不思議な喫茶店
ジジ子。
第1話
カランカラン♪
「いらっしゃい。」
「マスター、アイスコーヒー1つ。」
24歳。村上 翔。彼女なし。仕事を数ヶ月で辞め、現在無職。
「ほい、お待たせ。仕事は見つかったかい?」
「いやぁ、全然っすよ‥笑」
71歳。マスター。1986年から喫茶店を経営。
大学時代に偶然はいった小さい喫茶店が気に入り、1年ほど通い続けている。
「やりたいことがわからなくなっちゃって‥‥ハハハ」
「まだ、24だ。きっとなにかやりたいことが見つかるさ。お金に困ったら、ここの喫茶でアルバイトでもやればいい。」そう言ってマスターは微笑んだ。
喫茶の中は昔ながらのバラードが流れてる。
落ち着いた曲。とても心地よい。
「この曲、いいっすね。」
「あぁ、35年も前の曲さ。」
「昔は、ここも、有名人なんか来ちゃったりして。この曲を歌ってる、真理子ちゃんも常連だったんだよ。」
「へぇ、そうなんすか‥。」
「あんまり、わからないよなぁ?笑
伝説のアイドルだったんだよ。」
「ほぉ‥‥。すごいっすね、」
なんて会話をしながらアイスコーヒーを飲み干す。
「じゃ、ありがとうございました、また来ます!」
「ほーい。暑いから気をつけて。」
カランカラン♪
さぁ、午後からも仕事探しだなぁ。と考えながら、喫茶店をでる。
一般企業に就職したが上手くいかず辞めて、今は大学時代に貯めたお金で暮らしている。そろそろ、貯金もつきる頃で焦りと暑さでやられちゃってる。
今年の夏は職探して終わりそうだな。と汗を拭う。
午後16時。
ただいま~。と誰もいない部屋に声をかけ、ベットに飛び込む。
3時間くらい寝てたのかな、目を冷ましたときには19時過ぎで、テレビをつけると80年代ソングメドレーがたまたまやっていた。
「あ、マスターが言ってた。」
「真理子でぇす♡」とショートカットの少女が映る。
当時19歳の真理子ちゃん!と紹介の文字。
ふーん、人気だったんだ。知らなかった。
と、テレビを消しまた深い眠りについた。
カランカラン♪
「マスター、また来ちゃいましたぁ。」
「おはよう!今日は早いね、アイスコーヒーかい?」
「ええ、アイスコーヒーで。」
昨日のテレビのことをふと思い出す。
「あ、昨日、マスターが言ってた真理子ちゃんって子、テレビで見ましたよ。」
「おお!可愛かっただろう!笑」
なんて会話をしながら、いつものカウンター席へ座る。レコードが一番近い席。お気に入りの席。
「昨日の曲でも聞くかい?」
「はい、ぜひ!」
ぱぱっと慣れた手付きでマスターがレコードを回す。
~♪
やっぱりいい曲だなぁと思いながら瞼をとじ、しばらく、心地よい音楽に耳を澄ましていた。
「お客さん!お客さん!」
心地よい音楽が消え、誰かの声で目を開ける。
「お飲み物は何にしますか?」
コーヒーを準備してたマスターとは変わり、目の前には同い年くらいの男性がいた。
言葉が出ず、固まっていると
「これ、メニュー表です。まだ1年目の店なので、メニューは少ないですが。」とメニュー表を渡される。
カランカラン♪
「マスター!いつもので!」と女性の声が聞こえてきた。
「おはよう、真理子ちゃん。クリームソーダね。」
え‥‥。まって何が起きてる?!と、ポッケのスマホを探す。が、どこにも見当たらない。
「あれ、珍しいね。この時間、あたしいつも一人なのに。」
「裏に回って作業してて、気づいたらお客さんが座ってたんだ。いつも、この時間は閉めてるんだけど‥‥」と、マスターと呼ばれる男性が苦笑いを浮かべる。
「す、すいません‥‥僕もよくわからなくて‥‥。」
3人の間に沈黙が流れる。
沈黙を破ったのは、真理子だった。
「お兄さん、クリームソーダがおすすめだよ!」
「あ、え、あ、じゃ、それで‥‥。」
「ほい、少々お待ちを。」
一つ席を開けて、横には昨日テレビで見ていたはずの真理子という少女が髪の毛をくるくると指で回し頬杖をついている。
何かが頭の中で一致し、口を開く。
「あの、いま、何年ですか‥‥??」
「ん、いまは1987年よ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます