「歪んだ」という形容は誉め言葉ではないのかもしれないけれど、きみはいつも僕を驚かす。常人離れした感性や表現力を見せつけたかと思うと、当たり前に思えるようなことができなかったりする。ふつうの挨拶とか、当たり障りのない応答とか、空気を読んだ対応とか、そういうものが苦手なのかなと思うときもある。だけど、そんな歪さはジャムにしてしまえば分からない。全体として捉えれば取るに足らないことだし、砂糖を加えればもっと輝く。
謎めいたところ、行動力に満ちたところ、その偏愛と傾倒。どれもが僕には無くて僕がうらやましいと思うところ。それは、きみが僕にとっての隣の芝だからなのかもしれない。隣の花だからなのかもしれない。
だけど、きみは二十を過ぎても只の人ではないと思う。
それを保証するくらいのことはさせてほしい。
きみが今まで僕にくれたものの、ほんの一部へのお返しとして。
うつろわなくても、日々 頭野 融 @toru-kashirano
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